エンタメ不感症の患部に巻く包帯

龍が如く5/夢、叶えし者 〈感想・レビュー・評価〉

 

トレーラー

 
点数:90点
 
 

短評

 
 (アナザードラマをメイン・サブ全てコンプリートして)クリアまで約50時間ほど。一作目の幻影を追い求めてばかりだった2~4に対し、シリーズに立ちはだかる神室町(かむろちょう)という巨大な壁を乗り越え、次なる表現域に達した傑作。
 
 
 

どこに出しても恥ずかしくない円熟の域に達した佇まい

 
 今作は4と同じオムニバスに似た主人公5人方式で、第三部だけ変則的に主人公が2人制なものの、残りは第四部までそれぞれ主人公1人が割り当てられ、ラストの第五部で5人全員が合流(と言っても、遥だけ非戦闘キャラなので実質は4人)という4とほぼ同じ構造。
 
 舞台は終始神室町がメインだった4とは大きく異なり、一部ごとにそれぞれ舞台となる街が別個に用意されるという豪勢さ。第一部は福岡の中洲がモデルである永州(ながす)、第二部は北海道札幌のすすきのがモデルの月見野(つきみの)、第三部は2にも登場した大阪の蒼天堀(そうてんぼり)、第四部は名古屋市の栄と錦三丁目をモデルとした錦栄町(きんえいちょう)、そしてラスト第五部を飾るのはお馴染み東京の神室町という構成。
 
 もうさすがにハードをPS3に移してからナンバリングでは3・4ときて三作目なので、劇的な変化もないだろうと高を括ってゲームに挑むと、なんとゲームからもたらされる感触が4から格段に向上しており良い意味で期待を裏切られました。一番嬉しかったのはどの部分に適切に力を注げばゲーム体験の質をより高められるのかという一作目の鋭いバランス感覚が蘇った点。
 
 移動モーションはより自然で滑らかな動きを意識し作り込まれ、階段の昇り降りや店に入る際のドアの開閉用に新たなモーションも追加され、移動周りの操作感は大幅にリッチなものに。NPCの歩行ルートもより自然となり、行き止まりでUターンしていた3や4とは段違い。バトルもエンカウントやヒートアクションのカットイン演出のシームレス志向が前進し、さらにアドベンチャーパートとバトルパートの段差を取っ払おうとする姿勢に磨きがかかったりと、変化はほとんどプラスに働くものばかり。
 
 一過性の派手さや、目新しさをただ闇雲に求めるよりも、操作性からもたらされる野暮ったい、いかにもなゲーム臭さを排することにこそ気を配っており、ゲームプレイの自然さがより増しました。その結果、長時間遊ぶ際のプレイ耐用性が伸び、没入度も強化されるという至れり尽くせりな仕上がりです。4と今作を比べると、手が加えられた箇所があまりにもゲームの満足度に直結する部位ばかりで、一作目の力点の置き所の的確さに通じるセンスが垣間見られ驚かされます。4で神室町に屋上エリアを追加したり地下エリアを追加したりというマップをいたずらに複雑にするだけのしょうもない方向性ばかりに注力していたのが嘘のようです。
 
 
 

ど演歌が如く!!

 
 システム周りの好変化もさることながら、今作の感触をこれまでのシリーズと決定的に一変させているのが、派手なドラマ志向から日陰を行く者たちへの共感共苦路線へ勘所が変更されたこと。大仰なドラマで盛り上げる手法からスネに傷を持つ者たちの生き様や孤独、閉塞感を疑似体験させるかの様なシミュレーター志向に創作意識がシフトしたおかげか、派手さという贅肉が減り、ゲーム全体がこれまでのシリーズとは比べものにならないほどタイトに引き締まりました。それは、ボディビルダーが人前で晒すためにプロテインと規則的なトレーニングによって完成させた誇張された筋肉美ではなく、日々の過酷な肉体労働によってひっそりと蓄積された別段誰の目にも触れられることのない、目的ではなくただ結果として付いただけの侘びしさを孕んだ労働者の筋肉のような締まり具合です。
 
 これまでのシリーズと異なり、やり込み要素をアナザードラマという形で各主人公のエピソード(人生と言ってもいい)に組み込んでしまったことも共感共苦路線を強化する働きをしており好印象でした。やり込み要素として楽しみつつ、各主人公の人間性や人生観をさり気なく描写する役割も果たしているので、無駄がありません。
 
