エンタメ不感症の患部に巻く包帯

好きなものについて語るブログ

テイルズ・オブ・グレイセスf(エフ)

 

トレーラー

 
点数:80点
 
 
 

短評

 
 本編クリアまで約35時間ほど。本編クリア後に追加される後日談である未来への系譜編はクリアまで約7~8時間で、合計約40時間強ほど。スピーディで楽しいバトルシステムの魅力のみで一点突破を狙ったかのようなバトル特化型のシンボルエンカウントRPG。バトルシステムの完成度に対して、ストーリーやその他システムが追随できておらず、ややバランスに欠ける。
 
 
 

孤軍奮闘するバトルシステム

 
 今作で最も面白さの土台を支えているのはシリーズでも屈指と思われるバトルシステムの魅力です。
 
 攻撃にはA(アーツ)技という通常攻撃タイプと、B(バースト)技という広範囲攻撃や魔法などやや特殊な攻撃を行う二種類のタイプがあります。キャラクターによってアーツが得意だったりバーストが得意だったり、両方こなすバランスタイプだったりが設定されており、敵や状況に応じて使い分けを求められ、これがいい感じで刺激となり、マンネリ回避に貢献。序盤はなぜ攻撃タイプが二つに別れているのか意図を図りかねましたが、これが敵の弱点を突くという要素を帯びだし、ひたすら同じパターンの攻撃を繰り返すマンネリをうまい具合に遠ざける働きをしてくれます。
 
 バトルは常にスピーディなテンポを重視。簡易的なスタミナシステムであるCC(チェインキャパ)数値は、何もしないとあっという間に回復するため、敵を攻撃し放題という締まりのない状態を避けつつ、CC数値(スタミナ)の残量に気を配りながら攻撃・回避を行うという必要最低限の緊張感を確保できており、非常に好ましいバランスです。別途MP(テイルズで言うとTP)のようなものはなく、ただ簡易的なスタミナシステムであるCC数値だけで全ての攻撃コストを一元化してくれるため、例えば蘇生魔法を使って欲しいのにMPが空で、まずMPを回復させてから蘇生魔法を使う……といったもたつきは排除され、ちょっと待てばあっという間にチャージされるCC数値を消費するだけであらゆる行動が可能。この行動を全てCC数値に一元化するというシステムと、アーツとバーストの二種類の攻撃スタイルを敵の弱点に応じてスイッチしながら戦うという組み合わせの妙が功を奏しており、攻撃も回復も非常にストレスフリーな使用ができ、隙のないハイスピードバトルの爽快感に磨きをかけています。
 
 今まで自分がプレイしたテイルズオブシリーズの中でもバトルシステムだけ見たら間違いなくトップクラスの完成度な今作ですが、それ以外のシステムは可もなく不可もなくな程度。
 
 RPGにとって下手をしたら最重要である成長システムは適当で、通常のレベルアップはもはやただの空気。セットした称号に応じて付随するスキルをSP(スキルポイント)を貯めることで入手していくという、ファイナルファンタジー5ジョブチェンジシステムの簡易版のような成長システムも一見興味深いのですが、ただ称号をセットすれば自動的に付随するスキルが追加されていくだけで味気なく、プレイヤーが何かを選択する喜びが希薄。
 
 成長要素の醍醐味とは複数の選択肢から何かを選択すると他を諦めるか、もしくは取得を先送りしなければならないという心地よい選択の苦悩にこそあり、このようなセットする称号を選ぶ以外にはほぼ全自動的にスキルがプラスされていくだけのシステムでは物足りません。せめて称号の熟練度が上がる度に複数の選択肢から取得するスキルや強化する項目を選べるなどの工夫が欲しかったです。
 
 他にもエレスポットという、セットする項目によってバトルの補助や移動の高速化、アイテムの自動生成といったことをほぼオートで行ってくれる便利なシステムもありますが、これも頻繁にチェックさせられるため集中力増幅の効果は多少あるもののゲームの面白さを底上げするほど決定的とも言えず。武器・防具に強化用の欠片を合成し、武器・防具の熟練度を上げるとその合成した効果をアクセサリー化して抽出でき、それを装備できるという合成システムも非常に回りくどくて理解できるまで時間が掛かりました。なぜ一端関係のない武器・防具に合成してからアクセサリー化しなければならないのか理解に苦しみます。
 
