エンタメ不感症の患部に巻く包帯

好きなものについて語るブログ

デウスエクス/マンカインド・ディバイデッド(steam版)

f:id:chitose0723:20170806035145j:plain

 

トレーラー


点数:80点
 
 

短評

 
 クリアまで約30時間弱。前作のヒューマンレボリューションの良いところが目減りし、ダメな部分はほぼそのまま手付かずという、続編としてはややパワーダウン気味で不満が残るステルスRPGシューター。傑作だった前作のエッセンスは継承しているためステルスゲームとしては相変わらず一級なものの、目新しさはほぼなく、諸々が前作の満足度には及ばず。
 
 
 

あらすじ

 
 2029年。人為的に引き起こされた世界規模のオーグ(体の一部を機械化した人間)の暴走事故であるオーグ・インシデントから2年。チェコ共和国はオーグ・インシデント以前は積極的な自由経済政策を取り、首都であるプラハに有力企業を誘致し優遇。好景気に沸くプラハにはオーグ労働者が数多く移民してきた。世界でも人口に占めるオーグ率が高かったプラハはオーグ・インシデントによるオーグの暴走で深刻な被害を受ける。その反動でオーグ化していない生身のナチュラによるオーグに対する過激な隔離政策や根強い差別が横行するナチュラルとオーグの分断(ディバイデッド)を象徴する都市となる。
 
 世界中でナチュラル達によるオーグ排斥の気運が高まる中、国連ではオーグへの規制をより強化し、オーグの人権を軽視するかのような国連決議第3507号、通称人間復興法案の採択が間近に迫っていた。ナチュラルのオーグへの排斥を助長しかねない法案の是非を巡りナチュラルとオーグ、両者の分断はより深刻化の一途を辿る。
 
 そんな分断の最前線であるプラハに拠点を置く、多発するテロ防止のため国連により新設されたインターポールの対テロ部隊TF(タスクフォース)29。TF29の隊員であるアダム・ジェンセンは、プラハで発生した大規模な駅爆破テロに遭遇する。テロの犯人を捕まえるため捜査を開始したジェンセンは、テロの裏に隠されたオーグへの恐怖心を利用し人類の分断を画策する陰謀に巻き込まれていく・・・・・・。
 
 
 

ヒューマンレボリューションが傑作過ぎたばかりに……

 
 前作のヒューマンレボリューションの何に感動させられたかというと、オーグ化してまもないジェンセンが人体拡張に適応していくという設定と、プレイヤーがオーグメンテーションというシステムに適応していく過程が見事にシンクロし、まるで自分がオーグ化し、システム認識が拡張していくかのようなシステムと意識が溶け合うような一体感を味わえた点です。ですが、今作はプロローグからいきなりジェンセンがオーグメントをフルオープンしている状態から始まります。オーグに対する差別を描くというテーマ上、どうしても序盤からジェンセンをオーグ側の立場として印象付けなくてはならないという事情は理解できるものの、前作の様にまず不便な生身で戦わせてから、オーグ化し、ライフやミニマップ、敵の位置情報などの画面上のインターフェースは全てオーグ化したことによって得られる恩恵であるという丁寧な説明描写がすっ飛ばされてしまっており、これが非常に淡泊な印象を与える結果に。
 
 さすがに、これがないので直ちにダメということはないものの、前作ではごく当たり前のように存在した、ジェンセンとプレーヤーの認識の同期プロセスが適当なことで、前作ほどシステムの美しさからもたらされる官能性を感じません。多分前作はプロローグや序盤をジェンセンとプレーヤーの認識を同期させることに費やすというコンセプトで、今作は続編なのでもうそれは済んでおり、オーグメンテーションシステムの具体的な使用方法を実践させながら解説するというチュートリアルにウェイトを置いたのだと思います。
 
 今作をプレイすると、いかに前作が生身の状態でオーグの武装集団に圧倒的な戦闘力の差で一度敗北し、オーグ化することで互角に対抗できるようになるというストーリー上の展開すらも、オーグメンテーションというシステム理解への同期プロセスの一環で、プレーヤーの認識の補助として機能していたのかが分かりました。生身だったジェンセンがオーグ化するという、主人公を変えない限りは一度しか使えないカードを前作で切ってしまっているので、今作は続編として違う手札を選択しなければならなかったのに、前回と似たようなカードを選ぶという悪手でガッカリ。
 
 オーグメンテーションは、ただの成長・アクションシステムというだけではなく、世界観設定とも濃密にリンクし、プレーヤーを劇中世界と結びつける橋渡しとして機能すると同時に、システム・マップ設計・ストーリーとあらゆる要素から孤立せず、それぞれに多大な影響を及ぼす歯車としての役割も果たし、数あるゲームの中でも突出して官能的な機能美を有する、デウスエクスシリーズの中枢である最重要システムです。そのオーグメンテーションシステムへの適応・同期が、そのまま作品への没入深度へと反映されるため、同期プロセスを省略・簡略化してしまったことはただただ勿体ない限りです。
 
