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アサシンクリード4/ブラックフラッグ(steam版)

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プレイ動画

 
点数:85点
 
 

短評

 
 クリアまで約30時間ほど。オープンワールドだから可能なプレイの連続性をフルに生かした豪華な海賊行為はシリーズぶっちぎりのゲーム体験を味わえるものの、これまでシリーズの中心要素だった硬派な歴史ものとしての魅力やドラマ性、ステルス要素が後退。一本の作品としての魅力はやや乏しいものの、ゲームとしての楽しさは倍増するという娯楽要素特化型のゲームバランスに。
 
 
 

暗殺者と海賊、二足のワラジの弊害

 
 これまでのストイックなアサシンの振る舞いを思わせる抑制の効いた基調から逸脱し、自由奔放な海賊めいたど派手で大雑把な作品へと変貌を遂げました。3のオマケに近かった船の操舵や艦船同士の戦闘要素を大幅にブラッシュアップし、この部分だけで一本のゲームをでっち上げてしまったかのよう。もはや海賊プレイがメインで、ステルスゲーム要素がサブに格下げされたため、ゲームからもたらされる感触が通常のアサシンクリードシリーズとは別物に近いです。
 
 元々中心だったステルスの存在感をゲームを構成するシステム群の一つ程度とし、商船や軍艦を襲って物資や船を奪う海賊プレイと連動させた海賊船のアップグレード要素に、ファークライシリーズのクラフト要素を足し、敵から奪った船をオンライン上に派遣することでプレイしていない時間にもバックグラウンドでお金を稼いできてくれるソーシャルゲーム的な要素を足しと、ややシステムの自重が増して全体が不安定になっているのが問題。自分がUBIのゲームをやっていて心底惚れ惚れするどこか人を突き放すような洗練されたドライな仕上がりとは異なり、ややユーザーの顔色を窺い過ぎて快楽要素を必要以上に大盛りにしたかのような俗っぽさが気になりました。特に、一番UBIらしくないと感じたのは、海賊行為をウリにするフリープレイ部分とステルス要素をベースにするメインミッション部分がうまく溶け合っておらず、ちぐはぐに感じること。交互にまったく異なる趣旨のことをやらされるため、まるで違うゲームが一つのゲーム内に無理矢理雑居している様で居心地が悪く感じることが多かったです。
 
 敵の近くで他の兵士を暗殺してもほとんど反応がないほど敵AIの調整がゆるゆるでマップ中の敵をほぼ無尽蔵に殺して排除し放題だったり、途中から使用可能になる吹き矢があまりにも便利すぎてこれだけでほとんど苦労もせず敵を無力化できたりと、ほとんどステルスゲームとしては失敗作なのではと思うほど調整が雑でイマイチ。タカの目モードで敵を簡単にマーキング出来るようになったり、体感で便利になったと感じる部分もあるものの、じっくり観察しなくても突破可能な適当な敵配置やAIの賢さの後退など、手抜きにも見える部分が散見され、これなら3のほうがステルス要素はずっと面白かったです。
 
 UBIはいつもシステム的なインセンティブが弱く、プレイのモチベーション維持が困難という弱点がありますが、今作はプレイのモチベーション維持だけが前に出過ぎて、メインとなる丁寧な物語やステルス部分が日陰となってしまったかのよう。せっかく船の強化のためお金を稼ぐ行為がインセンティブとして機能しているのに、本来なら作品の支柱として機能しなければならないはずの物語性やステルスがサブのやり込み要素に負けているため、海賊行為をするフリープレイだけが面白くて、メインミッションで強制的に出来があまりよくないステルスをやらされるのが面倒という本末転倒さ。
 
 
 

……という不満を全て吹っ飛ばす長回しオープンワールド使いの巧みさ

 
 映画においては長回しをやり過ぎると、映像を自然に見せるための手法なのにも関わらず逆に自然に見せようという作り手側の力みを強調させ不自然さのほうが際立つというデメリットがあります。ゲームにおいてはこの様な副作用は存在せず、プレイがエリアチェンジやロードという断裂を挟まず連続していればいるほど豪華さが増し続けるという利点としてのみ作用し、これをフルに生かした海賊プレイが今作をシリーズの中でも別次元へ誘う結果に。
 
 今作は陸地ではなく海のほうがメインのオープンワールドとなっており、海上で敵艦船との遭遇、砲撃戦、さらにそこから相手の船に乗り込んでの白兵戦という流れを一切ロードを挟まず繰り広げられ、このダイナミズムに圧倒されました。これまでのゲームの記憶からオープンワールドと言えでもどこかできっとシステムが途切れて画面がふっと切り替わるだろうと思いながらプレイしていると「あれ? 敵の船を行動不能にしたのにまだ何かするの?」 「え? このまま大破させた敵の船に接近するの?」「え? このまま敵の船に乗り込むの・・・・・・うわぁ! そのまま白兵戦が始まった!」という、ゲームプレイの連続性がどこまでも途切れないことそのものが強烈なゲーム体験として機能しており感動的です。
 
 そのダイナミズムを支えるのが、とても1つのフレームに納まりきらないほどの船の巨大さだったり、操舵の際の船体の質量を意識させる操作性の作り込みや船体の軋みや帆が風を受けるSEなど、重さ表現の技術の粋を結集させ、そこに今度は正反対である身軽なアサシンの船長を配し、船内の移動や敵戦との白兵戦を颯爽とこなさせるという、この重さと軽やかさの鮮やかな対比。この重さと軽やかさの対比がもたらす感覚がアクションゲームとして官能的で美しく、クラクラさせられました。
 
 大河的な歴史ものとしての重さと、SFとしてのアニムスというデジタル空間設定の軽やかさの対比。一つのフレームに納まらないほどの建造物を昇り、ダイブさせられることで際立つ歴史の象徴の様な建造物のどっしりとした巨大さ。それと相反する人間のちっぽけさと、しかしそれをすいすいと昇って見せる軽快さ。まるでゲーム全体が精神の軽やかな自由を求めるアサシン教団と堅固な規律を重んじるテンプル騎士団の対比構造の相似形が発現したかのよう。実は今作をプレイしていて覚えた感覚はアサシンクリードシリーズにずっと内在し潜伏していたものだと分かり、改めてこのシリーズは昔から傑作だったんだなぁと再認識させられました。
 
 
 

まとめ

 
 作品よりもゲームであることのほうを選んだのは潔いですが、自分的にはアサシンクリードシリーズとしては大河ドラマのような物語のスケールを持つ3のほうが好みでした。ただ、一本のアクションゲームとしての到達度でいったら間違いなくシリーズ屈指の傑作。
 
 
アサシンクリードシリーズ


 

 

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