エンタメ不感症の患部に巻く包帯

龍が如く(初代) HDリマスター(PS3版) 〈感想・レビュー・評価〉

 

トレーラー

 
点数:85点
 
 

短評

 
 クリアまで約10時間強ほど。極悪なカメラに、ストレスしか感じない操作性に、単調な戦闘・・・・・・なのにも関わらず、良いものを作りたいという作り手の熱い情熱が全ての欠点を掻き消してしまう、誠(まこと)の創作魂が籠められた傑作。この創作へのひたむきな想いに触れられただけで幸福な気分に浸れる、箱庭アクションRPG
 
 
 

野暮にはお引き取り願った粋な箱庭空間

 
 今作はシリーズ一作目ということもあり、アクションや操作性周りはありとあらゆる箇所が欠点だらけというか、ほとんど欠点だけで出来ているかの様な酷い出来です。終始カメラはぐちゃぐちゃで、移動中にカメラ視点が切り替わるだけで進行方向を一瞬見失うほど視認し辛く、戦闘中はもはやまともに敵の姿を画面内に納めていることのほうが少ないのではと思うほど常に敵を見失いっぱなし。戦闘は頻繁にやらされる割りに単調でほとんど作業に近く、ヒートアクションという必殺技が派手で気持ち良かったり、最後の敵にトドメを刺す際にフィニッシュムーブ風にスローモーションになる演出は豪華ですが、それ以外は特に見るべきところもないほど凡庸。
 
 ・・・・・・ですが、ゲームを開始して即、今作に心底魅了されてしまいました。それはなぜかと言うと、作り手の本気度が画面からひしひしと心に染み入るように伝わってきたからです。とんでもないものを作ってプレーヤーを驚かせたいという熱意がゲーム開始早々にプレーヤーに対して激しいメンチを切ってくるため「このゲーム本気だぞ!?」と身構えさせられ、マジメに向き合わないと作品に対して失礼にあたると、襟を正しました。
 
 全員一癖も二癖もある魅力的な登場人物達を実際の役者が声をあてることで明らかに普通のゲームとは異なる高めのリアリティラインに調整し、他作品と差別化。ムービーパートも、できるだけゲーム内雰囲気を決定づける極道の世界を地に足付けさせるための描写や、飲食や喫煙などの生活感表現描写、キャラクターの掘り下げ描写に絞ることで、ムービー部分とゲーム部分がお互い良好な関係を築き相乗効果を発揮。
 
 今作は、限られたリソースをどの箇所にどれくらい投入するかのバランス感覚が非常に巧みで、前述したアクション部分が酷いという欠点を良い部分がカバーしているため、部分部分だけ見ると欠点だらけなのに、全体として見ると作品の評価を下げるほどには気にもならないという、欠点の誤魔化し方もうまいです。ゲーム全体を満足いくまで作り込めないのであれば、変にアクションを作り込むよりかは他のゲームと決定的に印象を差別化することのほうが最終的な満足度に貢献することをしっかり認識し実践できる作り手のバランス感覚に惚れ惚れします。バトル部分はもしも高難易度信仰がやたら強いフロムソフトウェアだったりしたら、こんな極悪操作性のまま難易度を上げまくってストレス拷問ゲームにしてしまいそうですが、そこはしっかり出来があまり良くないことを自覚しているのか、回復アイテムを大量に持ち込めばごり押しできるように逃げ道を作っていたりと、出来が良くないなら良くないなりにユーザーフレンドリーにするという配慮も大人。
 
 舞台となる歌舞伎町をモデルとした神室町(かむろちょう)も来る者拒まず去る者追わずといった暖かくもない冷たくもない、でもちょっぴり人肌に近い適度な温度でプレーヤーを住人として迎え入れてくれます。一応オープンワールドですが、街での移動中はカメラが固定で動かせなかったり、戦闘がシームレスなリアルタイムではなく、街でヤクザや不良のシンボル(NPC)とぶつかるとエンカウントするというシンボルエンカウント式なため、オープンワールドと言うよりは箱庭と言ったほうがしっくりきます。街の外観や雑踏などの環境音がしっかりしていることはさることながら、NPCコリジョン判定(衝突判定)にぶつかると相手がよろける様な処理を加えることで、道行く人と肩がぶつかるという極道ものならではの重要性の高い動作を抜かりなくゲームに落とし込んでおり、雰囲気作りは相変わらずやることちゃんとやってるなぁと感心させられるばかり。
 
 ムービー含めあらゆる技術やテクニックを全力投入することで、神室町に生活感を出しながらも粋な街として飾り立て、そこに暮らす極道や住人たちにゲームの手垢がついていない役者の演技で命を吹き込み、他のゲームから受ける印象と今作のそれを徹底的に差別化し、新鮮さと高級感を確保するというコンセプトを貫徹できた時点で、もう今作の勝ちは決まりです。
 
 
 

まとめ

 
 アクションに関わるシステム周りは欠点だらけで目もあてられませんが、それを補ってあまりあるほどの作り手の従来のゲームと決定的に差別化させた斬新な作品を作って世の中をあっと言わせたいという情熱、そしてそれを実現させてしまうモノ作りのビジョンの確かさに感服させられ、すっかりこのシリーズの大ファンになってしまいました。
 
 創作への本気度はこうも作品を輝かせ、魅力を深めるのだというお手本の様な傑作。
 
 
 
 セガって凄い!!
 
 
 

余談

 
 今作のオリジナル版は2005年発売ですが、プレイしている最中そこそこ広めのマップなため移動に時間が掛かりちゃっちゃと目的地に着きたいと思うことが多々ありました(一応タクシー乗り場間を一瞬で移動できますが、基本は徒歩)。これはそのまま昨今のオープンワールドゲームに当てはまる不満と一致。10年以上も前の時代からすでに、作り手側の苦労して作った広いマップを出来る限り何度も歩いて欲しいという願望と、プレーヤー側の面倒だから出来れば一度行った場所まで再び歩きたくないという要望にズレがあり、それが今日に至るまで打開策も特にないまま放置されており、このマップの拡大傾向に付随する移動の長時間化という問題の深刻さは根深いなぁと改めて考えさせられました。
 
 
 
 龍が如くシリーズ


 

 

龍が如く 1&2 HD EDITION

龍が如く 1&2 HD EDITION