読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

エンタメ不感症の患部に巻く包帯

好きなものについて語るブログ

デウスエクス/ヒューマンレボリューション(Xbox360版)

85点 Xbox360 ゲーム

 

点数:85点
 

短評

 隙がなく、惚れ惚れするほど美しい官能的とすら言える作り込みに脱帽させられる大傑作の死にゲーステルスFPSゲーム。オーグメンテーションシステムにより能力が拡張されていく度に攻略方法すら拡張されていく様は見事としか言いようがない。メインのミッションが一本道でやや単調だったり、やり込み要素が足りないなどの不満もあるが、この素晴らしい作品に出会えた喜びが勝る。
 
 

あらすじ

 2027年。ナノテクノロジーバイオテクノロジーの発達は、機械による人間の能力の拡張を可能としていた。体を機械化するオーグメンテーション(人体拡張)は怪我などで身体の一部を失った者、常人を凌駕する能力を欲する者などに広く普及していた。しかし、機械化した人間であるオーグを危険視する反オーグメンテーション運動も同時に盛んとなり、世界中でオーグメンテーション関連の施設や企業へのテロが相次ぐ事態となった。
 元SWAT隊員のアダム・ジェンセンはオーグメンテーション関連企業の大手であるサリフ・インダストリーの警備主任を務める。サリフ・インダストリーが世界に向けて革新的な技術の発表を控える中、突如サリフ・インダストリー本社が謎のオーグ化したテロ集団に襲撃され、ジェンセンは重傷を負い、全身をオーグ化して辛くも生き延びる。それから6ヶ月後、またしても起こったサリフ・インダストリーへのテロに対抗するため現場に復帰するジェンセン。
 ジェンセンはサリフ・インダストリーへのテロの裏に隠された世界を揺るがす陰謀に巻き込まれていく……。
 
 

死にゲーとしてゲームオーバー慣れをさせる通過儀礼の役割を担う序盤

 
 このゲームは序盤が猛烈に高難易度でかつ退屈です。快適とはほど遠い操作性で、さほど垢抜けない癖のあるカバーアクションを中心としたシステムをプレイヤーに強いて、ゲームオーバーの連続を体験させる。序盤から「このゲームは外れだったか」と思わせるほどステルスゲームとしては厳しく単調です。
 しかし、この単調さこそが後のオーグメンテーションシステムの多彩さへプレイヤーを適応させるための通過儀礼的なチュートリアルだったことが後に分かります。
 
 序盤にプレイヤーに負荷を掛け、ゲームの基本的な立ち回りなどを叩き込み、死にゲーとしての心構えを持たせるスタイルはデモンズソウルを彷彿とさせます。
 
 退屈な序盤を過ぎれば、そこに待っているのはオーグメンテーション(人体拡張)という名の快楽です。
 
 

機械仕掛けの神を操るのは作り手の努力と工夫

 
 今作が他のステルスゲームのそれと一線を画するほどの魅力を備えている大きな要因の一つはオーグメンテーション(人体拡張)という主人公の能力を拡張していくシステムにあります。
 
 主人公のジェンセンは体をオーグ(機械)化してから日が浅く、まだ能力をうまく引き出せないという物語的な設定とリンクさせ、序盤は特にめぼしい能力は使えず、ほとんど生身と変わらない状態でオーソドックスなステルスを追体験させられることに。これはそのままゲームのシステムに慣れていないプレイヤーと同じ状態であり、プレイを通じてジェンセンがオーグ化した体に慣れるように、プレイヤーもまたゲームのシステムに順応していきます。
 
 このシステムに順応していくというプロセスがまさに人体拡張をテーマにしているゲーム性ともリンクし、プレイヤーのシステム認識を拡張させることに。
 システム認識の拡張は人間的な体温をあまり感じさせない、メタリックな感触を受ける今作のトーンと相まって、自分の感覚がオーグ化していくような没入感を得られます。
 
 拡張という基調をキーとし、人間の機械化による身体・感覚の拡張がもたらす弊害を描くストーリー。
 舞台となるデトロイトや中国はブレードランナーを思わせるサイバーパンク調の街並みで、それは元からあるスラム街にハイテク設備を後付けしたような、新旧の区画が同居する混沌とした拡張都市。
 そして、ゲーム体験がもたらすプレイヤーの意識拡張と、物語・デザイン・システムが溶け合い、渾然一体となった官能的ですらある拡張体験がこれでもかと味わえる、非常に美しく隙のない完成度に惚れ惚れさせられます。
 
 

オーグメンテーション(人体拡張)によってもたらされる攻略性の拡張体験

 
 今作はステルスFPSをベースとしながら軽めのRPG(成長)要素が加味されており、様々な行動(ハッキング、ミッションの達成や敵の撃退など)によってほぼ自動的に得られる経験値によるレベルアップという概念がありますが、正直こちらはオマケ程度のもので、RPGシューターとしてメインに据えるには物足りません。
 ただ、経験値もクレジット(お金)も、最終的にはオーグメンテーションを強化するためのプラクシスポイントへの変換に行き着くため、オーグメンテーションを頂点とするシステム体型にうまく組み込まれており、経験値を稼いだり金を貯めたりする快楽性はかなり高いです。
 しかも、オーグ化したジェンセンが経験を積むことによって徐々に機械の体になれていくという劇中設定とRPG要素がうまく噛み合っており、経験値を溜めるとオーグメンテーション強化が可能になるという流れに意味が付加されるという副次的効果も。
 
