エンタメ不感症の患部に巻く包帯

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN(前篇) 〈感想・レビュー・評価〉

 

トレーラー


点数:55点
 
 

あらすじ

 
 人と巨人の戦争から100年。人類は巨人の侵入を防ぐために築かれた高いの内に籠もったままであった。外はかつて使用された強力な爆弾により荒れ、同じ過ちをくり返さないようにと文明の進歩を禁止する厳しいルールを課せられながら、人々は壁の中で窮屈な生活を余儀なくされていた。しかし、そんな生活に嫌気が差していた少年エレンは壁の外にあるという海に思いを馳せ、いつか壁を乗り越えることを夢見る。そんなある日、壁を遙かに凌ぐ超大型巨人が壁に穴を開け、壁内に巨人が多数侵入。壁内の人間に大量の死傷者が出、混乱の最中、エレンも幼馴染みのミカサと離ればなれになり、ミカサを奪った巨人を憎悪する。その2年後、エレンは巨人によって破壊された壁を塞ぐ作戦へと参加する一人の兵士となっていた……。
 
 

ほぼ全画面ツッコミどころのオンパレード

 
 始まって数分でもはや映画というよりもドラマレベルの安っぽい絵作り(そもそもカメラの画質があまり上等ではないっぽい)の画面が映り、これはダメだと思ったら、案の定最後までそれが維持され、安定の低クオリティでした。
 
 全編に渡って衣装・特撮・オープンセットと頑張っているのは伝わってくるものの、それが魅力的に機能しておらず、個々の頑張りがそれぞれの分野の範囲内から一歩も踏み越えず、映画を構成するパーツの歯車が噛み合っていない物足りなさだけが募っていきます。
 
 衣装が凄くても役者の演技が酷かったり、特撮が凄くても脚本が酷くて盛り上がらなかったりと、それぞれのパーツが空回りするだけで、映画そのものの満足度の向上に与していません。
 典型的な監督自身に演出力が不足している場合によく起こる現象。魅力的な青写真を描けず、思い付きで考えたような出来損ないの設計図でパーツを組んだ結果、各部分がちぐはぐになるという当然の帰結を見せられるだけで非常に苦痛な作品でした。
 
 

特撮の頑張り

 
 今作は大体のシーンが『安っぽくて見ているのが辛い・安っぽさを誤魔化すのが限界・見応えある特撮』の三つのどれかの印象で、特撮がこれほど頑張っていなかったら本当に目も当てられない出来になっていたことを考えると、よく特撮で踏ん張ったなと好印象です。
 
 特に大小サイズの混じった巨人群は圧巻で、この大きさの規格がバラバラな巨人が一つの画面内に収まっていると、得体のしれない、常識がまるで通用しない相手であるという薄気味悪さがそれだけで伝わってきて素晴らしかったです。ここはアニメでは単にパースで大きい巨人と小さい巨人を描き分ければいいだけなので、通常サイズの巨人の中にヘンテコな小さいサイズを混ぜるというだけで絵的な違和感を出せる実写の特撮のほうが気持ち悪さがより際立ち、実写にした甲斐があったと思います。
 
 その他にもちょこっとだけ登場の超大型巨人の迫力や、グロ描写など、特撮周りは楽しめました(立体機動以外)。
 
 あえて不満を言うなら序盤の巨人に襲われるシーンがあまりにも一方的に蹂躙されるシーンが続くため、やや退屈なこと。ここは、原作のように巨人と戦い慣れていない駐屯兵団が巨人に挑もうとするが巨人が恐ろしすぎて尻込みするなどの描写がエレン達の視点と同時進行で入っていたほうが、より巨人と対峙することの恐ろしさに感情移入しやすく、分かりやすかったと思います。そのようなシーンを最初にまとめて入れてしまっているため、構成上逃げ惑うシーンだけやたら長く、少々くどく感じます。
 
 

脚本がダメダメ

 
 まず、調査兵団という存在がきちんと序盤で描写されないこと。原作・アニメ版とも、まず調査兵団について真っ先に描かれます。これは、エレンと同じ壁の外に興味を持つ集団で、エレンの憧れで目標であるという説明と同時に、兵団の中で最も対巨人戦に秀でた戦闘力を持つプロ集団である調査兵団ですら巨人相手には手も足も出ないという絶望感表現のため。今作はそれを描かないため、巨人に対して人類がどれほどの対抗力を持っているのかが非常に分かり辛いです。
 
 それに、エレンという壁の外側に興味を持つキャラと対比になるような壁の内側に籠もりたがるキャラがいないという問題点とも絡んできます。原作では内地の憲兵団志望のキャラが多いため、自然と調査兵団志望のエレンは目立ちましたが、今作では対になるようなキャラがいないため、エレンの壁の外にやたら興味を持つという変人感がうまく機能しておらず、ただのちょっと変わり者程度の印象しか受けません。そのせいで、エレンというキャラクターの魅力が大幅に薄れる結果になっています。
 
 その他にも、前篇ではかなり重要な役割を持つはずの爆薬の扱いが雑な点。まず爆薬が見つかった時点で軽い達成感を持たせてから喪失させ苦労が水泡に帰す絶望感を味あわせないといけないのに、そこがさらっと流されてしまいます。挙げ句の果てには巨人に強襲されるというサスペンス、爆薬を謎の人物が盗もうとするサスペンス、自暴自棄になったキャラが爆薬に引火させ巨人に捨て身の特攻をしようとするサスペンスという、一つのシーンにサスペンスを重ねすぎてサスペンスの交通渋滞が起こり、もはやふざけているようにしか見えません。
 
 その他欠点を挙げていったらキリがないほど、脚本は褒められるようなところがほぼゼロに等しいダメさで、この作品全体を弛緩させている主要な原因の一つ。
 
 

まとめ

 
 あまりにも欠陥だらけで、どこがつまらないのかを考えるのすら苦痛な作品。一部特撮意外に見るべきところは特にない駄作。