エンタメ不感症の患部に巻く包帯

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ペルソナ4(PS2版)

 

点数:85点
 

短評

 クリアまで約50~60時間は掛かる大ボリューム。
 前作から引き続きの日常生活パート(シミュレーション+アドベンチャー)とダンジョンRPGパートをくり返すハイブリッド型のシステムの面白さは顕在で、かつペルソナ合体やバトルの面白さも相変わらず高水準。
 中途半端な田舎を魅力的に描くという舞台設定的に新しい挑戦もしているため全体的に好印象な傑作。
 
 

あらすじ

 両親の仕事の都合で地方都市に転校してきた主人公は奇妙な事件に巻き込まれる。不倫報道がされた女子アナがの日にTVアンテナから死体が吊り下がった状態で発見。その遺体の第一発見者の女子高生もまた同じく霧の日に電柱から死体が吊り下がった状態で発見される。常軌を逸した死に方をした両者に共通する点。それは、都市伝説として語られる、が降る夜中、電源を入れていないはずのTVに突如人の姿が映るというマヨナカテレビに映ってしまったことで……。
 
 

RPGにおいて、舞台設定が中途半端な田舎という試みが見事

 
 前作の3でも人工的に作られた学園都市というライトノベル的な舞台設定をうまくダンジョンRPGのシステムに落とし込んでおり大変感心させられましたが、今作はそのような分かりやすいラノベ的な味付けすら廃して、ただの中途半端な、特にこれといって特徴があるワケでもない地方都市を舞台に、生活感溢れるRPGを作るという地味さへの高度な挑戦が見事です。
 
 やや閉塞感すら漂う地方都市の田舎感を丁寧に描きつつ、それとは逆にインターフェース周りやメニュー画面などはカラフルなカラーデザインで統一し、音楽もリズミカルで軽快。ギャップを演出してみせることで地味なのに華やか、田舎でダサイのに今風という相反する印象を同時に成立させることに成功しています。
 
 一方で地に足着いた生活感を演出しつつ、一方でそれを重苦しく感じさせないデザインワークや音楽で軽やかに飛躍させてみせるという鮮やかな手並みで、国産RPGでこのようなアプローチの可能性もあるのかと驚かされました。
 
 

オーソドックスなターン制(ウェイト制)なのに秀逸なバトルシステム

 
 前作の3で個人的に最も好きだった点は敵の弱点を攻撃・または自身の弱点をカバーすることに重点を置いたバトルシステムの完成度でした。
 自分はベイグラントストーリーなど、弱点を突く・突かれる駆け引きを重視するバトルシステムが好みなため、ペルソナのそれも非常に肌に合い、その面白さは今作でも顕在。
 
 弱点を突いたりHPを削る用の攻撃型のペルソナ、敵からの属性攻撃を防いだり、HPを回復したりする防御型のペルソナ、またはその両方を兼ねるペルソナを合体で用意し、それを局面ごとに切り替えながら戦うバトルはやはり絶品。
 
 敵に応じてペルソナを交換して戦う面白さはポケモンのそれと非常に酷似した印象を受けます。ただでさえ完成度が高いポケモン的なバトル最中のペルソナ交換システムに加え、合体でペルソナのスキルをコーディネイトできるカスタマイズ要素、日常生活パートとの連携で仲良くなったキャラとのコミュランクに応じてペルソナ合体時に経験値ボーナスが加わる要素まで完備され、システムに厚みがあります。
 
 弱点を突くことのメリット、弱点を突かれることのデメリットなどのリスクバランスも絶妙で、プレイヤーが漠然とプレイしているだけでも弱点を突くことでバトルが有利に運ぶことが体感で分かる工夫が施されている点も丁寧。これは面白いシステムを作り、かつそれをプレイヤーに伝えようとする努力の賜です。
 
 ここら辺は圧倒的な完成度なのに非常に面白さが分かり辛いベイグラントストーリーとは対極で、ベイグラントもこれくらい魅力を伝える努力を丁寧に行えば、人を選ばない作品になったのにと歯痒い思いです。
 

 
 バトルはBGMも含めテンポ感が抜群。敵の弱点を突けた際はペルソナ使用の際にカットイン演出が入り、弱点を突けた快楽をさらに演出レベルでブーストしてくれる至れり尽くせりな作り。カメラワークも含めバトル演出の気持ちよさはハイレベルで、システムもバトルの見せ方も隙がありません。
 
 この中毒性の高いペルソナ合体システムと、作ったペルソナを戦略的に用いるバトルシステムが高次元で融合している様は見事。
 
 

ダンジョンRPGベース+サブ的な他ジャンルのハイブリッドのシステム

 
 似たようなアプローチのゲームでは、(アクションRPGですが)ダーククラウドダーククロニクルなどのダンジョンアクションRPGパート+シミュレーション(以下SLGと表記)パートがくっついたゲームがありますが、今作はダンジョンRPGにサブ的にSLG+アドベンチャーである日常生活パートをミックスし、ダンジョンRPG部分を強化するという、前作から引き続きの手法。
 ダーククラウドダーククロニクルはそれぞれのパートがうまく融合しているとは言えない出来でしたが、コチラはしっかり日常生活パートでの行動がダンジョンRPG部分に反映されるため相乗効果が生まれています。
 