 結局、どれもこれも完成度の高いバトルシステムを強化するほどの魅力はなく、どうしてもシステム周りはバトルシステムだけが突出して出来がいいという印象しか残りません。
 
 
 

あの日出会った花畑の少女の名前を僕達はまだ知らない。

 
 チュートリアルを兼ねた幼少期のプロローグエピソードが終わり本番である青年期が始まった瞬間、これからどのような壮大な物語が紡がれていくのだろうかワクワクしましたが、この瞬間の胸の高鳴りが結局ゲーム内で最大の高揚感でした。
 
 中盤(と言うかほとんど終盤)で明らかになるけれん味全開のとんでもスケールの世界観設定はテイルズオブシリーズの中では悪くないほうなのにも関わらず、そこまでの持って行き方が下手でカタルシスとして機能していません。シナリオの構成が雑なため、ちょっとしたディテールの掘り下げや伏線が足りず、ないしは機能せず、ただ設定が剥き出しのままプレーヤーの前に放り出されるため「なんだって! 自分たちがいたこの世界って実は!?」と認識がひっくり返らなければならないはずなのに、「え? 何これ? どういうこと?」と、事態を飲み込めず、提示される情報にきょとんとさせられるだけ。プレーヤーの意識の照準を世界観設定に合わせて誘導できておらず、唐突にドラマから世界観設定方面に興味の主軸が移るのに対応できませんでした。なぜ散々ドラマで引っ張っておいていきなり終盤で世界観設定を強調しだすのか謎。せっかく大長編ドラえもん/のび太とアニマル惑星(プラネット)のようなワクワクする設定まで用意したのに、もう少し世界観設定へ疑問を持たせてから世界の捉え方そのものがひっくり返る倒錯感を丁寧に演出して欲しかったです。
 
 設定のぶっ飛びさ加減に対してカタルシスがないというのとやや関連するのが非常に淡泊な話し運びのトーン。原因はいくつかあるものの、やはり幼少期から青年期への移行を丁寧に描きすぎてしまったことの弊害でもある主人公アスベルがすでに序盤で成長しきってしまったことによる認識変化の乏しさ。テイルズ・オブ・ジ・アビスが中盤まで引っ張った主人公が己の傲慢さを悔い改め心を入れ替えることで劇的な成長を遂げるという強力なドラマ性を序盤で使い切ってしまったため、主人公が旅を通して成長していくという手応えが極端に薄いです。これは一つ一つの街がほとんど通過点にしか感じられず、旅を通して多くの人や価値観と出会うという描写が少ないことにも起因していると思います。親友を救いたいという物語の動機付けもプロローグで友情を誓い合った以降はそれほど強調されず、しかも話の論点がアップデートされないため同じ様な印象しか受けない行動がひたすら繰り返されるだけで単調。中盤以降は若干影が薄くなりがちで、話の推進力としては非常に弱いです。
 
 ストーリーは構成に難があり、全体的に淡泊気味。まったく同じ設定で同じストーリーでも必要な箇所に必要な描写を付け加え、プレーヤーの興味を的確に牽引してさえいけばいくらでも印象が上向く余地があるため非常に惜しい。特に自分は国産RPGカタルシス展開大好き人間なので、終盤の衝撃的な設定が明らかになる展開はもう少し素直にビックリしたかったです。
 
 
 

不満あれこれ

 
 一番気になったのはPS2版のアビスほどではないものの、エリア移動の際に常に軽いロードが入る点。ただ部屋の扉を開けるだけでも軽いロードが挟まれるため、単発では別段気にならないものの、数を重ねていくとどうしてもストレスが蓄積されていきます。
 
 後は、ストーリーの推進力が弱めなせいで、テイルズオブシリーズの根本的なゲームとしての体力の低さが露呈しているのも気になりました。ストーリー以外ではほとんどバトルシステムとダンジョンのパズル頼みなバランスが剥き出しで、テイルズってこんなに土台となるシステム周りが貧弱なのかと改めて気付かされることに。発売順と逆ですが、先にゼスティリアをプレイしていたので、あのマップの広さに甚く感心させられたのはこの貧弱さをうまく誤魔化す効果があったからなのだと納得。
 
 
 

