読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

エンタメ不感症の患部に巻く包帯

好きなものについて語るブログ

トゥルー・ディテクティブ ファーストシーズン

f:id:chitose0723:20170522222359j:plain

 

トレーラー

 
点数:95点
 
 

あらすじ

 
 2012年元刑事であるラスティン(ラスト)・コールマーティン・ハートの二人はルイジアナ州警察に呼び出され聴取を受けていた。警察側は当時の資料が紛失したため、1995年に起こり、二人が解決したとされる猟奇殺人事件の話を聞かせて欲しいと言う。警察側には過去の事件の話を聞く以外に別の思惑があることを見抜きながらも、刑事だった過去を振り返りながら感慨深げに事件の話を語る二人。しかし、徐々に二人が警察に対して語る証言と実際に起こった猟奇殺人事件の真相が乖離していき・・・・・・。
 
 
 

マシュー・マコノヒーウディ・ハレルソンいう連星の周りをストーリーや設定や登場人物という名の天体がぐるぐると公転し形成された恒星系、もしくは銀河のような作品

 
 今作は初っ端のタイトルシーケンスから異様で、カントリーソングに乗せ、人間にルイジアナ州の景色をテクスチャとして張り付けたようだったり、その反対に今度は物に人間をテクスチャとして張り付けたような奇怪な映像が次から次に映し出され、最初は意味は分からなくとも得体のしれない不思議な世界の洗礼を受けているかのような気分になるビジュアルに圧倒され「このドラマは普通じゃないぞ!」と身構えさせられます。
 
 そして、第一話の冒頭でマシュー・マコノヒーが登場した瞬間、もうこの作品の虜になりました。善人なのか悪人なのか、イカれているのかまともなのか、捉えどころがない、そこにいるのに存在がたゆたってハッキリと認識できない様な不穏さを背負った異物が画面を支配している・・・・・・もうこれだけでこの作品は傑作だろうと確信できました。
 
 あまりにもマシュー・マコノヒーの演技や存在感に嘘っぽさが無く真に迫り過ぎているのと、この作品自体が安っぽさを完全排除することに徹し、1カットたりとも現実に引き戻されるようなしょぼいアングル選択やカメラワークを挟むなどという隙を見せないため、ドキュメンタリックという名のアリバイ的なリアリティを出すことそのものが目的化したような似非(えせ)リアリティとは次元が異なる、演出という魔法を最大限駆使したら結果的に嘘臭さが微塵もない映像に仕上がっただけという、安易なリアリティの出し方とは距離を取った高級感のある作品に仕上がっています。
 
 今作を見る直前にポール・グリーングラス監督の“ジェイソン・ボーン”を見ていたので、映像を現実の光景に近づけることが目的化しているドキュメンタリー肌の監督の志向するリアリティと、今作の安っぽさを排除していったら結果的に嘘臭くなくなっただけという仕上がりを見比べられ、ドキュメンタリックなリアリティを追求するという安易なアプローチによって逆に生じてしまう映像的ノイズとはほぼ無縁の一部の隙もない今作の化け物さ加減がよく分かりました。
 
 本物に似せただけの偽物を作ることに尽力するよりも、本物とは違う方向性の偽物を極めんとするほうが最終到達点が高くなるというお手本のような作品。
 
 

作品そのものが不眠症を患っている様な気怠さに包まれている

 
 マシュー・マコノヒー演じるラスト・コールという刑事はある過去の出来事により不眠と薬物中毒の後遺症に悩まされており、常に虚空を見つめ、心を過去に置き忘れてきたのに惰性だけで生き続けている精神の抜け殻めいた印象の人物ですが、この作品自体もまるでマシュー・マコノヒーの演技テンションそのものを体現しているかのように気怠くダウナーな雰囲気に包まれています。ラストと同じで時間に取り残され過去を生き続けるかのような田舎の風景を丁寧に繋いだり、ラストの妥協を許さない物事に対する神経質さや厳格さを体現したかのような一切のしょぼさを許容しない作り手の絵作りへのこだわりぶりなど、それら全てがラスト・コールの有り様と重なり、ラストは作品そのものであり、作品はラストそのものであるという印象を問答無用で突きつけてきます。
 
 登場人物から受ける印象と、作品全体から受ける印象を神がかった演出のバランス感覚で一致させるという作り手の途方もない力量に戦慄すると共に、そのとんでもないアプローチの正否の責任を否応なく担わされるという重圧に屈しないマシュー・マコノヒーの才能にも惚れ惚れしました。
 
 普通ならクライムサスペンス的に猟奇殺人事件の進展や二人の証言から生じる矛盾そのものを話の推進力の中心にしそうなものですが、映画の“アウトロー” における主人公 ジャック・リーチャーの行動動機そのものが最後まで謎として扱われるように、今作も事件そのものはオマケで、興味の中心となるのはなぜラスト・コールはこの猟奇殺人事件にこだわり、入れ込んでしまうのかというラスト・コールという謎めいた人物の行動動機のほうに軸足が置かれているのも非常に賢い判断だと思います。
 
 今作におけるマシュー・マコノヒーの存在感は猟奇殺人事件の真相など遥かに凌駕するほどミステリアスで魅力的なため、事件ではなく人物に対する興味を中心に据えるという大胆なアプローチも許容させる力があります。
 
 
 

不満あれこれ

 
 好みの問題でもありますが、自分はカメラの動きを意識させられる固定撮影ではなく移動撮影のある長回しが死ぬほど嫌いなので、4話の目先の緊張感を安易に盛り上げるためだけの長回しサスペンスシーンはいらなかったと思います。一応ラストが緊張状態に置かれているため撮り方も緊張感を煽るように同期させ長回しにするというやり方は理に適っていると言えなくもないですが、この重厚な作品にこのような子供騙しの手法など不要です。
 
 
 