 今作はオーグメンテーションという芸術的システムの美しさを最大限引き出せていません。
 
 
 

光陰矢のごとし

 
 ステルス周りはさすがに完成度が圧倒的だったヒューマンレボリューションの続編だけに、常に複数の進行ルートが用意され、死角を隠れながら進む正攻法でも、隙を見て敵をテイクダウンして排除していくやり方でも、隠し通路を探しても、オーグメントを駆使して強行突破しても大丈夫という、プレーヤーが自分で好きに手持ちのオーグメントから攻略方法を選択できる能動性の高さは顕在。
 
 前作の、普段はFPSでカバー時だけTPSになるという仕様はそのままに、ウォッチドッグスやディビジョンといった、UBIのTPSゲームが採用しているカバー状態からカーソルで場所を指定するとそこまで障害物を乗り越えオートでしゃがみ移動してくれるという便利なシステムも追加され、劇的な変貌はないものの、確実にステルス周りの遊びやすさは向上しました。
 
 なんだかんだ不満が多い今作でも、やはり得意中の得意であるステルスともなるとあらゆる不満が一端脇にどかされるほどには中毒性があります。昨今のオープンワールド型の遮蔽物のあまりない様な開けた場所でのステルスを体験していると、ややリニア型で狭苦しい場所を延々と進み続けるという窮屈さは否めないものの、敵を観察し、どう対処するのか頭の中でシミュレーションする過程がオーグメントという豊富な選択肢がある分他のステルスに比べ桁違いに楽しいです。
 
 敵を観察し、対策を思案するのが楽しいステルスはいいステルスで、今作も無敵のオーグメンテーションシステムからもたらされる拡張性という恩恵により、敵やマップに応じて足りなければオーグメントを解放し攻略性を拡張していけるので、他のステルスでは中々味わえない潜入ルートをただ発見するのではなく、自らの選択と工夫で獲得したという確かな手応えが得られます。ステルス要素があるシャドウ・オブ・モルドールをプレイした際、ステルスとRPG(成長要素)は実はとんでもなく相性がいいということに気付かされましたが、今作もそれを証明するかのごとく安定した面白さでした。
 

 
 
 前作のヒューマンレボリューションから短くない年月が経ち、もはや世界中のステルスの進歩の中で最先端と呼べるほどの斬新さは皆無で、どちらかというと挑戦を避けて堅実さを取ったような、ステルスとしては保守的な印象を受けるため、出来れば次回作はもっと野心的な方向に舵を切って欲しいです。こんな大傑作シリーズがステルスの最前線から後れを取っているのかと思うと我慢なりません。
 
 
 

味気ない舞台と、大幅にダウンした物語のスケール

 
 洋ゲーにはよくある、エンドクレジットが流れ出して初めて「え、これでクリアなの? ということは、さっき倒したのがラスボスだったんだ!」と気付く、典型的なガッカリさせられる余韻です。これは前作のヒューマンレボリューションが世界規模の陰謀を描き、終盤に向けてスケールがでかくなっていく構造だったため、てっきり今作もそういう路線なのかと思い込んでいたせいもあり、肩透かしの度合いが半端ではありませんでした。劇中ずっとラビーアという建造中の都市の名前が登場し続けるため、前作のパンチェア同様、建造中のラビーアがラストステージになるんだなと思っていたら、一切登場せず終わるため唖然とさせられました(続編で登場するのかも)。
 
 今作は舞台となるプラハでオーグに対して行われる差別や隔離政策をジェンセンの身になって追体験させるということがやりたいらしく、前作ではアメリカのデトロイトと中国のヘンシャを中心としながら、その他色々な場所を目まぐるしく転戦していったのに比べ、プラハに滞在する時間がやたら長め。何度も利用する地下鉄の入り口がナチュラル用とオーグ用で区別されていたり、オーグ用の地下鉄乗り場が駅の奥にあり、面倒なので手前にある乗り場からナチュラル用車両に乗ると不審者扱いされ身分証の提示を求められたりと、うっかりナチュラルの行動圏に足を踏み入れると少々の足止めを食うため、自然とオーグ用の道を通るようになっていくというやや恐ろしい習慣が刷り込まれていくという作り。そのような街全体で環境ストーリーテリングをするバイオショックシリーズ(特にインフィニット)の様なアプローチはいいとしても、街全体でこのルールが徹底されておらず、バックグラウンドでNPC同士がなにか口論して揉めているなどのシーンはちょいちょい目撃するものの、もっと街のあちこちでナチュラルなら普通に行えることをオーグは容易に出来ないという隔離政策の理不尽さを、ただの薄味なイベント的な処理だけでなく、ゲームシステムとして体感させて欲しかったです。それと、デウスエクスシリーズのメインの舞台とするにはサイバーパンク風味が足りず、どこに移動してもイマイチ外観的な変化に乏しく、その点もプラハという舞台が強烈なゲーム体験をプレイヤーに刻む特別な場所としては印象に残り辛いことの要因になっていると思います。
 
