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エンタメ不感症の患部に巻く包帯

好きなものについて語るブログ

テイルズ オブ ゼスティリア(PS3版)

70点 PS3 ゲーム

 

OPアニメーション

 

点数:70点
 
 

短評

 クリアまで約40時間超と、テイルズシリーズとしては平均的なボリューム。海外のゲームを志向する部分と、分かりやすく国産RPG的な部分が同居する、やや歪とも思えるバランスだが、品の良さを醸す空気感作りに好印象を覚える。
 
 

あらすじ

 かつて人間天族(精霊のような存在)が共に暮らす平穏な時代があったことなどとうの昔に忘却され、天族の声を聞き、姿を見られる者が稀少となって幾年月。強大な穢れを纏う災禍の顕主(さいかのけんしゅ)の出現により災厄の時代を迎えた世界。世界中は穢れに染まり、穢れた者達は憑魔(ひょうま)と化し、世界は荒廃の一途を辿り続ける。
 そんな下界を襲う災厄など知りもせず、穏やかな天族たちの暮らす里で育った、人間でありながら天族と心を通わせることができる少年スレイ。スレイは人間と天族の架け橋となり、世界をよりよい方向へと導く導師に憧れていた。そんなスレイだったが、とある事件をキッカケに大国ハイランドの政治事情に巻き込まれ、人々を救うため世界の救世主である導師となる決意をする……。
 
 

異色の弱点攻め重視のバトルシステム

 
 テイルズシリーズは全シリーズプレイしているワケではないですが、プレイした範囲で言うと、元々他のシリーズに比べやや複雑気味だったデスティニー2のシステムをより複雑化させたような印象。
 敵を倒すとスキルの付いた武器や防具を落とし、それを合成して強化していくというややハクスラ成分の入ったような武器合成要素や、SC(スピリッツチェイン)ゲージというスタミナゲージの存在などがデスティニー2をプレイした時の感触を蘇らせます。
 
 今作がテイルズシリーズの中でも異色とも思える部分は、従来なら気をつけたほうがバトルを有利に運べるという程度の存在感だった敵の弱点と耐性が、それを常に気にしなけらばならない前提のバランスに調整されている点。
 敵の弱点属性を突くと単純に与えるダメージ量が増えるのと同時に、一度弱点を突けば他のキャラが連携で攻撃を叩き込む際に弱点属性ではない攻撃も全て弱点攻撃扱いとしてカウントされるためダメージ量が上乗せされ、さらにSCゲージ(スタミナゲージ)の回復も早まるというオマケまで付くなど、弱点を突くことの重要度が非常に高いです。
 テイルズをプレイしていて、これほどザコ敵戦に至るまで弱点や耐性に気を使わされたのは初めてです。この部分はただ闇雲に攻撃し続けるような単調なバトルシステムよりは好みでした。
 多分、神依(カムイ)化という、人間とパートナー天族の合体変身システムが搭載され、火・水・風・土という4属性を振り分けられたパートナー天族を、敵の弱点に応じてリアルタイムに交換しながら戦うというペルソナにも似たシステムをより際立たせるために弱点を突くことの重要性を強化したのだと思います。
 
 ただ、パートナー天族を交換しながら行う神依(カムイ)化を中心としたバトルは終始攻撃メインで、ペルソナのように攻撃だけではなく防御面の属性耐性にも注意を払わなければならないというようなメリハリがなく、ひたすら攻撃・攻撃・攻撃で、攻撃のためのシステムと化しており、やや単調に感じることが多かったです。
 
 それと、通常攻撃が無くなり、一番弱い攻撃でも特技という必殺技のような扱いになったため、逆に通常攻撃からのコンボで必殺技を叩き込むという従来のテイルズシリーズにあった爽快感がなくなり、ただボタンを連打して大した違いもない特技と奥義を交互に叩き込み続けるだけの味気ないバトルになったことも大問題。この必殺技軽視のせいで、新しい技を覚えても、爽快感のある決め技として機能せず、ただラッシュの中に組み込むだけの無味乾燥なコンボ用のパーツでしかなくなり、新しい技を使えるようになった喜びが感じられないという、テイルズシリーズとしては致命的な欠点を抱えることに。
 
 その他にも特技・奥義・天響術(魔法のようなもの)に三すくみ制を持たせたり、スキルシートという武器・防具にくっつくスキルを法則に則って並べるとボーナスが得られるというセッティングシステムや、装備・称号の熟練度があったりと、ややシステムの物量に頼ったような構成ですが、どれもこれも中途半端でバトルシステムの面白さに寄与できていません。
 