まとめ

 
 これほどまでに実写作品に心底惚れこんだのはポール・トーマス・アンダーソン監督の“ゼアウィルビーブラッド”やリドリー・スコット監督の“悪の法則”以来で、間違いなく自分にとって生涯ベスト級作品の一本。
 
 存在すること自体が宇宙誕生と同程度の奇跡である超傑作。
 
 

クズの本懐(アニメ)

f:id:chitose0723:20170519002248j:plain

 

トレーラー

 

 
点数:80点
 
 
※原作未読
 
 

ブギーポップは片思い中

 
 群像劇的にキャラの視点がスイッチされながら進み、最後まで一人のキャラが全容を把握するということはなく、それぞれの視点が他の誰かの視点を補完する関係になっていたり、“ブギーポップは笑わない”を連想させるようなややミステリーチックな構成が巧みでした。
 
 この構成のため、キャラクターも最初出てきたときの印象と、違うキャラの視点から捉えた際の印象が異なり、同じキャラクターなのに次から次に違う顔を覗かせ続け、分かりやすいキャラとして印象を固定化させてくれません。
 
 自己認識と客観的な他者からの視点でズレが生じ、これが今作の独自のキャラとの近すぎず遠すぎずの距離感を生み、自分が何者なのかも分かっていないキャラクターたちが延々とゴールがあるかどうかも分からない迷路を歩いているのをおっかなびっくり観察しているような不安で落ち着かない気分が持続し、終始飽きることがありませんでした。
 
 

成長するって気持ち良い

 
 今作を見始めた時はやたら毎週ペッティングばかりしているエロいアニメ程度の印象でしたが、最終話まで見終えるとなんとも清々しい成長物語で、まさか今作への印象が最初と最後でここまで好転するとは思ってもみませんでした。
 
 真剣になるのは恥ずかしいけど、恥ずかしがる必要なんてない
 
 ただそれだけのド直球なメッセージを手を替え品を替え全力で描き切っているため、今作を見終わった後、若干の苦味と同時にそっとメッセージに背中を押されるような爽やかさがあり、思ってもみなかった余韻に驚かされました。
 
 特に最終話の一話との対比でヒロインの成長を端的に描くシーンが大好きで、これを見られただけでも今作を最後まで見てよかったと思えるほど。
 
 

まとめ

 
 アニメーションとしての快感はイマイチで不満だったり、今作のラスボス的な人の成長がさすがにあっさり片付けられ過ぎていて不満だったり、好みのコンテのテンポ感に比べるとかなりスローペースなリズムで進行するため若干イライラしたりもしましたが、終わってみるとビックリするくらい今作を好きになっており、大変満足でした。

 

 

 

夜廻(よまわり) (steam版)

f:id:chitose0723:20170502021452p:plain

 

トレーラー


 
点数:60点
 
 

短評

 クリアまで約5時間。かわいいデザインとは裏腹にフロムソフトウェアもビックリな高難易度な見下ろし型死にゲーアクションアドベンチャー。非常に出来の悪いアクション部分はストレスしか溜まらないものの、魅力的なアートスタイルやオープンワールドのようなエリア移動のないシームレスな広いマップなど、好みな部分も多い惜しい作品。
 
 

イライラストレス地獄の元凶である、底の浅いステルスもどきシステム

 
 街中に溢れかえるお化けを回避しながら目的地を目指す、というステルスゲーム的な楽しさを志向している割に、そもそもステルスとしての基本がまったくできていないので、終始ストレスばかりが溜まります。
 
 まず、ステルスの基本中の基本である相手の行動パターンを観察することで隙を探し、最適な解を模索するという当たり前の部分からして適当で、一部の敵以外は視界という概念がないのか、距離だけに反応するのみでプレイに工夫のしようがなかったり、プレイヤー側が能動的に可能なライトのオン/オフや歩く/走るを切り替えたり、アイテムを使用してやり過ごせる敵がほんの僅かしかなかったりと、ただ機械的に突っ込んでくるだけの敵をやり過ごすか、ただ強引に敵の横をすり抜けるかだけの淡泊なプレイが多くなりがちで、あまり頭を使って困難を突破できたという達成感がありません。
 
 能動性のないステルスなどトライ&エラーがただの作業にしかならないのは必定で、死んだ目でゲームオーバー地獄を耐えながら、ひたすら突っ込んでくる敵を受け身で避け続けるという拷問の様なストレスプレイでため息ばかりが漏れました。
 
 敵の種類が一見多く、豪華に見えなくもないですが、一体一体に個性のようなものが薄く、「この敵はこんな癖があるから、このように回避するんだ」というノウハウのようなものも一部の特徴のある敵以外は蓄積されず、ただされるがまま単調な動きの素早い敵に接触されては即死ゲームオーバーの繰り返しで、嫌になります。
 
 

ホラー要素と死にゲー要素が大ゲンカ

 
 サイレンの一作目と同じで、あまりにも高難易度すぎてゲームオーバーが頻発すると、次第にホラー部分への恐怖感が薄れ、緊張も弛緩し、恐怖をもたらすはずの敵がただの煩わしいだけの障害物と化してしまうという失敗に陥っており、ホラーとしての満足度は非常に低いです。街のそこら中にお化けが大量に配置されているという節操の無さも、プレイヤー側が想像力を働かせ、本来はそこにいないものを勝手に想像し怖がるといった楽しみを奪っており、感心しません。
 
 死にゲーだから悪いとは言いませんが、死にゲーとしての完成度が低い上にそれがホラーエッセンスまで阻害しているとなると、死にゲースタイルにしてしまったことは百害あって一利なしだと思います。ホラーであればアクションよりかはアドベンチャー要素(謎解きなど)を強化したほうがジャンルとの相性が良かったはず。
 
 ストーリーも、行方不明のお姉ちゃんを探すというだけでは明らかに単調で、もう少しマップが広大なことを利用し、それこそサイレンの一作目のようなリドルストーリー的なアプローチで、街の様々な場所を探索したり、ドキュメントを読んだりすることで、徐々にスケールの大きな街の忌まわしき歴史や、ミステリアスな事件の真相が浮かび上がってくるなどといったカタルシスを子供目線という独自設定を最大限利用する形で見せて欲しかったです。
 