 シナリオ面だけでなく前述したシステム周りの没入度を強化させるような変更点も全体を引き締める効果に一役を買っており、コンセプトがシステムを引き締め、またシステムがコンセプトを引き締めと、お互いが良好な関係を築き、ゲーム全体が一定方向のベクトルを向いてまとまった様な、表現したいものと表現手法の一致がもたらすゲーム的な官能性があります。
 
 街も第一部の永州や第四部の錦栄町は主人公と二人三脚で物語を盛り上げるパートナーとなり、時には傷心を慰め優しく寄り添い、時には主人公に試練を課し成長を促がす壁ともなる、甘やかすほど優しすぎず、かつ突き放すほど冷たくもないという、一作目の神室町から受けた印象に非常に近い手触りを覚えました。ただ、第二部は出来れば月見野よりもマタギ(猟師)の集落のほうが冴島のイメージにぴったりなのでこちらを広くしてメインにして欲しかったとか、第三部の蒼天堀はイマイチ遥や秋山と関連があるように見えないなど不満もあります。複数主人公制と、有名な歓楽街をとにかく片っ端から出すという路線が喧嘩してしまった弊害で、無理矢理に思えるマッチングがされ、主人公と街がうまく馴染まないというケースが生じてしまい、そこは残念でした。
 
 今作は一作目がそうであった様に、一本のゲームとしてはとかく欠点が多いです。第三部の前編である遥編のもろにアイドルマスター風のリズムゲーパートが丸々不必要とか、これまではやらなかった本編中にミニゲームチュートリアルを強制的に挟むのが邪魔とか、街の中に進入禁止エリアが多すぎてストレスとか、桐生と冴島以外のキャラはバトルレスポンスが悪くて使っていてストレスとか、ロードが長すぎ&処理落ちだらけとか、相変わらず情緒過多気味でグダグダ長ったらしいだけのムービーがやたら多いなど、無視できない問題が山積しており手放しでは褒められません。
 
 特に素材をそのまま堪能させれば良かったのに、終盤安物のサスペンスやミステリーといった調味料をまぶし素材の味を台無しにしている点は明確に余計でした。もはや、取ってつけたようなサスペンスやミステリーは話の幕引きの余韻を鈍らせるだけで邪魔にしか感じません。今作はシナリオ的な盛り上げのみに頼り切るという従来のやり方からある程度距離を取っているので、3や4ほどの極端な悪印象は避けられているものの、相変わらずシナリオは後半に行くに連れ破綻していくだけで、余韻は最低でした。3以降はもはや毎回毎回律義なほどにシナリオが破綻して余韻を汚し続けるため、いい加減わざとやってるのかと勘繰りたくなってきます。
 
 ただ、同じく一作目がそうであったように、不格好な部分があれど、人を惹き付ける魅力に富む今作も、欠点をあげつらうよりかは、良い部分を目一杯褒めてあげたいという好意の方が結果的に勝ります。その好意を抱かせる一番の要因は、人生を足掻いて足掻いて足掻き続ける日陰者たちへの応援歌という今作の温かいテーマにあるのだと思います。
 
 
 

まとめ

 
 一作目で築き上げた神室町へ依存し続け、ひたすらマイナーチェンジを繰り返すだけだった2~4の姿勢から脱却し、ついに自分が求めていた一作目の表現への気骨を真に受け継ぐ続編に巡り合え感無量です。
 
 (一作目を除く)龍が如くシリーズでプレイした作品の中ではぶっちぎりダントツ最高傑作!!
 
 
 

余談

 
 作品的にはあまり重要な要素ではないですが、今作ではタクシードライバーである桐生一馬がタクシーを運転する際に酔い状態だと飲酒運転になるため酔いを醒ます必要があるとか、元プロ野球選手である品田は野球を愛しているから他のキャラは普通に使える野球のバットを武器として使用できないとか、職業倫理や野球愛をシステムレベルで描いていることに感心させられました。
 
 ダラダラとムービーなんて垂れ流すよりも、品田は野球を愛しているからバットを武器として使うなんてこと絶対しないんだ!! という姿勢をシステムで見せさえすれば一発で品田の野球愛が表現できるという、システム演出がムービー演出に勝るという好例でした。
 
 
 
龍が如くシリーズ


 

 

 

龍が如く5 夢、叶えし者

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