 ただ、パートナー天族を戦況に応じて交換しながら戦うという、戦闘中のキャラクターのリアルタイムチェンジシステム部分だけは、ベンチキャラが生まれず、全キャラ満遍なくバトルに投入でき、非常に好みでした。
 
 後、今作というよりも日本のRPG全般に感じるバトルシステム周りの不満として、レベルアップした時にプレイヤーが強化する項目を選べないという不自由さがレベル上げ、延いては戦闘(もしくはゲームそのもの)の中毒性を著しく下げる要因になっているのが気になります。
 今作もご多分に漏れず、レベルが上がると勝手にステータスが上昇するだけで、何かポイントを振り分けたり、スキルを取得する・しないを選べたりといったことをプレイヤーは能動的に行えず、レベルアップがもはや空気や雰囲気でしかありません。海外のRPGに多いスキルツリーなどのシステムに慣れてしまうと、国産RPGのレベルアップは非常に味気なく、退屈です。
 レベルアップの快楽強化はRPGにおいてはゲーム全体の面白さにも影響を与えるかなり優先順位の高い項目のはずなのに、今作もそれをやらずに流してしまっているため、レベルアップしても得るものが少なく、得るものがないためプレイに刺激も生まれず楽しさが目減りしてしまっています。
 
 

国産RPG特有の香味を薄め、渋みを獲得するアプローチ

 
 今作で最も好印象だったのは、テイルズシリーズとしての根幹部分を除いて、全体的に海外のゲームに漂う高級感のある香り(もしくは空気感)を意識し、それに寄せようとした試行錯誤の跡が窺える点です。
 
 まず、テイルズシリーズ独特の非常に凝った固有名詞が大量に飛び交う世界観設定が陰を潜め、わりとシンプルで落ち着いたものに。
 災厄の時代にハイランドとローランスという二大大国が睨み合って全面戦争に発展しそうな緊迫感がある中、人間を戦争に導こうとする元凶を倒すという、テイルズシリーズとしてはややけれん味に欠けるような地味で暗い話です。
 
 自分はサスペンス大好き人間なので、国産RPGのけれん味やスケール感のある派手な世界観設定やストーリーをクリフハンガー的な話の推進力として用いる手法はわりと好みなほうですが、今作はゲームのアプローチ的に地味な手法を選択しているため、それに合わせて物語のトーンも抑制(海外のRPGに比べたらまだ派手ですが)する方向に舵を切っており、その戦略は理解できました。
 地味になった分、テイルズシリーズ的な派手さ・(良い意味でも悪い意味でも)軽さが鳴りを潜め、テイルズシリーズにしては堂々とした佇まいとなり、これが中々好ましかったです。
 
 堂々さの要因は幾つかありますが、まずどこまでも続くフィールドマップの広大さからもたらされるビジュアル的な迫力。もちろんオープンワールド型のRPGなどの広さとは比ぶべくもありませんが、フィールド・ダンジョンともに非常に面積が広く、今までプレイしたシンボルエンカウント(通常エンカウント)型のRPGの中でも特にマップが広いと感じたドラゴンクエスト8ラストレムナントよりは広く、スターオーシャン4と同等クラス程度。
 初見時は「テイルズシリーズもマップの広さで威圧してくるほど貫禄がついたか」と嬉しくなりました。
 
 シンボルエンカウントなのにマップをやたら広くするという方向性は、正直あまりゲームの面白さ的にプラスになっているとも思えませんし、ドラゴンクエスト8のようにうまくマップが広いことを利用しあちこち散策させるような楽しませ方が出来ているワケでもなく、ただ単に広いだけのこけおどしと言えなくもないですが、テイルズシリーズでここまで堂々とした広さを見せつけられると、それだけで圧倒されてしまいます。
 
 今作と比較するために昔にクリアしたままほったらかしていたラストレムナントスターオーシャン4のソフトを引っ張り出してプレイしてみるとそのあまりの国産RPG臭さに驚かされました。グラフィック的には高性能なゲームエンジンを有するトライエーススターオーシャン4のほうがテクスチャ周りが緻密でまだ綺麗な印象ですが、ゲームからもたらされる味が国産RPG特有のこってりとしたもので、ゼスティリアの爽やかさを体感した後だとその垢抜け無さが重く感じました。
 