 せっかく広大なマップというホラーをやる上で色々なことが試せそうな非常に魅力的な舞台を用意している割には、物語の最初と最後で大して街への印象が変わらないため、舞台がキャラクター化して浮き上がってこず、淡泊な印象にとどまっています。もう少し訪れる場所に緊張感を持たせるような最低限の物語性は欲しかったです。
 
 
 

まとめ

 
 マップが広大でそれを子供が描いたような大雑把な地図で探索していくという試みは好きだったり、全体的にデザインセンスは非常に好みだったりと、優れた部分は幾らでもありますが、ホラーとしては独自の怖がらせ方を確立できておらず、死にゲーとしてはホットラインマイアミのような大傑作の足元にも及ばない残念なバランスの作品。
 
 ただ、夜中に子供がたった一人で街を探索するというコンセプトは気に入ったので、続編が出たらまたプレイしたいです。
 
 

 

 
 
 

 

夜廻 - PS Vita

夜廻 - PS Vita

 

 

ドラゴンクエストビルダーズ / アレフガルドを復活せよ(PS3版)

 

OPムービー

 

点数:80点
 
 

短評

 
 ドラクエであることを最大限生かし、自由度を捨て、親切さを選んだ、最初から最後までおつかい要素だけで構成されたマインクラフトベースのサンドボックスゲーム。
 
 

おつかいに始まりおつかいで終わる、そんなおつかい大好きユーザーの受け皿

 
 自分は指示待ち人間体質なのか、マインクラフトもテラリアもアーク/サバイバルエボルブドもこの手の自由度が高すぎる、目標設定がないクラフト+ビルディング系のサンドボックスゲームはほぼ例外なく肌に合わずプレイ開始数時間程度で飽きて止めてしまうのですが、今作はまったく飽きることなくクリアまで集中力が持続しました。
 
 今作は最初から最後まで徹底しておつかいだけでゲームが進行します。どんな物を作るのかも、どのように配置するかもほぼ指示通りに行わなくてはならず、マインクラフトというよりもどちらかというとダーククラウドダーククロニクルジオラマパートの自由度を上げたような印象に近いです。新しいものを創造するのではなく破壊された街を復元するというコンセプトも、未来の世界で破壊された建物を現代で復活させるというダーククロニクルとほぼ同じ趣旨なので、どうしても印象が被ります。
 

 
 
 好きなものを自由に作るという趣旨の割には終始おつかいゲーム特有のやらされている感が付き纏いますが、それでもいきなりサンドボックス世界という暴力的な自由度が法の荒野に放り出され「好き勝手にやれ」と放置されるよりは数段マシで、ほぼ飽きることもなく的確にプレイヤーに目的を提示し、クリアまで導いてくれます。
 
 プレイする前は漠然とマインクラフトのようなゲームが好きな人を狙っているのかと想像していましたが、プレイすると印象は真逆で、むしろマインクラフトのような極端に高すぎる自由度を負担と感じ苦手とする自分の様な人間こそをターゲットにしているのだということが分かりました。
 
 
 

ドラクエとの思い出が触媒として作用

 
 マインクラフトと同じ、全てがボクセル(サイコロの様な形のブロック)で表現されるボクセルベースのマップのビジュアルは、最初は見知ったドラクエの世界とはまったくの別物でさすがに違和感がありましたが、プレイしているとすぎやまこういち音楽力が半端ではなく、音楽が醸し出す濃密なドラクエ感であまり見た目自体は気にならなくなります。この音楽を聴くだけで体がドラクエに対応したリアリティラインを許容する姿勢へと変化する様は自らのドラクエ漬けの人生を振り返るキッカケともなり、中々感慨深いものがありました。
 
 今作はドラクエというシリーズをプレイしてきたプレイヤー側の記憶を最大限活用するように作られており、アイテム名はお馴染みのやくそうやこんぼう、かわのたてなどで、初めて目にする大量のアイテム名や素材名などをわざわざ覚える苦労を軽減してくれます。ストーリーは初代のラストで勇者が「世界を半分やるから仲間になれ」という竜王の提案を受け入れてしまったため荒廃したアレフガルドという設定にし勇者はなぜそんな選択肢を選んでしまったのかという謎をクリフハンガーとしたり、精霊がしきりに「あなたは勇者ではない」という意味深なメッセージを発し、それは普通のゲームならさほど響かないようなセリフでも、ことドラクエともなると非常にナラティブな感触をともない不穏に残響したりと、いかんなくドラクエらしさを利用し、この手のサンドボックスゲームには決定的に欠けている物語体験を強化してくれます。
 
 
「30年以上の歴史を誇るドラクエをなめるなよ!」
 
 
 という、歴史の積み重ねを最大の武器として行使するスタンスが非常に効果を発揮しており、プレイしやすさや取っつきやすさだけで言えば、システム面・シナリオ面で他の似たジャンルのゲームを軽く凌駕しています。
 
 

不満あれこれ

 
 プレイ中は基本は時間を忘れてしまうほど楽しくはありますが、システム的には問題が山積しており、とても手放しで褒められたものではありません。
 
 まず、ドラクエシリーズ特有の心地よい作業感を伴う要素をお金稼ぎやレベル上げ(RPG的な成長要素)からクラフトに変えたことはまだ良しとして、問題は非常に退屈なリアルタイムアクションバトル部分です。アクションとして退屈な上に、武器の種類が近接武器のみで、ほぼ最初から最後まで同じような武器を使い続けるため、飽きが早く、かつ敵を倒しても経験値ではなくアイテムやクラフト素材しか入手できないため、後半使えない素材しか落とさない敵は倒す意味もないため邪魔でしかありません。出来ればもう少し敵との戦闘にインセンティブと、プレイヤーが自分の好みの戦い方が出来るように剣だけでなく槍や斧やムチや魔法といった武器・攻撃バリエーションが欲しかったです。ただ、テラリアなどをやった後だと武器がアイテムとは独立して存在しているため、武器交換が十字キーだけで簡単に行えるのはラクチンで好印象でした。
 