 そして、このゲームをこのゲームたらしめている最大の要因はオーグメンテーションという能力解放システムです。
 経験値を一定数溜めてレベルが上がるか、お金でプラクシスキットを購入する(もしくはキットをアイテムとして拾う)と、プラクシスポイントが取得でき、それでハッキング・索敵・ステルス・戦闘・コミュニケーション能力などを強化することで多彩な恩恵が得られるというもの(ベセスダのゲームとも似ている)。
 このオーグメンテーションが強化可能となると、序盤の単調さなどどこ吹く風で、中盤以降は圧倒的な完成度とバランス設定を誇るシステムの楽しさに酔いっぱなしです。
 
 このオーグメンテーション強化はプレイヤーが自由にポイントを割り振ることが可能。
 ステルス能力を強化すれば、クローク(光学迷彩)などで敵に見つからずに進めるようになったり、ハッキング能力を強化すればロックされた部屋やパソコンのセキュリティを簡単に解除できたり、腕力を強化すれば持てるアイテム量が増えたり、肺を強化すれば毒ガスが蔓延している空間でも活動できたり、肺活量が上がりダッシュ時に疲れづらくなったりと、強化する項目ごとに様々な恩恵が得られる自由度の高いシステムになっています。
 
 このオーグメンテーションによる自由強化システムにより、プレイヤーの強化プランに応じて得意な攻略方法(攻略ルート)が変わるというとんでもないレベルデザインが施され、その完成度に度肝を抜かれました。
 
 入手できるプラクシスポイントには上限があり、一回のプレイで全能力を強化することは不可能なため、どの能力を取ってどの能力を捨てるのか非常に悩ませられることに。一回クリアしただけでは、このゲームの全てを理解することは不可能で、別の能力を強化してプレイすると「こんな攻略法もあったんだ!」と驚かされることが多々あります。
 
 今作は、オーグメンテーションシステムの完成度の高さと、システムのパフォーマンスを最大限発揮させられるように丁寧に丁寧に作られたレベルデザインの妙で、とんでもないステルスゲーム体験を味わうことが可能です。
 
 

少なくない不満あれこれ

 
 まず、メインのミッションが一本道で単調なことが非常に勿体ないです。場所によってはサブクエストを受注し、メインミッションと同時進行させることも可能ですが、明らかにサブクエストのほうが街中駆けずり回り色々なことをさせられる分楽しいという本末転倒な部分も見受けられ、もう少しメインのミッションのボリュームをサブクエストに割くか、もしくは出来るだけデトロイトや中国で舞台を固定して欲しかったというのが本音。
 せっかくデトロイトや中国の街並みをかなり広めのマップで作っているのですから、次から次に舞台を移動させるよりも、この広さを利用したメインミッションを増やしてくれれば言うことがありませんでした。
 
 その街の作り込みの素晴らしさと関連する不満が、ストーリーの進行具合によっては買い物が自由にできなかったり、武器を預けたり引き出したり出来ない点。これはメタルギアソリッド4のように何時でもどこでもオンラインで買い物やアイテムのやり取りが自由にできるようにするか、やはり舞台をある程度街で固定してくれないと不便で仕方がありません。場所によっては非殺傷武器が欲しかったり、強力な火力の武器が欲しかったりするのに、武器の変更ができないため、常に手持ちの武器で攻略しなければならず歯痒かったです。
 
 後、ロードが長いという点が地味に問題です。今作は死にゲースタイルで、しょっちゅうゲームオーバーになるため、ロードが長いことによるストレスの蓄積率がかなり高め。あっという間にゲームオーバーになるのに、そこから元の状態に復帰するのにかなりの時間を要するため、ロード時間を短縮するか、ロードの長さを誤魔化すような工夫が欲しいところ。世界観設定が凝っているため、ロード中に劇中設定の解説などを挟んでくれたら気が紛れたかもしれません。
 
 その他にも操作のレスポンスが悪く、スティックを倒した際の感度を最大まで上げてもまだ快適にはほど遠いもっさりさ。このレスポンスの悪さが改善されるだけで体感的には相当気持ちよく動くようになると思いますが、ステルスゲームなためシューター系のようなキビキビした動作をあまり必要とはせず、それほど気にはならないのが不幸中の幸い。
 
 やり込み要素や次周への持ち越しが無かったりと、ボリューム系の不満点もちらほらあるものの、それらはほとんどがもっと素晴らしい出来の今作を味わい尽くしたいのに味わえる絶対量が不足しているという不満。
 
 

まとめ

 
 改善して欲しい点も少なくありませんが、不満な点を優れた部分の好印象が大きく上回ります。
 
 これまで自分がプレイしたステルスゲームの中でも1、2位を争う、並外れた大傑作。
 もし弱点のやり込み要素が拡張されたらとんでもない化け物に変貌するはず。
 

 

デウスエクス【CEROレーティング「Z」】

デウスエクス【CEROレーティング「Z」】