エンタメ不感症の患部に巻く包帯

CHAOS;HEAD NOAH(カオスヘッド ノア) (Xbox360版) 〈感想・レビュー・評価〉

 

OPアニメーション

 

 

点数:60点

 

短評

 欠点も多々あるが、それでも作り手の熱い情熱を感じる次世代ノベルゲーの萌芽。
 スキップが遅すぎて周回プレイが地獄のように辛いのがかなりのマイナス点。
 
 

あらすじ

 
 渋谷のとあるビルの屋上にあるコンテナで二次嫁と同居する引きこもり気味なキモオタ高校生である西條拓巳(にしじょうたくみ)は、世間を揺るがす連続猟奇事件、通称ニュージェネ事件には目もくれずネトゲと二次元美少女との妄想に勤しんでいた。しかし、人間が壁に磔にされるというニュージェネ事件の一端を目撃してしまったことがキッカケで日常が徐々に狂気に浸食されていく……。
 
 

ノベルゲーの歴史を変える? 主人公の自室演出

 
 この作品で最も優れているものの一つだと思えたのは3Dで表現される主人公の部屋。立体的な3D空間は手書きの背景よりも遥かに無機質で圧迫感があります。
 PCのHDDのカリカリ音、空虚に響くイスの軋み、無音に近い部屋では暴力的とも思える音量で叩きつけられるキーボードのタッチ音など、これほどまでに、自室描写だけで性格の暗さや救いの無さを表現し、主人公に感情移入させられたノベルゲーは初めて。
 サウンドノベルの鏡のような環境音演出に「これはとてつもない傑作なのでは!?」と期待させられました……が、結論から言うとその期待は長続きしませんでした。
 
 

複数メディアをスイッチさせながらの語り口が次世代の香りを漂わせる

 
 非常にうまいのが、多数のメディアを使った情報の提示手法。作文用紙をアップにしたり、ネットニュースサイトを丸々見せたり、チャットに貼り付けられたグロ画像を見せたり、動画投稿サイトにアップされた動画風に見せたり(厳密には動画ではない)、時代に合わせるように自然なメディア選択がなされ、非常に気持ちがいいです(過去の回想なら紙やTV、現在ならネットニュースや動画サイトなどが多い)。
 
 ここら辺の見せ方の妙は他のノベルゲーの語り口とは格が違い、作り手の意識の高さが窺えます。
 
 

サスペンス+クリフハンガー

 
 このゲームは事件が何一つ解決しないのに次から次へ新しい展開が途切れることがなく怒濤の如く起こり続けるアメリカドラマ型のストーリーテリングを採用しています。しかもご丁寧にチャプターが分かれており、そのチャプターのラストにはきっちり次のチャプターへ引っ張るためのクリフハンガー(衝撃的な展開)が用意されている充実ぶり。
 馬の鼻先にぶら下げる人参を絶やすことがない徹底的なサービス精神で、読んでいて飽きることがありません……序盤は。
 
 自分はサスペンス大好き人間なので、これほどまでに過剰なまでにプレイヤーを飽きさせないようサービス満点の姿勢で作ってくれれば、多少後々に辻褄が合わなくなろうとも大丈夫……と言いたいところでしたが、今作はあまりにも目に余る欠点が多く、途中から「これはダメだ」と脱力し、徐々に話しに対しての興味が失せていきました。
 
 

サスペンスなのに……

 
 まず、序盤で感情移入させられた主人公のダメさ加減描写は素晴らしいのに、いかんせんサスペンスというジャンルの主人公としては致命的な欠陥があります。それは、
 
 
 事件にまったく興味を持たないこと
 
 
 プレイヤーが調べて欲しいことには興味を示さず、事情を知ってそうな人に質問できる機会があってもことごとくコミュ障だから人に話かけられないという理由で聴けず仕舞い。中盤以降もまだ事件を避け続けたがる主人公に腹が立って仕方がなくなります。
 
 この主人公は常にプレイヤーの興味と微妙に興味を抱く対象がずれており、こちらがやって欲しいことはスルーで、プレイヤーがただのミスリードだろうと気づいている部分に異常に執着し続けるため、プレイヤーの視点(物語の乗り物)しては完全に欠陥でしかありません。これほどまでにサスペンスの主人公として不適合なキャラは見たことがないレベル。全てのあからさまなミスリードに反応し続ける主人公に殺意すら芽生えてきます。
 