 その他にも、洗練されておらず使い勝手の悪いインターフェースやら、ブロックを設置する際に置きたい場所に中々置かせてくれないもどかしい操作性やら、せっかくブロックを自由に積み上げられるのならそれをしっかりダンジョン攻略に落とし込んで欲しいとか、メインストーリー進行とビルディングを連動させすぎでもう少しやってもやらなくてもいいサブクエストなどを挟んで息抜きさせて欲しいとか、街が狭すぎて章の最初とラストでそれほど絵的に変化もなくりっぱに街が再建されたという達成感が出ないとか、プレイしている最中はあらゆる細かい部分に不満たらたらで、続編が出るなら改良して欲しいところ。
 
 しかし、今作最大の問題は全4章でそれぞれの章が終了すると今までやってきた作業が全てリセットされ次の章に移るというシステムです。最初はこれを知らずにプレイしていたので、1章が終わり2章に移ると今まで作ってきたものが次の章には反映されず、また同じことを一からさせられるという展開にかなり興が削がれ、プレイのモチベーションが激しく落ちました。そういうものだと納得さえしてしまえばゲーム自体は中毒性があり面白いので気にならないといえばならないですが、この章ごとに積み上げてきたものがリセットされモチベーションがぶった切られる感覚はどうにかして欲しいです。
 
 

まとめ

 
 マインクラフトやテラリアを途中で断念したことによって抱いたサンドボックスゲームへの苦手意識を楽しさに昇華してくれる、そんな作品でした。
 
 

ウォッチドッグス(steam版)

 

トレーラー

 

点数:80点
 
 

短評

 
 クリアまで約20時間超ほど。相変わらずUBIらしい独自の美意識が貫かれたスタイリッシュなハッキング主体の新感覚ステルス要素と、美意識が強すぎて二の次にされるインセンティブの弱さが同時に存在するオープンワールドステルスTPS。
 
 
 

あらすじ

 
 ブルーム社の供給するctOSによりインフラが管理され、あらゆるデジタルデバイスがctOSを介してオンライン状態にある近未来都市シカゴ。凄腕のフィクサー(請負人。ハッカー、ドライバー、傭兵、殺し屋など、なんでも屋のような稼業)であるエイデン・ピアースはとある仕事中に触れてはいけないデータにアクセスしてしまい、何者かに正体を突き止められ報復されてしまう。共に事件に巻き込まれたが死亡したことで、エイデンは姪の命を奪った何者かに復讐するためビジランテ(自警団)として立ち上がることを決意。エイデンが意図せず触れてしまった街そのものを揺るがしかねないスキャンダルと、姪を死に至らしめた黒幕の正体とは・・・・・・。
 
 

街そのものに大がかりな仕掛けを張り巡らせるオープンワールドアプローチ

 
 アサシンクリードパルクールの楽しさを存分に発揮するため、昇って楽しい高い建造物を置いたり、屋根から屋根へ飛び移れるような絶妙な距離感の建物配置をして街そのものをパルクール移動に特化させていますが、今作も似たようなアプローチで、ハッキングというシステムの魅力を最大限引き出そうと、街中のインフラやギミック、NPCであるモブなど、様々な対象へのハッキング要素が散りばめられており、街そのものが手ぐすね引いてプレイヤーを楽しませようと待ち構えているような作りです。
 
 ハッキング要素を抜いたオープンワールド部分のプレイ感としてはグランドセフトオートⅤに酷似している点が非常に多く、移動はそこら辺の車やバイクを盗んで使用したり、十字キーの上でメニューを開いたり、LB(Xboxのコントローラの場合)長押しでアイテム・武器ホイールが開くなどのボタン配置までそっくりで、グランドセフトオートⅤをプレイしていると、すんなり操作に馴染んでしまいます。
 
 ただ、街の作りをハッキングシステムと連動させるためか、街全体のアップダウンが少なく平らで、道もそれほど入り組んでなく、景観も田舎のエリアに行けば自然も多いですが道路沿いは基本はビルばかりでやや単調なため、グランドセフトオートⅤのようにただ車を何となく走らせているだけで景色が移り変り刺激的で楽しいという水準には達しておらず、乗り物移動の楽しさでいうとグランドセフトオートⅤには敵いません。それでもメインはハッキングを用いたステルスが主体のオープンワールドでここまで堂々とした広さと目立たない路地裏などの細部まで丁寧に作り込まれたシカゴの街を見せられると圧倒されるものがあります。
 
 アプローチとして斬新だったのはハッキングを用いたモブキャラ(NPC)への目配せの仕方です。すれ違う人々のちょっとした、でも興味を引くような個人情報を一文表示させたり、別段ストーリー的には意味もない電話を盗聴させたりすることでプレイヤーに能動的にNPCの背景を想像させるというやり方は、ベセスダのNPCに生活サイクルを設定するというやり方とはまた別のNPCへの感情移入のさせ方で、オープンワールドの住人に生命感を与える新しい手法として感心させられました。NPCのモーションが細かい上に、観光地に行けば観光客がいたりスラムの路地裏に行けば柄の悪そうな住人がたむろしていたりとその場所その時間と自然とマッチしたNPCが目に入るのも満足度の底上げをしてくれます。
 
 NPCのモーションで一番驚かされたのは徒歩移動中にハッキングのターゲッティングを間違ってスチームパイプを爆破させてしまったところ、周囲の人々が蒸気が噴き出る道路に向かって一斉に動画撮影のためかスマホをかざした事。こんなに周囲の出来事に対して自然なリアクションを取るNPCを見たことが無かったため、ちょっとだけ感動を覚えました。
 
