エンタメ不感症の患部に巻く包帯

劇場版 遊☆戯☆王/超融合! 時空を越えた絆 〈感想・レビュー・評価〉

 

トレーラー


点数:60点
 
 

アニメーションとしての完成度を墓地に捨て、話の整合性をゲームから除外し、異常な強さの敵カード群とデスティニードロー連発を融合し、手札からサスペンスを召喚

 
 いちアニメーション作品としてはとても褒められた出来ではないですが、劇場版としては一つ前の光のピラミッドを見た際も感じた、デュエルモンスターズというカードゲームのルール設定とサスペンスジャンルとの相性の良さを再確認できました。
 
 デュエルモンスターズのいきなり1ターン目から攻撃力3000やら4000級のモンスターすら召喚できる展開の速さや、魔法カードや罠(トラップ)カード一発でフィールド場の強力なモンスターが全滅したり、逆に全滅したモンスターが全員復活したりという一発逆転が容易なバランス設定のおかげで、1ターンごとに劇的な展開が起こり、それがクリフハンガーとしては強力で、サスペンスというジャンル映画的なことすら可能としている点が面白いです。これは強力なモンスターを召喚するのにある程度リソースを溜めるなど、ターンを要する様なルール設定のカードゲームでは出来ないことで、この一点において、サスペンス好きな自分としては楽しめました。
 
 原作の少年漫画が週刊連載で話を引っ張らなければならないため、衝撃的な展開を次週へのクリフハンガーとするという要請によってカードゲーム自体が逆転が簡単に起こり得るバランスとなり、それが映像作品になると今度はサスペンスとしても機能するというでたらめな順序で成立しているのが奇跡的。
 
 サスペンス展開を盛り上げたいという要請によって生まれたサスペンスの申し子でもあるデュエルモンスターズが劇場作品用にサスペンス部分を強化しまくれば面白いのは当然と言えば当然ですが、プラス、カードゲームという性質上「このカードを使ってこのようなプレイングをした結果こうなった」という相手を負かす展開にある程度論理的な帰結もあるため、起こっていることはインフレしまくりな展開なのにそこそこ見やすいのも好印象。
 
 ですが、どうしても歴代主人公三人がタッグを組み、3対1の変則的なデュエルをするという企画ありきのためか、その人数分の戦力差を補うため敵側の魔法やトラップ、モンスターカードの効果がほとんど何でもありのようになっているのはさすがにノイズに感じる部分もありました。ここは単独で一度デュエルさせ、とても一人で適う相手ではないと印象づけさせてからタッグを組ませる展開のほうが自然だったはず。
 
 後、ブラックマジシャンとブラックマジシャンガールをデュエル中に突然会話させるといった映画としては下品極まりない演出をしないで欲しいです。
 
 

まとめ

 
 サスペンス映画が大好きでサスペンス原理主義的な荒木飛呂彦先生のジョジョに強い影響を受けた原作者の高橋和希先生の漫画が最終的にはサスペンス的な面白さで引っ張る劇場用アニメになるという流れに奇妙な運命を感じた一作でした。
 
 もちろんこの面白さを理解するためには最低限デュエルモンスターズのルールを理解しておかなければならず、やや楽しむためのハードルが高いのが問題と言えば問題。
 
 

 

 

※ 荒木飛呂彦先生がサスペンス映画愛を語る新書