まとめ

 
 バトルシステム7:その他要素が3くらいのバランスで、完成度の高いバトルシステムに依存し過ぎなきらいもありますが、これほどまでにバトルがマンネリ化せず、ラストまで瑞々しいシステム鮮度を保ち続けられるのは驚異的。細かい不満も多々ありますが、操作の快楽性からもたらされる爽快感抜群の素晴らしいバトルシステムを実現できた時点で今作の価値は十二分です。
 
 
 
テイルズオブシリーズ


 

中盤で衝撃的な世界観設定が明らかになるゲーム

 
 

 

 

テイルズ オブ グレイセス エフ

テイルズ オブ グレイセス エフ

 

 

ナイトクローラー

 

トレーラー

 
点数:90点
 
 

短評

 
 カラフルな光によって化粧され、魔性の色気を放つロサンゼルスの街並みが極上の映画的扇情を掻き立てる大傑作。
 
 
 

ヤコペッティの英霊がナイトクローラークラスのサーヴァントとして第五次虚偽報道戦争が勃発している現代に召喚されたら……

 
 ロサンゼルスという映画的プロポーション抜群のモデルをライトアップで妖しく飾り、蠱惑的な魅力を振りまく街の夜景に一瞬で映像の虜にさせられました。この息を呑むほどに美しい街並みは、刺激という悪魔に魅入られ、事件現場を視聴者好みに演出し、飾り立てることに憑りつかれていく主人公に対し、見ているコチラ側に「だってこんなにライトアップされた景観は刺激的だろ? 刺激こそが重要なんだよ」とまるで共犯関係を迫ってくるかのよう。
 
 脚本家上がりの監督なのにも関わらず、セリフにあまり頼らず、映像ベースの非常にテキパキした語り口で、撮影の隙のなさや編集のテンポの良さと相まって、ほぼダレることはないハイテンポなペースを維持し、サスペンスとしても超一級。ただ、サスペンスを目指したというよりも、表現したいことを突き詰めていった結果極端にサスペンス的緊張感を作品が帯びてしまっただけの様にも見えるため、あまりサスペンスというジャンルありきで括るのも作品に対して失礼な気がします。
 
 今作で最も作品の完成度に貢献しているであろうバケモノ染みた撮影監督は誰だろうと調べたら、なんと自分の生涯ベスト級作品である“ゼア・ウィル・ビー・ブラッド”の撮影監督でもあるロバート・エルスウィットだと分かり、大いに納得。
 
 ロサンゼルスという事件の予感を薫らせるサスペンスにはうってつけの舞台に恵まれ、これほど腕の立つ撮影監督に恵まれ、人と怪物の境界に住まう主人公を演じるジェイク・ギレンホールという冷静な狂気を体現する素晴らしい役者に恵まれと、こんなに幸運に恵まれ続けな映画が傑作でないはずもなく、しれっと映画史に残る一作に仕上がっている有り様。
 
 映画はしばしば倫理観が欠如した主人公が天職や僥倖と出会う瞬間を祝福します。“ロード・オブ・ウォー”のニコラス・ケイジが武器商人という職と出会ったように、“ウルフ・オブ・ウォールストリート”のレオナルド・ディカプリオが投資詐欺に出会ったように、“ゼア・ウィル・ビー・ブラッド”のダニエル・デイ=ルイスが石油を発掘してしまったように、今作のジェイク・ギレンホールは、道端の交通事故現場で、人の不幸を収入と刺激へと換えるパパラッチという天職に出会ってしまいます。映画の中の不幸が、映画の外の人間にとっての喜びとイコールとなる瞬間、見る者はこの怪物の誕生の加担者となり、永遠の罪人として作品の囚われビトとなる・・・・・・こんな大傑作なら迷惑極まりないパパラッチ誕生の罪も喜んで被ってあげたくなります。
 
 
 

まとめ

 
 見る映画はほとんど監督かジャンルで選ぶタイプですが、今作を見るともはや監督よりも撮影監督で選んだほうが好みの映像美に出会える確率が高いのではないかと考えさせられました。
 
 映画へのスタンスすら揺るがされるほどの超弩級の大傑作。
 
 

 

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デウスエクス/マンカインド・ディバイデッド(steam版)

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トレーラー


点数:80点
 
 