 それと、今作は道行く人をハッキングすると銀行口座から金を盗んだり、クラフト用の素材を入手したりと、乗り物移動だけでなく、徒歩移動時にも常に目的を設定するという配慮がされていることで、通常はファストトラベルか乗り物移動をしつつ、お金やクラフト素材がなくなったらちょっとだけ徒歩移動を混ぜて街を歩きお金やクラフト素材を入手し、それが終わったらまた元の乗り物移動に戻る、という徒歩移動にちょっとしたお金稼ぎやアイテム集めの機能を持たせています。
 
 乗り物移動がメインのオープンワールドゲームは乗り物移動だけで慌ただしく走り抜けるだけではマップの作り込みの贅沢さを味わえ尽くせず勿体ないため時には徒歩で散策したい・・・・・・とは思いつつ、中々時間の掛かる徒歩移動を選択する気にならないものですが、そこにシステム的に軽めのインセンティブを設定することで街を徒歩移動する行為にも意味を持たせるという気の配り方はありがたかったです。
 
 

監視カメラ「俺の目を盗みやがったな!」

 
 プレイ開始直後は、今作に対する印象はあまりよくありませんでした。何をさせたいのかよく分からないハッキングシステムや、ひたすら終わらないパトカーからの逃走に、大して面白さが理解できないステルスに開始直後3~4時間くらいまでは眠気を堪えながらプレイするという酷いあり様でしたが、システムが肌に馴染んでくると印象がぐっと上向いていきます。
 
 ゲーム開始直後から監視カメラやギミック、警備員、都市のインフラへのハッキング、ファストトラベル用のウェイポイント(中継点)を解放するためのctOSタワー解除にカバーアクションにパルクール、アイテムのクラフトにフォーカス(バレットタイム)、スキルツリー、意味不明な固有名詞の羅列と、とても処理できる量ではない情報の波状攻撃にさらされるため、最初はなんのこっちゃわかりません。
 
 ここら辺はもう少しスマートにならなかったのかと不満に思います。エイデンがビジランテとして立ち上がるべく修業を積むプロセスをチュートリアルとして追体験させプレイヤーにエイデンに感情移入させる、などの工夫がないため、当初はエイデンという主人公とプレイヤーの認識に溝がありすぎて、よく分からない主人公がよく分からない事を言っていて、よく分からないシステムでよく分からない事をさせられる状態を強制的に味わわされるだけの要領を得ないゲーム体験で、かなりきついものがありました。数時間プレイしてようやく「これは攻殻機動隊やマルドゥックスクランブルのバロット的な感覚を味わうステルスなのか!」と気付いてからは何とか持ち味のハッキングステルスを楽しめるように。
 
 ハッキングというやり様によってはどこまでも複雑になってしまいそうなシステムをシンプルに体感できる、視覚の延長として監視カメラを巧みに経由し隠された死角にアクセスするパズル要素。全体を見渡せる優位な立ち位置からのギミックやクラフトアイテムを使用してのほぼワンサイドゲーム的な翻弄と蹂躙の快感。うまく立ち回れば何十人敵がいようと軽々と殲滅させることもできるため、他のステルスではあまり味わえない類の敵に対しての圧倒的な優位性を堪能できます。
 
 ステルスもさることながら、わりと印象に残ったのはハッキングのターゲッティングシステムを応用した設置型の武器である粘着爆弾です。グレネードの要領で投げて壁や床にくっつけ、プレイヤーが任意のタイミングで爆発させられるという、他のゲームでいうとC4やリモコン爆弾などと同じようなタイプの武器で、普通のゲームだと設置型の武器を装備している状態で起爆スイッチを押さなければいけないところを、今作は他の銃火器や投擲武器を装備している状態でも設置状態の粘着爆弾にカーソルを合わせハッキングするだけで起爆させられるため、他の武器との併用がラクチンで、この設置型の武器の起爆にハッキングシステムを用いるスタイルが他のゲームであまり味わったことがない気持ちよさがあります。
 
 粘着爆弾は投擲した直後に空中でハッキングして起爆させることもできるため、投擲武器を持ち替える時間がない際はそのままフラググレネード代わりにも使えたりと、攻撃ボタンと投擲アイテム使用ボタンとハッキングボタンがそれぞれ別れているという珍しい仕様をフルに生かし、あらゆる場面で使用可能なハッキングシステムの恩恵を最も受けた武器です。
 
 自分はこのような特定のシステムを複数の用途で連動させるというアイデアが非常に好みで、バイオハザード(リメイク版)のグレネードランチャー焼夷弾が攻撃用の他にも死体の焼却にも使えたり、フォールアウト4でジャンク品やモンスターの肉にクラフト素材という新しい使い道が生まれたり、モンスターハンターのスキルが各武器で予想外の作用の仕方をして驚かされたりと、「この効果やシステムはこの用途だけで使うものだと思っていたら、なるほど実はこっちとも連動するんだ!」という事に気付いた瞬間、さり気ない工夫の忍ばせ方に唸らされます。
 
 なのにも関わらず、ハンドガンやらサブマシンガンやらアサルトライフルはバリエーションが多いのに、ハッキングボタンで起爆させられる設置型武器は粘着爆弾のみで、なぜハッキングシステムと連動する、今作の独自性をストレートに味わえる武器のバリエーションがないのか疑問です。これ以外にももっとトリッキーな使い方ができるハッキングで作動させられるタイプの武器が欲しかったところ。
 
 

不満あれこれ

 
 もはやUBIのオープンワールドでは定番の感もあるインセンティブ(報酬)の弱さです。バリエーションが乏しいクラフトも、数が多いだけで入手する喜びがほぼ皆無な銃器も、大して解放したいとも思えない程度のスキルツリーも、毎回なぜここまでUBIはインセンティブ音痴なのか疑問。
 
