エンタメ不感症の患部に巻く包帯

フォールアウト(steam版) 〈感想・レビュー・評価〉

 

プレイ動画

 
点数:90点
 
 

メモ

 
・日本語化し、ハイレゾパッチで解像度800×600へ変更(これ以上解像度を上げると自分の視力では文字が小くて読み辛くなるため)
 
 

短評

 
 固定の見下ろし型視点や、AP(アクションポイント)をやりくりするターン制バトルど一部古臭い部分もあるものの、オープンワールド化する以前の現代でも通じる洗練された美しいゲーム性は圧巻。フォールアウトシリーズの古きを訪ね新しきを知り直せる大傑作。
 
 
 

ジ・エルダースクロールズ(ベセスダ)という混ぜ物が混入していない高純度のフォールアウト

 
 フォールアウトシリーズはPS3版の3が初プレイだったこともあり、3への印象がシリーズに対する印象の基準であり、それを疑うこともありませんでした。しかし、今作をプレイすると、フォールアウトシリーズの特徴だと勘違いしていた要素(オープンワールドの広大な世界はもちろん、膨大なプレイ時間を伴うボリューム満点のサブクエスト、丁寧なナビゲーションシステム、など)が実はゲームエンジン初め3の元となったジ・エルダースクロールズⅣ:オブリビオン(ベセスダ)側からもたらされたものだと分かり、シリーズへの認識が大幅に修正されました。
 
 フォールアウトシリーズからオブリビオン要素をごっそり抜くと、そこには膨大なボリュームによってセーブデータ(旅の思い出やキャラビルド)を蓄積していくタイプのRPGではなく、どちらかというとボリュームよりもリプレイ性に重点を置き、冒険よりもローグライクゲームの様なプレイヤーの成長やシステムへの適応こそを柱とする硬派なゲーム性が出現します。ゲーム開始直後にいきなり物語的にもシステム的にもボルト(シリーズお馴染みの地下シェルター)の外の世界に放り出され途方に暮れさせ、そこから外の世界の現状やシステムを把握していくプロセスは徹頭徹尾がプレイヤーの手探り任せ。当初の目的となるウォーターチップを見つけるという期限付きのメインミッション以外は、序盤からどこに行って何をやっても自由。普通なら次に何をすればいいか分からず混乱しそうなものですが、世界(ワールドマップ)がかなり狭めなため、あちこちの村や街に聞き込みをして歩き回るのにナビゲーションが必要ありません。そのため終始自分のペースでゲームに馴染んでいけるのが大きな特徴です。
 
 立ち寄った村や街で手当たり次第にNPCにチップの在処を知っているかしつこく尋ね歩かせることで次に向かうべき場所の情報を持っているNPCと出会えた瞬間の喜びは格別なものとなります。それに序盤にどっちの方向に進むべきか軽く示唆され、その通りの方向に進むと村があり、さらにその村で聞き込みをすると次に進むべき方向を教えて貰えと、システムレベルでは親切なナビゲーションシステムなどなくとも、小まめにNPCに話しかけて情報を収集しながらプレイすれば迷わず目的地まで辿り付けるように配慮されています。露骨にプレイヤーを甘やかさず、しかし不親切に彷徨わせるという突き放し方も避け、これ見よがしにならない程度の親切さがそっと寄り添う作りは品があって好感触です。
 
 このゲームプレイに付いて回る徹底した手探り感というものが3以降のシリーズではほぼ消失してしまっている重要な要素です。オープンワールドの冒険しがいのある広大なマップと引き換えに、手探り感を著しく損なわせるナビゲーションシステムも必須となり、そのせいで常にプレイヤーが足を使って聞き込みをし情報を仕入れていくという大事なプロセスを失ってしまいました(これはなにもフォールアウトシリーズに限った話ではなく、オープンワールド化するケース一般に伴う問題でもありますが)。
 