 そもそもミスリードとはプレイヤーに対してなされるものであり、なぜそれに主人公のほうが積極的に反応するのか、理解に苦しみます。
 
 例えば、主人公はヒロインの一人をずっと悪魔だと言い続けますが、プレイヤーはプロローグやその他の言動でこのヒロインがそうでないことにかなり早い段階で気づき、主人公の過剰な恐がり方に辟易しだします。もしこのヒロインを悪魔だと思い込ませたいのであれば、それは主人公ではなくプレイヤーに「もしかしたらこのヒロインには裏があるのかも」と思い込ませなくてはならず、主人公が勝手にそうでないものをそうだと思い込んで怖がっているのを延々見せられ続けるのは鬱陶しいだけです。
 
 怖がらせなければならないのは主人公ではなくプレイヤーのほうです。
 
 

ヒロインが空気だが、魅力的なシチュエーションもちらほら

 
 このゲームは疑似ギャルゲー的な複数ヒロインスタイルを取っていますがヒロインの背景が掘り下げ不足でまったくもって魅力が皆無。
 
 数少ないときめきポイントは、あからさまにあやしい美人の先輩が主人公に近寄ってくるときめきとサスペンスの入り混じった序盤と、イジメにあって失語症になってしまった少女とギガロマニアックス(妄想を現実化できる特殊能力)の力を使い、大勢周りに人がいるにも関わらず、テレパシーのように頭の中で二人きりで会話しお互いの心の傷を慰め合う中盤のシーン、くらい。
 
 特に序盤の美人の先輩が怪しさ全快で主人公に近寄ってくる展開はこのゲームの中で一番興奮したポイント。キモオタに美人が言い寄ってくるだけで十分サスペンスになるのだと妙な感心を覚えました
 エロゲーと美少女フィギュアだらけの部屋に美人の先輩を招くというシチュエーションが、この世界で最もサスペンスフルなのではないかと本気で考えさせられます。
 
 

システム的な欠点あれこれ

 
 個人的なプレイ環境の話ですが、Xbox360のDL版を購入したので、マニュアル無し状態でやっていると、妄想トリガーという普通のノベルゲーでいう選択肢的なシステムがあることに気づかず、中盤近くまで一切トリガーを発動させないまま進めてしまう事態に。
 劇中で妄想トリガーというシステムを一切説明してくれないのは不親切とも思いましたが、ノベルゲーなのだからシステムの説明なんてゲーム内でするわけはないかと諦めることに。
 
 妄想トリガーのことは微々たる問題ですが、本題はスキップの遅さです。このゲームはメインのEDまではほぼ一直線で、その後二週目から各ヒロインの個別ルートがオープンされ、個別EDの回収になるのですが、いかんせんスキップのとろさが尋常でなく、7人分のヒロインの個別ED回収に10時間近くも掛かってしまいました。
 
 しかもヒロイン別の個別EDも一部を除いてただの後付けのようなものがほとんどで、特にこれを見たからといって本編の印象が強化されるわけでもないわりとどうでもいい薄い内容なのにも関わらず回収にだけは尋常じゃない時間を取られるというたまったものではない仕様(スキップが遅いのはXbox360版だけなのかも)。
 
 トゥルーエンドを見るためにはこれらの個別ED回収作業が必須なため、ほとんど拷問に近い苦痛でした。
 
 

まとめ

 
 サスペンスが効いている序盤は十分楽しめたのですが、中盤~終盤にかけてのとんでも展開で一気に評価ががた落ち。
 
 ただ、後にシュタインズゲートに繋がる魅力的な要素も見受けられたので、こちらが種で、シュタゲが実だとするならば、よくこんな怪しい種があそこまで熟れた果実に育ったものだという感慨を味わえます。
 
 

余談

 
 ギガロマニアックスはKIDのネバー7に出てくるキュレイシンドロームと酷似した設定のため、斬新さは一つもありませんでしたが、元KIDのスタッフが5pbに在籍していると知り、5pbの科学アドベンチャーシリーズに流れるインフィニティシリーズの遺伝子に密かに胸が熱くなりました。
 
 
5pbの科学アドベンチャーシリーズ 

 

 

CHAOS;HEAD DUAL (通常版)

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CHAOS;HEAD NOAH

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