 ディアブロ3の影響を強く受けたであろうハクスラでクラフトがあり、かつRPGシューターなのにやはりインセンティブが弱いディビジョンなどを見るにつれ、UBIのインセンティブ設定のバランス感覚の狂い方は深刻なのかも。同じような要素を中毒性の権化のようなボーダーランズなどに実装させたら数百倍面白いだろうなと考えると、UBIのインセンティブへの感覚のズレが絶望的にすら思えてきます。
 

 
 サスペンスが効いたストーリーが面白すぎて先が気になる、でも、レベルアップすればするほどハッキングやステルスの快楽がどんどん増していく、でも、お金を貯めれば車やバイクや拠点を改造できるでも、とにかく何でもいいのでもう少し目先のモチベーション維持をアシストする要素をきっちり実装して欲しいです。
 
 UBIのゲームデザインは毎回工夫が凝らされコンセプトも美しくて大好きですが、毎度毎度常に同じ弱点を克服せず放置する姿勢にはうんざりします。
 
 それと、システム周りに比べると些細なことですが、主人公が一応シカゴの街から悪を一掃させようとしているという設定の割に普通に住人を巻き込みまくり死者まで出るようなハッキングを平気でしたり、ただの警備員を殺害しまくったり、街の住人の銀行口座から金を盗みまくったりと、主人公の設定と、システムがやらせようとしていることがちぐはぐなのが終始ノイズに。
 
 特に意味もなく何の気なしに信号機をハッキングしたら車が衝突しNPCのドライバーが死体となってドアからはみ出ているのを見た時、「今自分がやったことって主人公の姪がされたことと同じだよな・・・・・・」と罪悪感でやるせない気持ちになりました。NPCに感情移入させるような工夫をわざわざしておいて一方ではNPCをゴミの様に扱いもするというバランス感覚がやや不快です。
 
 

まとめ

 
 オープンワールドとして堂々としている点や、ハッキングを用いるステルスや戦闘が斬新という長所と、相変わらずシナリオのクリフハンガーが弱めでかつシステム的にもインセンティブが弱いという短所が両極なバランスなので、結果的に印象としてはプラスマイナスゼロに近いものになってしまいます。
 
 ただ、UBIのクールなゲームデザインに惚れている身としては、ハッキング主体のステルス体験が斬新だったのと、ストーリーのほうも全体としては単調でしたが、バンカーという都市伝説で語られる街中の全てのネットワークを掌握できる秘密基地のような施設を探すという展開は相当ワクワクさせられたり、エイデンが姪を失ったトンネルをゲーム内で実際に走るというシチュエーションに今までゲームで感じたことのない緊張で冷や汗をかいたりと、今作でしか味わえない貴重なゲーム体験もできたので非常に満足でした。
 
 
 

バイオハザード HDリマスター(steam版)

f:id:chitose0723:20170409000755j:plain

 

トレーラー

 

 

点数:90点

 
 

メモ

 
元のゲームキューブ版は未プレイで、リメイク版は今作が初プレイなので、HDリマスター版というよりもリメイク版そのものに対する感想
 
 

短評

 
 リファインされた洋館のレベルデザインの完成度の高さと、魅力的な新システムの追加でオリジナル版の面白さを損なうどころかオリジナル超えの偉業を達成した大傑作リメイク。
 
 
 

リノベーションで新生を果たした洋館

 
 リメイク版はけっこうな割合でオリジナル版にあった「凄いものを作ってやる!」というその時代の作り手の熱量がごっそり消失し、無味乾燥な今風なグラフィックとシステムに差し代っただけというケースが多いため、あまり良い印象がなく、恥ずかしながら今作もずっとスルーしていましたが、その判断は誤りでした。
 
 元々圧倒的な完成度のオリジナル版でしたが、今作はさらに的確な手の加え方でオリジナル版の持つ長所を伸ばすような改良がなされており、そのツボを外さないバランス感覚はさすが初代のディレクターだった三上真司さんがそのまま続投しているだけのことはあり、ビジョンに狂いがありません。
 
 アイテム入手の快楽性を強化する消費アイテムマネジメント要素のバランス感覚、探索する喜びに満ちた魅力的なレベルデザインが施された洋館、メアリーセレスト号感が漂う時間の流れが静止した様な非現実的で静謐な空間に屍者が蠢いているという舞台演出の妙と、オリジナル版に元々あった長所はそのまま、あるいは強化され、そこに死体の焼却システムやディフェンスアイテムの導入というオリジナル版の良さをアシストするような改良が加えられ、なんとも贅沢な仕上がり具合で、プレイ中あまりの完成度に感動で胸が震えました。
 
 特に感心させられたのは頭部を吹き飛ばすか、死体を焼却せずそのまま放置するとクリムゾンヘッド(移動速度と攻撃力が強化されたゾンビ)化するという新要素と絡めた洋館内の新ルートの追加部分です。オリジナル版と比べ目的の場所に移動する際に複数のルートから好きに選べるようになったことでどのルート上の敵を排除するのか、どのルート上の敵は放置するのかを考える必要が生じました。意味もなくゾンビを倒してしまうと後半クリムゾンヘッド化して復活してくるため、目の前の敵を倒していいのかどうかすら悩まされることに。
 
 今作はプレイヤーの思考を促がし続ける要素が大幅に強化される様なゲームデザインになっており、どんなアイテムを持ち歩くか、クリムゾンヘッド対策を考えつつゾンビをどれくらい倒すか、それを灯油で焼却するか、グレネードランチャー焼夷弾で焼却するか、ディフェンスアイテムである閃光手榴弾で頭部を吹き飛ばすか、そもそも戦わず放置するか、どのルートを通ると最短で目的地に辿り着くのか、と、プレイ中常に二手、三手先の対策を考え頭がフル回転し続けているので大変心地いいです。
 