 今作をプレイした時、最初はなぜ国産RPGにしてはマップや街の移動時に品があると感じるのかイマイチ感覚を理屈に落とし込めずに困惑させられましたが、他のやや古めのゲームと比較させることで理由が分かりました。操作性周りやカメラ移動の国産RPG特有のぎくしゃくした不自然さを消し、プレイヤーが動かしてストレスのない感度に調整した結果、この自然な操作感に仕上がったのだと思います。
 
 その他にも音関連が素晴らしく、耳に心地よいSEだったり、フィールドマップで流れる広い世界に圧倒された少年の胸の高鳴りを表現したかのような勇壮なオーケストラだったり、街や村の、時には陽気で時には穏やかなストリングス系BGMだったりと、元々音楽が良かったテイルズシリーズの本領が遺憾なく随所で発揮されており、今作の魅力を底上げしてくれています。
 
 さらにゲームとは直接関係ありませんが、ufoテーブルのOPアニメーションやアニメーションムービー(の一部)の完成度の高さが作品に彩りを添える結果となっており、それは、フロムソフトウェアのゲームにおける白組のプリレンダムービーの豪華さを連想させられました。
 これは、ただ単にムービーが単体で綺麗だから良いという単純なものではなく、密度の濃い映像でゲーム作品にリアリティや奥行きという重量を持たせ、かつその重みに耐えられる強度が作品側に備わっている場合にのみ生じる心地よいハーモニーで、ムービーがゲームを、ゲームがムービーの価値をお互いに高め合う幸福な関係性が築けています。
 
 

少なくない不満あれこれ

 
 まず、フィールドマップが広くなったのは良いのですが、フィールドマップ上に街の外壁は見えるものの、ダンジョンとなる建物などが映らず、なぜかダンジョンはエリア移動した先にあるため、これではフィールドマップを移動中に遠景でダンジョンとなる場所がうっすら見え、そこに徐々に近づいていくというような高揚感がまったく生まれず、フィールドを広くした効果が激減してしまっています。
 
 それと、フィールド・ダンジョンのマップが広くなり迫力が増したと上記しましたが、それには悪影響もあり、フィールドマップが広いのはまだいいとして、問題はとんでもない広さのダンジョンです。新しいダンジョンに入り全体マップを開く度、あまりの広さに目眩すら覚えるほどで、正直嬉しいというよりもだだっ広いダンジョンを延々歩かされ苦痛でした。これは、マップの広さに対して移動速度が遅めなのも原因の一つ。
 
 後、フィールド・ダンジョンともに起こる問題で、今作は敵シンボルと接触しバトルが発生すると、敵シンボルと接触した場所を中心にバトルフィールドが形成されるという疑似シームレス的な処理がされます。そのため、狭い場所で敵シンボルと接触すると、バトルフィールドが異常に狭く、そのせいでカメラ処理がデタラメとなり敵や自分の操作キャラが視認できなくなったりと、バトルに弊害が生じます。
 この問題は、マップが狭い→狭いため敵シンボルをかわせずに接触し戦闘に→バトルフィールドが狭いためカメラが見え辛い、という負のスパイラルを起こしており、少なくないストレスの元に。
 
 最後に、シナリオ面は全体的に地味で暗いのは我慢できるとしても、説明不足すぎて登場人物の言動がイマイチ理解できない点が大きな不満です。大まかな流れはとりあえず追えますが、全体の70%くらいしか情報が提示されず、残り30%ほどは劇中のキャラクターは知っているらしいのに、それをプレイヤーには教えてくれず、情報が隠されたまま。終始もやもやしっぱなしの状態で話が進むため、途中から話に対しての興味が削がれ、どうでもよくなってきます。これまでテイルズシリーズをプレイしてきて、イマイチ釈然としない箇所は多々ありましたが、今作は群を抜いて説明不足が付きまとい、登場人物の行動の納得のいかなさが目に余ります。
 プレイヤーが抱く疑問をうまく潰してくれず、的外れなシナリオ運びに終始し、最後にこれまでに敷かれた伏線のようなものが回収されるのかと思ったら放置されたまま終わられ、余韻も何もあったものではありません。
 
 

まとめ

 
 完成度の高さを目指したというよりも、新しい方向性を模索しているといった感が強く、失敗している箇所も相当数に上り、そのせいでテイルズシリーズとしての根幹部分にひびが入り、やや壊れ気味でもありますが、過去のテイルズシリーズでは味わったことのない落ち着きや品の良さが備わり、どうしても嫌いにはなれません。