短評

 
 クリアまで約30時間弱。前作のヒューマンレボリューションの良いところが目減りし、ダメな部分はほぼそのまま手付かずという、続編としてはややパワーダウン気味で不満が残るステルスRPGシューター。傑作だった前作のエッセンスは継承しているためステルスゲームとしては相変わらず一級なものの、目新しさはほぼなく、諸々が前作の満足度には及ばず。
 
 
 

あらすじ

 
 2029年。人為的に引き起こされた世界規模のオーグ(体の一部を機械化した人間)の暴走事故であるオーグ・インシデントから2年。チェコ共和国はオーグ・インシデント以前は積極的な自由経済政策を取り、首都であるプラハに有力企業を誘致し優遇。好景気に沸くプラハにはオーグ労働者が数多く移民してきた。世界でも人口に占めるオーグ率が高かったプラハはオーグ・インシデントによるオーグの暴走で深刻な被害を受ける。その反動でオーグ化していない生身のナチュラによるオーグに対する過激な隔離政策や根強い差別が横行するナチュラルとオーグの分断(ディバイデッド)を象徴する都市となる。
 
 世界中でナチュラル達によるオーグ排斥の気運が高まる中、国連ではオーグへの規制をより強化し、オーグの人権を軽視するかのような国連決議第3507号、通称人間復興法案の採択が間近に迫っていた。ナチュラルのオーグへの排斥を助長しかねない法案の是非を巡りナチュラルとオーグ、両者の分断はより深刻化の一途を辿る。
 
 そんな分断の最前線であるプラハに拠点を置く、多発するテロ防止のため国連により新設されたインターポールの対テロ部隊TF(タスクフォース)29。TF29の隊員であるアダム・ジェンセンは、プラハで発生した大規模な駅爆破テロに遭遇する。テロの犯人を捕まえるため捜査を開始したジェンセンは、テロの裏に隠されたオーグへの恐怖心を利用し人類の分断を画策する陰謀に巻き込まれていく・・・・・・。
 
 
 

ヒューマンレボリューションが傑作過ぎたばかりに……

 
 前作のヒューマンレボリューションの何に感動させられたかというと、オーグ化してまもないジェンセンが人体拡張に適応していくという設定と、プレイヤーがオーグメンテーションというシステムに適応していく過程が見事にシンクロし、まるで自分がオーグ化し、システム認識が拡張していくかのようなシステムと意識が溶け合うような一体感を味わえた点です。ですが、今作はプロローグからいきなりジェンセンがオーグメントをフルオープンしている状態から始まります。オーグに対する差別を描くというテーマ上、どうしても序盤からジェンセンをオーグ側の立場として印象付けなくてはならないという事情は理解できるものの、前作の様にまず不便な生身で戦わせてから、オーグ化し、ライフやミニマップ、敵の位置情報などの画面上のインターフェースは全てオーグ化したことによって得られる恩恵であるという丁寧な説明描写がすっ飛ばされてしまっており、これが非常に淡泊な印象を与える結果に。
 
 さすがに、これがないので直ちにダメということはないものの、前作ではごく当たり前のように存在した、ジェンセンとプレーヤーの認識の同期プロセスが適当なことで、前作ほどシステムの美しさからもたらされる官能性を感じません。多分前作はプロローグや序盤をジェンセンとプレーヤーの認識を同期させることに費やすというコンセプトで、今作は続編なのでもうそれは済んでおり、オーグメンテーションシステムの具体的な使用方法を実践させながら解説するというチュートリアルにウェイトを置いたのだと思います。
 
 今作をプレイすると、いかに前作が生身の状態でオーグの武装集団に圧倒的な戦闘力の差で一度敗北し、オーグ化することで互角に対抗できるようになるというストーリー上の展開すらも、オーグメンテーションというシステム理解への同期プロセスの一環で、プレーヤーの認識の補助として機能していたのかが分かりました。生身だったジェンセンがオーグ化するという、主人公を変えない限りは一度しか使えないカードを前作で切ってしまっているので、今作は続編として違う手札を選択しなければならなかったのに、前回と似たようなカードを選ぶという悪手でガッカリ。
 