 オリジナル版で辿った線を再びなぞるノスタルジックな時間と、そこから脱線し新たな刺激を味わえるフレッシュな時間。この二つの線が交互し螺旋を描いていく感覚は記憶の参照元であるオリジナル版が存在するリメイクという形でないと味わえない大変貴重な体験で、オリジナル版の完成度の高さに改めて想いを馳せ、それを上回ってみせるリメイク版の完成度に感嘆のため息を漏らす・・・・・・双方にとって幸福な、これぞ理想的なリメイクの在り方だと思います。
 
 
 

不満あれこれ

 
 リファインされた洋館は大変素晴らしいのですが、逆に洋館以外の場所の単調さが相対的に浮き上がってしまったのは残念。実績を全て解除するため10周近くプレイしましたが、洋館は何度周回プレイしても飽き辛いレベルデザインのため、それほど作業感がありませんが、それ以外の場所は割と一本道でルート選択を選ぶ楽しさがないため、ひたすら長い距離を歩かされるだけで少々かったるいです。ゾンビを倒すにしてもアイテムさえ回収してしまえば二度とその場所には足を踏み入れない場所がほとんどなので、クリムゾンヘッド対策などする必要もなく葛藤も生じません。
 
 クリムゾンヘッド対策をベースに再構築された洋館と、オリジナル版のエッセンスそのままの他の場所でレベルデザイン格差が生じてしまっており、オリジナル版は別館も中庭も研究所も楽しかったのですが、あまりにも洋館だけ豪華にライトアップされすぎたため、それによって生じてしまった濃い影に隠れてしまった感じです。
 
 後、オリジナル版に比べ新マップが追加されたことの功罪でどうしてもクリアまでの1プレイの時間が移動時間分延びしてしまうため、唯一テンポ感だけはオリジナル版のほうが上かもしれません。
 
 
 

まとめ

 
 バイオハザード、幸せな時間をありがとう。
 
 
 
 
 

 

  

バイオハザード オリジンズコレクション Best Price
 

 

ファークライ3(steam版)

 

 

トレーラー

 
 
点数:80点
 
 

メモ

 
日本語化してプレイ
フルHD(1920×1080)、映像設定はウルトラ、60fpsでプレイ
 
 
 

短評

 
 クリアまで約20時間超ほど。UBIのオープンワールドゲームらしくシステムのインセンティブ(報酬)が弱めだが、ノリのいい作風と、テンポの良さを絶対の方針としたようなシステム周りの相性が抜群で非常に優れたバランスに仕上がっているアクション特化型のオープンワールドステルスFPS
 
 
 

インセンティブ不足を操作の快楽性で強引にカバー

 
 UBIやロックスターのオープンワールドゲームは、ベセスダのエルダースクロールズやフォールアウトなどのような自由度の高い成長システムなど、プレイのモチベーション維持をサポートしてくれるような強力なインセンティブ要素を実装しているワケではなく、どうしてもプレイ中はストーリーを追うだけでシステム的には物足りなさが付き纏うのですが、しかし今作はオープンワールドにしては破格な操作性の良さから来るシューターとしての魅力が強力で、相変わらずのインセンティブ不足をやや強引にステルスアクションやシューティングの楽しさがカバーしているのが特徴的です。植物の採取や野生動物の狩りと連動させた手軽に出来るクラフトは好印象として、ほとんどアクションの強化と拡張に特化したような深みも自由度も選ぶ喜びもさほどないスキルツリーも、バリエーションが乏しいカスタマイズパーツを装着するだけで今一つ物足りない武器カスタマイズ要素も、本来なら不満点としてカウントされそうなものですが、今作に限っては辛うじて優秀なアクション部分を補助するような働きをしているためインセンティブ不足を誤魔化せているといった印象です。
 
 今作は徹底的にテンポの良さを追求し、かつ管理されており、ファストトラベルも乗り物移動も、ステルスも銃撃戦も全ての要素がもたつかずに行われるためゲームプレイに躍動感の様なものがあり、息をつかせる瞬間がほとんどありません。話を進めるためのメインミッションをこなしつつ、UBIのオープンワールドゲーム(アサシンクリードなど)ではお馴染みの高い場所(今作では電波塔)に昇り、マップに精細な情報を表示させる要素、もしくは敵の占拠するアジトを襲撃し全滅させ、ファストトラベル用の中継点(ウェイポイント)とし活動範囲を徐々に広げる、という非常に分かりやすいプレイ目標も設定されており、次に何をすればいいのか迷いが生じる隙を与えません。
 
 
 

オープンワールドの贅沢さが味わえる地形演出

 
 自分がオープンワールドのゲームをやっていて最も贅沢だと思う瞬間は、目指している場所がかなり遠方にあるのにも関わらず展望が良くハッキリと視認でき、そこに確かにあるんだという存在の質量を感じ取れる時です。目標となる場所と今いる地点がエリアチェンジで断裂されておらず、地続きで繋がっているということに喜びを覚え、その感情があの場所まで何とか辿り着きたいという欲求に転化されます。
 
 今作では、マップに精細な情報を表示させるために昇る電波塔が遠景でも存在感を放ち、舞台となる自然豊かな島に彩りを添えています。
 今作は高い場所から乗り物扱いのハンググライダーや、後半はいつでも自由に使えるウィングスーツで滑空させたいためか、高低差がかなり激しいような地形をしているのと、自然豊かな無人島に電波塔という人工物は良い意味で場違いで目立つため、高所に建てられているそれが非常に目立ち、存在感を発しています。
 この地形デザインのおかげでうまく高い場所に聳え立つ電波塔へ意識が吸引され、その堂々たる景色から目を離すのが勿体なく感じられるほど。
 
 最初は高い場所にプレイヤーの意識を集中させ、電波塔を昇り終えると次に周囲の低い場所へ視線を誘導するという視線誘導テクニックの手並みも鮮やかで、ここまで地形の魅力的な見せ方に感心させられたオープンワールドゲームは初めてです。
 
 
 