 後、今作は一応マルチエンディングという体ですが、途中でルートが分岐するといったことは本当に軽めにしか無く、プレーヤーがこれまで取ってきた行動や選択により、ラストに流れるある映像が変化するというだけで、これがかなり地味ですが好印象でした。自分はルート分岐やマルチエンディングというものが、物語をただの回収・収集対象にしてしまうようで大嫌いなので、本筋にはほぼ影響を与えず、でも途中でしてきた選択によってエンディングは変化するという今作のバランスはマルチエンディングの在り方としては非常に好ましかったです。
 
 
 

少なくない不満あれこれ

 
 まず、プレイを開始して最初に気になる部分は、前作の発売からインターバルが長い割にグラフィックの進歩がイマイチな点。ウィッチャー2からの3、フォールアウト3やニューベガスからの4、デッドアイランドからのダイイングライトのように旧世代機から次世代機にハードが移ると劇的にグラが向上し、画面が華やかになったような作品と同程度は変化するものだと勝手なイメージを抱きながらゲームを開始すると、初見は間違って低解像度のままゲームを始めてしまったのかと勘違いしたほど。前作からはしっかり向上していますし、慣れると別段不満に感じるほどではありませんが、他のゲームが綺麗になり過ぎていることで相対的に粗く感じ、ヒューマンレボリューションの時は別段なかった同時期に発売されたゲーム群からかなりグラのレベルが引き離されてしまったという危機感を覚えました。今作のグラがどうこうではなく、グラで他のゲームに大幅に差をつけられ、そこが作品の出来・不出来とは関係なく深刻なウィークポイントとなってしまわないかとシリーズの今後が不安です。
 
 後は、ところどころ設定のセンスがストーリー・システム両面で垢抜けなく、明確にダサいと思う箇所がちらほらある点。タスクフォースの拠点がダミー会社である不動産会社の地下に隠されておりこれ見よがしなエレベーターで移動するという耐用年数切れの古臭いスパイ映画の様な設定や、オーグたちがオーグ・インシデントの際に見た幻覚を神の啓示だと思い込んでカルト宗教にハマり、機械神を信仰しているとか、時代錯誤的な懐古趣味のようなセンスの無さに頭を抱えることが少なくなかったです。セキュリティが万全という建物に侵入しているわりに、そこら中にやたらダクトが通りまくっていて重要な部屋に潜り込み放題だったりと、前作でも覚えたギミックへの意味付けの違和感もまったく手付かずのままで、グラがイマイチなことも相まって、どうしても新しめのゲームをやっているという実感が湧きません。ここら辺はステルスで用いるギミックに対して違和感を最小限に抑える理由付けを施し、ゲーム的にうまく処理できているUBIなどのほうが圧倒的に洗練されておりセンスが良いです。今作はどうしても昨今のスタイリッシュなステルスへのアプローチを試みる他の作品群に比べるとセンス的に見劣りしてしまい、高級感がありません。
 
 そして、今作最大の問題点はあんなに長いと感じたウィッチャー3すら凌駕しかねないロードの長さです。SSDでない自分のPC環境も多少は影響していると思いますが、ゲームを開始した直後はあまりにもロードの進行状況を表示するバーが増えないのでてっきりフリーズしたのかと勘違いしたほど。ゲームを開始するのに数分待たされ、頻繁に行うエリア移動の度に延々と待たされ、チャプター(ステージ)が変わるとまたロード・・・・・・と、常にロード、ロード、ロードのロード地獄。ただでさえロードやエリア移動が長いのに、メインの舞台となるプラハはエリアが北と南に分かれており、ミッションによっては北に移動したと思ったら今度は南で、小目標を終えたらすぐに北に戻るというような手間がかかるエリア移動を何度も跨ぐふざけた内容のものもあり、プレイが常にロードで中断され続けるため、ゲームテンポが致命的一歩手前な悪さです。 こんな南北のエリア移動のストレスでゲームプレイを分断(ディバイデッド)させないで欲しい。
 
 その他にも、ゲームパッドXbox360のコントローラ)でプレイすると相変わらずレスポンスが悪く、60フレームで感度を最大にしても操作がまだもっさりしている点は前作からほぼ手付かずのまま放置。
 
 ただ、唯一周回プレイ要素が追加され、アイテムや武器、オーグメンテーションの強化分を次週に持ち越せるようになったことだけは大変満足。これのおかげで序盤から色々なルートを通り放題で、一周目とは違った新鮮なプレイがしやすく、実績解除もラクチンです。
 
 

まとめ

 
 次回作に期待!
 
 
 
デウスエクスシリーズ