 この手探り感はシステム設計と呼応し、ゲームプレイによってもたらされる確かな手応えにもプラスの影響を与えています。今作はサブクエスト以外はフラグ管理というものを徹底して排除し序盤からいきなりラストダンジョン的な場所に直行できたり、ゲーム開始直後に最強クラスの装備を入手できたりとプレイに制約がなく自由で伸びやかです。ストーリーも最小限で、しかもナラティブな手法のシチュエーションの作り方や、ちょっとしたシステム的な工夫(シリーズお馴染みの敵の死体から入手できるアイテムがドラマ性を帯びている、など)だけで演出される物語はゲームプレイを一切停滞させないまま世界観に深みを持たせており、シリーズ一作目でもはや怪物級の凄まじいバランス感覚に達しています。特に、驚かされたのはあるカルト教団の施設の地下に生理的嫌悪感を催す狂気的な空間が広がっているのですが、ここに教団の団員が着ているローブと同じものを入手し装備すると敵に気付かれずに潜入でき、この状態で延々と狂った空間を敵にバレないか怯えながら進むというシチュエーションは上質なホラーゲームの様でした。この極上のゲーム体験をプレイヤーに丸投げする(変装してビクビク怯えながら隠れ進んでもいいし、別段敵を全滅させながら進んでもいい)ため、強制的にやらされているという押しつけがましさがなく、ゲームプレイの全てにプレイヤーが自らの意志で選んで行っているという確かな手応えが生じます。これを優秀なゲームエンジンの馬力抜きで、見下ろし型の2Dドット絵と、ただただアイデアと工夫だけで表現しており、作り手のセンスに感嘆させられるばかり。
 
 シリーズ一作目からして芸術的と言いたくなるほどの美しいシステム設計やゲーム思想が貫かれており、なるほど今作を下敷きにしているフォールアウトシリーズが傑作な理由がよく分かりました。強制性を徹底的に排除し、全てをプレイヤーの判断に一任してしまう放任主義なバランスは3以降の作品では明確なドラマ性や広大なオープンワールドのマップ、それを補助するためのナビゲーションシステム、膨大なボリュームなどに取って代わられ、残念ながら薄まってしまっています。ですが、ゲーム市場という名のウェイストランドをサバイバルするため、マップの広大化・やり込みボリューム・親切設計スキルにスキルポイントを振り、その時代のゲーム環境に柔軟に適応してしぶとく生き残っていくという選択は今作のゲーム思想に通じているようにすら思えます。
 
 時代の要請によりオープンワールド化して以降も、一作目の精神を宿しながら逞しくフォールアウトであり続けるシリーズが今作を知ることでずっとずっと好きになりました。
 
 

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プレイ次第でラスボス戦も回避できてしまう

 

 

柱となる強固な設計思想とは裏腹に、老朽化して魅力を失ったバトルシステム

 
 根幹のゲーム性は現代でも難なく通じるほど突出して完成度が高いものの、それ以外のシステム部分はどうしても古臭さを否めず、特に戦闘周りは不便な部分が多かったり、自由度の高さを反映してかバランスが大味だったりでイマイチでした。
 
 通常移動時はPCのゲームでは一般的なマウスでクリックした場所目掛けて自キャラが移動するタイプですが、敵が近くにいてこちら側に気付いたり、こちら側から相手に先制攻撃しようとするとターン制バトルに移行する作りで、通常移動状態からシームレスにターン制バトルに移行するのはいいとしても、内容は凡庸に毛が生えた程度。3以降のV.A.T.S.システムの原型ともなる、毎ターン回復するAP(アクションポイント)をやりくりするというフロントミッションの2以降(こちらのAPはアクティブポイントですが)のようなバトルは、手持ち武器の射程は数値だけで視覚的に範囲が表示されなかったり、移動のやり直しが効かないのに銃火器の射線が表示されなかったり、クリティカルを一発喰らえば体力の数倍のダメージで即死したり、そもそも序盤から強力な装備を入手してしまえばザコ敵戦はほぼ楽勝で作業化しやすかったり、お世辞にも出来がいいとは言えず。
 
 それにZOCがないため、敵の脇をすり抜け放題で、ある程度APに余裕があれば、ひたすら遮蔽物や壁の角に張り付いて射線を避け、飛び出す・隠れるを繰り返せば無傷で敵を倒せてしまったりととにかく雑。戦闘中もセーブ可能なため、スーパーロボット大戦の様に毎ターンひたすらセーブ&ロードを繰り返して都合のいい結果が出るまで粘ることも出来てしまい、準備不足や戦略不足を誤魔化せてしまうのもマイナス(この部分は以降のシリーズにもまんま残っていますが)。長射程の武器を用いてコチラから先制攻撃を仕掛けられるなど、凡庸なシミュレーションRPGなどに比べたら最低限戦略を練る楽しみはあるものの、あまり自分好みなバトルバランスではありませんでした。
 
 この部分は、3以降にリアルタイムアクション化+V.A.T.S.システムを搭載してくれて心底良かったと思います。
 
 
 

まとめ

 
 フォールアウトシリーズの原点を訪ねる旅は、得る物ばかりで大変有意義なものでした。