作品のトーンとシステムを同期させる偉業

 
 デウスエクス/ヒューマンレボリューションをプレイした際に主人公が機械化した体に慣れていくという設定と、プレイヤーがシステムに順応していく感覚がリンクして、スキルツリーで能力解放されていく過程に一体感を覚えましたが、今作もノリの良い作品トーンの器たるシステム自体がまるで編集が抜群の映画か、コンテが優れたアニメ、もしくは漫画のハンター×ハンターの気持ちのいいコマ割りや語り口を味わうかのようなテンポの良さで内容と同期しており心地良いです。このような表現したい内容(物語・舞台・雰囲気)と表現手法(システム)が同期すると、好ましい相乗効果が生まれ、ゲーム体験をより味わい深いものにしてくれます。
 
 自分はオープンワールドやらステルスやらFPSやらというジャンル的な満足度よりも、このようなシステムとゲームのトーンが溶け合っている官能的なゲームデザインを堪能できることが何よりも喜ばしいので、これが味わえただけでも満足です。
 
 
 

不満あれこれ

 
 特に不満らしい不満もありませんが、プレイ中何度も困らされたのは遠くの動物や人にトドメを刺した際、下が背がやや高いような草だと死体が隠れて見失ってしまい、動物の皮を剥いだり、アイテムを回収できなかったことが多々あったこと(倒した敵を見失うということはフォールアウトでも普通に起こることなので、今作というよりもアイテム未回収の敵を目立たせる工夫をしないゲーム全般の問題点かもしれません)。
 
 後、やはりUBIのオープンワールドゲームだけにインセンティブとして機能するシステムが貧弱で、物語を進行させるという動機づけが無くなると、途端にやる気が激減してしまう、システムよりもアクション頼りな作りなのもいつも通り。
 
 
 

まとめ

 
 ゲーム自体は良くも悪くもかなりさっぱりしており、強烈に記憶に刻まれるというタイプの作品ではありませんが、プレイヤーを楽しませることだけに特化して作られているため、アクション要素以外のシステムの貧弱さに目を瞑れば面白さは折り紙付きです。
 
 
 

余談

 
 イーライ・ロス監督の映画からの影響が非常に強く、監督作の“ホステル”や、役者としての出演だけで監督はしていないですが、ほとんどイーライ・ロス作品と同じアプローチの“アフターショック”を見ておくとより今作のコンセプトが明解に理解できるかと思います。
 
 
 

 

 
 
ファークライ3 日本語版

ファークライ3 日本語版

 

 

 

アフターショック Blu-ray

アフターショック Blu-ray

 

 

Submerged(サブマージド)(steam版)

f:id:chitose0723:20170311212812p:plain

 

トレーラー

 

点数:70点
 
 

短評

 クリアまで約3時間ほど。アクションアドベンチャーとしてはただの凡作だが、プレイヤーに姉弟の背景を自然と想像させる様なシンプルながら丁寧でセンスの良いストーリーテリングが魅力的。
 
 
 

少女を乗せたボート(漁船)は不穏さを推進力に水没都市をゆく

 
 低価格のインディペンデントゲームだけにグラフィックや操作性はとてもフルプライスゲームと比較にはなりません。それでも舞台となる水没都市にはしっかりと表情があり、昼には陽光が降りそそぎキラキラと輝く水面に癒され、一転夜の墨汁を垂らしたような薄気味悪い暗い海は自然への原始的な恐怖を呼び覚まします。
 
 美しさと不気味さが紙一重のバランスで成立している背景には非常に分かりやすく上田文人作品(特にワンダと巨象)の影響が垣間見られ、特に怪我をして瀕死の弟をベッドに寝かしつけ、その場所をベースとして周囲を探索するという作りがいくらなんでもワンダ過ぎるきらいもありますが、水没都市という独自の舞台が魅力的なので気にしないことに。
 
 ゲームは水没都市を探索→弟を助けるための物資がある建物を発見→ひたすら高い建造物をよじ登り物資を回収→また探索・・・・・・と、延々このワンパターンの繰り返しのため、正直最初は刺激に乏しく単調極まりない作業ゲーのような印象を受けました。
 唯一水没都市のあちこちに少女が乗るボートの加速用のブーストゲージを増やすためのパーツ(壊れたボート)が点在しこれを発見できるとやや嬉しい程度で、とてもアクションアドベンチャーとして及第点の面白さには達していない・・・・・・のですが、物資を回収するとオープンされる最初はなんのこっちゃ分からない子供が描いたようなヒエログリフっぽい記号的な絵がそこそこ集まってくると状況が一変することに。
 
 実はこの絵が姉と弟がこれまで辿ってきた経緯を説明したものだと分かった瞬間、今作に強烈な物語が立ち上がります。なぜ二人は漁船に乗っているのか、なぜ弟は大怪我をしているのか、なぜ姉はそこまで弟に献身的なのか、多くの謎が物資を回収するごとにオープンされていくため、ぐっとサスペンス要素が増し、話の先が気になって仕方がなくなります。
 
 二人がこうなった経緯が分かると、物悲しさを湛えたようなBGMが実は姉の贖罪の意識を反映しているかの様に聴こえたり、体が徐々に変色していくのも罪の意識が体を蝕んでいるように見えたりと、この作品の景色そのものが変質する事態に。プレイヤーに対して一切説明的なことをせず、ただ子供の描いたような絵を見せるだけで頭の中に子供たちの過去を想像させてしまうストーリーテリングの巧みさに頭が下がりました。
 
 この想像力を掻き立てる手法から頭に浮かんだゲームが、こちらは兄が妹を探すLIMBO(リンボー)でした。
 
 もしかしたら体が蝕まれていく姉の瞳に映るこの美しくすらある水没都市は、リンボーで妹を探すために兄が見たような地獄巡りの舞台と近いものなのではないかと考えさせられたり、プレイ中はあれやこれやの想像が止まらず、非常に密度の濃い物語体験を味わえました。
 
 

まとめ

 
 アクションアドベンチャーとしては凡作ですが、物語体験としては強く印象に残るステキな作品です。