エンタメ不感症の患部に巻く包帯

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STEINS;GATE(シュタインズゲート) (Xbox360版)

 

OPムービー

 

点数:85点

 
 

短評

 
 バック・トゥ・ザ・フューチャー2型の歪んだ歴史修正もの。ミステリー的な辻褄合わせの細かさと、現実とフィクションの配合比率の斬新さに脱帽させられた大傑作。
 
 

あらすじ

 
 偶発的に完成した、メールを過去へ送れるタイムマシン。深く考えもせず興味本位でメールを過去に送信し歴史に干渉したせいで未来の世界が、現在の秋葉原が改変され、世界の在り様が変質する。過去に干渉する事の深刻さに気づけなかった自らの浅はかさを呪いつつ、歪んだ歴史を元に戻すため、過去に送ったメールを打ち消す苦闘が始まる……。
 
 

トライ&エラー

 
 序盤の、タイムマシンがなぜ物質を過去に送れるのか分からず、仮説を出しながら解明していくというくだりは、続編のロボティクスノーツのロボット描写にも引き継がれていく科学アドベンチャーシリーズの優れた点。
 
 プレイヤーが疑問に感じるであろうポイントを先に劇中のキャラがツッコミ、丁寧に疑問を潰してくれるため、作り手がプレイヤーの視点(注目ポイント)をしっかりトレースできているんだという安心感を覚えます。
 
 

ストーリーをクリフハンガーにするなら……

 
 科学アドベンチャーシリーズの前作であるカオスヘッドもそうでしたが、もはやこのシリーズに選択肢というものが必要なのか疑問に思います。
 明らかにこのシリーズはシステムよりもストーリー押しのバランスで、そうなるとストーリーの進行(トゥルーエンドへのルート、など)を妨げる選択肢(この作品では携帯メールへの返信内容が選択肢代わりになっている)が邪魔にしか感じられません。
 
 カオスヘッドの妄想トリガーも正直どうでも良かったですが、シュタインズゲートのメール返信によるルート分岐も面倒なだけで、そんなことをやらせるくらいならさっさと先の展開を見せて欲しいです。
 
 明らかにプレイヤーの欲望(早くストーリーの先が見たい)とこのゲームがやらせたいこと(選択肢潰しによる正しいルート探し)が噛み合っていません。
 
 もはや選択肢はオマケ用のサブイベントなどに留め、ストーリー自体は一本道でいいのではないかとさえ思います(完全一本道だとやらされてる感が生じるので、多少のバッドエンドへの分岐程度はあってもいいですが)。
 
 

カオスヘッドのダメダメ主人公やヒロインから一転

 
 主人公のオカリンは前作の何もしないダメ主人公の反省を踏まえたのか能動的にサクサク動いてくれて気持ちがいいです(カオスヘッドをやるとオカリンの行動力が嬉しい)。
 
 前作の主人公との関係が非常に薄いままのヒロイン達とは異なり、メインヒロインのクリスのツンデレ表現が絶妙。無理矢理ギャルゲー的な奇抜なイベントを入れたりせず、ストーリー進行の中で途方に暮れるオカリンに対し、手を差し伸べてくれる気が利いて気配りできる女の子として描かれ、自然と好感を抱ける丁寧な作りになっています。
 主人公のオカリンの苦悩にしっかり感情移入させられているため、そこにすっと光明の様に救いの手を差し伸べてくれるクリスを好きになり、まさにそのクリスに対する好感ゆえにラストの展開に胸を締め付けられるような痛みが伴うという隙のない脚本が職人芸的。
 
 ときめきポイントとしては、ルカ子(男の娘キャラ)がややかすれ声という点が個人的にツボだったこと。男の娘キャラはみんなかすれ声になればいいのにとちょっとだけ願ってしまいました。
 
 

謎解きの快感

  タイムマシンやらバタフライ効果やらという単語が頻出するためプレイ前はジャンルはSFなのかと思っていたら、やってみると、面白いと感じた部分はミステリー部分がほとんど。
 
 まず、D(デロリアン)メールが過去に送られ、バタフライ効果で歴史が大きく改変される。最初はバタフライ効果の影響部分だけしか見えない。なぜ、たった一行か二行のメールがこうまで世界に影響を及ぼすのか? 事態の中心にいる羽ばたく蝶の正体が明らかになると、今まで周囲で起こっていた変化の意味が見えてくる……という作り。

 最初から当たり前のようにそこにあるものが、実は奇跡的な確率のもとで届けられた過去から未来への救世のバトンだったという、バタフライ効果をそのままミステリーに落とし込んだかのようなうまい脚本に唸らされました。

 メインの謎以外にも細部に至るまで細やかな辻褄合わせが行き届いており、Ever17メタルギアソリッドFate/stay nightなどの作品同様、終盤のネタばらしでパズルのピースが気持ちよく当てはまっていくようなカタルシスが味わえます。
 
 

現実とフィクションの配合比率

 
 シュタインズゲートの面白さの神髄は世界観設定の現実とフィクションの配合比率の斬新さにこそあると思います。
 
 現実にある街、現実に起こった事件、現実にある組織を核とし、それを分解してフィクションとして再構築。プレイヤーはそれを極上の物語として堪能し、満腹感を覚える。ゲームを終えてネットでシュタインズゲートのことを調べると、実はこのゲームの中に出てくることには事実が含まれていることが分かる。現実とフィクションの境界が揺らぎ、再度めまいのような感覚を味わう……ゲームをクリアした後もなお刺激を与え続けてくれるお土産つきのサービス精神満点さに惚れ惚れしました。
 
 

Ever17と比べて……

 
 確かにこの作品は傑作だと思いますが、どうしても個人的に納得いかない点が一つ。それは観測者を主人公のオカリンではなくなぜプレイヤーに委ねなかったのかという点。
 全てのエピソードを見守り、記憶に留めるのはプレイヤーであるべきだったのに、それを主人公のオカリンに委ねてしまったため、これはプレイヤーの物語ではなく、結局オカリンの物語でしかありません。
 
 物語が先にありゲームという表現媒体の特色を次に置いている。ゲームでしかなし得ない物語を作ろうとはしていない。ゆえに、こんなメディアミックスが可能な中途半端な物語になってしまった。
 
 メディアミックスを封じ、ゲームでしかなし得ないストーリーテリングを用いたEver17のほうが同じノベルゲーとしては志が高かったです。
 
 

まとめ

 
 終盤に行くにつれ段々スケール感のごまかしが通用しなくなり盛り下がってくる科学アドベンチャーシリーズお馴染みの尻下がり感や、メインのシナリオに関係ない不必要に思えるシーンが長かったりと欠点もちらほらありますが、それらを払拭するほどの幸福な物語体験が味わえる大傑作。
 
 
5pbの科学アドベンチャーシリーズ

 

 

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