 相変わらず日常生活パートではSLG(育成SLG)ジャンルの楽しさの肝の、タイムリミット(期限)に急かされつつ、何かを選ぶと何かは捨てなければならないという苦渋の選択を強いられ続ける心地よいプレッシャーが堪能できます。
 
 ただ、サブイベントの進行にも絡んでくるパラメータ(知識・勇気・根気・寛容さ・伝達力)を上げていくという簡易的な成長要素は面白いのですが、これが数値などで視覚化されないため、後どれくらいでランクが上昇するのか体感で分かり辛いのが前作から変わらず、プレイのスケジュールを組む際の問題に。
 タイムリミットまでに効率的に動かなければならないというSLG(もしくはアドベンチャー)面が、天候という概念なども加わり前作よりも強化されたため、上昇させるパラメータなどの表示が大雑把で、細かいスケジューリングがし辛いという不満点が前作よりストレスに感じるようになりました。
 
 イベントシーンがスキップできない仕様なのもSLG要素と非常に食い合わせが悪く、プレイヤーにあれこれ試行錯誤させるというアプローチのわりに、イベントシーンが長すぎてシステム的なテンポが殺されてしまうという本末転倒なゲームバランスになってしまっています。
 日常生活パートは確かに面白いのですが、目指しているシステムの方向性に対して明らかにイベントシーンをスキップできないという仕様が大きくマイナスに働き、楽しさを阻害しており残念。
 もう少し周回プレイとまではいかないものの、ある程度くり返しプレイすることを前提とし、イベントシーン周りを軽量化・高速化(スキップや早送り機能の実装)をしないとシステム的な面白さの足を引っ張ってしまっています。
 
 

ダンジョンRPGパートの致命的な退屈さ

 
 前作と比べマップが無駄に広くなったことで、やたらに移動に時間が掛かるようになり、単調さが目立つように。マップが広くなったわりにそれようのレベルデザインがされているワケでもなく、ただスカスカなだだっ広いだけの緊張感のない空間を走らされて眠気に襲われることがしばしばありました。
 それと、前作は敵が即死魔法を多用してきたため、いちいちそのエリアに応じて即死魔法に耐性のあるペルソナに交換するという手間があった分、緊張感が持続しましたが、今作はほとんど敵が即死魔法を使ってこず、そのため現在装備しているペルソナに注意を払う必要がなくなったのも単調に感じる要因の一つだと思います(難易度ノーマルでプレイしたため、もしかしたら難易度エキスパートでは使ってくるのかもしれませんが)。
 
 ダンジョンRPGパートは面白さのコアの部分で、ここが退屈ということはあらゆるシステムに影響が波及してしまいます。自分もあまりにもダンジョン探索が退屈なため、なるべくダンジョンに行かないように1つのダンジョンに付き数回で探索を終えてしまうようなせかせかしたプレイとなってしまい、せっかくのバトルシステムの面白さなどが目減りしてしまう結果に。
 
 このダンジョンRPGパートの退屈さは今作の中で最も惜しいと感じた部分で、せっかくバトルシステムやペルソナ合体、そしてペルソナ合体の楽しさを強化するように作られた日常生活パートが相乗効果を発揮し、気持ちよくシステム連携しているのに、肝心のダンジョン探索がつまらないため非常に勿体なく思います。もう少しレベルデザインを作り込み、ダンジョン探索に緊張感を持たせるようなバランスに仕上げないと、眠くて仕方がありません。
 
 

良くも悪くもユーザーフレンドリーに

 
 前作ではタルタロス(ダンジョン)を探索する際にメンバーに体調が良い・悪いという概念と、それに関連するダンジョン探索をしている際の疲労、そもそも予定があって同行できないなど、ある程度個々のキャラクターの生活リズムが反映されて面倒臭い一面がありましたが、今作ではそれらは全て廃止され、いつでもどこでもプレイヤーがダンジョン探索したければ常時付きあってくれるシステムに。
 
 その他にも前作で面倒に感じたシステム部分は大体がユーザーにとって都合のいいように変えられ、プレイしやすくなりました……が、その分プレイヤーに対する嫌がらせという角が取れて丸くなってしまったような、あまり自分が好きなタイプの続編の在り方ではなく、正直手放しでは褒めたくありません。
 
 モンスターハンターシリーズで農場という概念が生まれ、ハチミツなどを狩り場に収集しにいく必要が無くなった際にも感じた、確かに便利にはなったものの、何かゲームにおいて大切な、その面倒くささがその作品をその作品たらしめていたのに、それが喪失したかのような虚しさと似た感覚を覚えました。
 
 これによって面倒なシステムをうまく処理できた際の達成感も同時に失い、便利にはなったものの何かプレイが平板で単調になったようで、素直に便利さを歓迎できませんでした(これは前作との比較であり、今作から始める分には特に何の問題もありません)。
 
 

まとめ

 
 ダンジョン探索の退屈さや、イベントシーンにスキップ機能がないなど不満に感じた点も多いですが、最終的には好ましい印象が勝ります。
 
 あまりプレイヤーに好き嫌いを意識させない全方位的なアピール力を持ち、国産RPGの中では圧倒的な存在感を発揮する傑作。
 

 

ペルソナ4 PlayStation 2 the Best

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