 オーグメンテーションは、ただの成長・アクションシステムというだけではなく、世界観設定とも濃密にリンクし、プレーヤーを劇中世界と結びつける橋渡しとして機能すると同時に、システム・マップ設計・ストーリーとあらゆる要素から孤立せず、それぞれに多大な影響を及ぼす歯車としての役割も果たし、数あるゲームの中でも突出して官能的な機能美を有する、デウスエクスシリーズの中枢である最重要システムです。そのオーグメンテーションシステムへの適応・同期が、そのまま作品への没入深度へと反映されるため、同期プロセスを省略・簡略化してしまったことはただただ勿体ない限りです。
 
 今作はオーグメンテーションという芸術的システムの美しさを最大限引き出せていません。
 
 
 

光陰矢のごとし

 
 ステルス周りはさすがに完成度が圧倒的だったヒューマンレボリューションの続編だけに、常に複数の進行ルートが用意され、死角を隠れながら進む正攻法でも、隙を見て敵をテイクダウンして排除していくやり方でも、隠し通路を探しても、オーグメントを駆使して強行突破しても大丈夫という、プレーヤーが自分で好きに手持ちのオーグメントから攻略方法を選択できる能動性の高さは顕在。
 
 前作の、普段はFPSでカバー時だけTPSになるという仕様はそのままに、ウォッチドッグスやディビジョンといった、UBIのTPSゲームが採用しているカバー状態からカーソルで場所を指定するとそこまで障害物を乗り越えオートでしゃがみ移動してくれるという便利なシステムも追加され、劇的な変貌はないものの、確実にステルス周りの遊びやすさは向上しました。
 
 なんだかんだ不満が多い今作でも、やはり得意中の得意であるステルスともなるとあらゆる不満が一端脇にどかされるほどには中毒性があります。昨今のオープンワールド型の遮蔽物のあまりない様な開けた場所でのステルスを体験していると、ややリニア型で狭苦しい場所を延々と進み続けるという窮屈さは否めないものの、敵を観察し、どう対処するのか頭の中でシミュレーションする過程がオーグメントという豊富な選択肢がある分他のステルスに比べ桁違いに楽しいです。
 
 敵を観察し、対策を思案するのが楽しいステルスはいいステルスで、今作も無敵のオーグメンテーションシステムからもたらされる拡張性という恩恵により、敵やマップに応じて足りなければオーグメントを解放し攻略性を拡張していけるので、他のステルスでは中々味わえない潜入ルートをただ発見するのではなく、自らの選択と工夫で獲得したという確かな手応えが得られます。ステルス要素があるシャドウ・オブ・モルドールをプレイした際、ステルスとRPG(成長要素)は実はとんでもなく相性がいいということに気付かされましたが、今作もそれを証明するかのごとく安定した面白さでした。
 

 
 
 前作のヒューマンレボリューションから短くない年月が経ち、もはや世界中のステルスの進歩の中で最先端と呼べるほどの斬新さは皆無で、どちらかというと挑戦を避けて堅実さを取ったような、ステルスとしては保守的な印象を受けるため、出来れば次回作はもっと野心的な方向に舵を切って欲しいです。こんな大傑作シリーズがステルスの最前線から後れを取っているのかと思うと我慢なりません。
 
 
 

味気ない舞台と、大幅にダウンした物語のスケール

 
 洋ゲーにはよくある、エンドクレジットが流れ出して初めて「え、これでクリアなの? ということは、さっき倒したのがラスボスだったんだ!」と気付く、典型的なガッカリさせられる余韻です。これは前作のヒューマンレボリューションが世界規模の陰謀を描き、終盤に向けてスケールがでかくなっていく構造だったため、てっきり今作もそういう路線なのかと思い込んでいたせいもあり、肩透かしの度合いが半端ではありませんでした。劇中ずっとラビーアという建造中の都市の名前が登場し続けるため、前作のパンチェア同様、建造中のラビーアがラストステージになるんだなと思っていたら、一切登場せず終わるため唖然とさせられました(続編で登場するのかも)。
 
 今作は舞台となるプラハでオーグに対して行われる差別や隔離政策をジェンセンの身になって追体験させるということがやりたいらしく、前作ではアメリカのデトロイトと中国のヘンシャを中心としながら、その他色々な場所を目まぐるしく転戦していったのに比べ、プラハに滞在する時間がやたら長め。何度も利用する地下鉄の入り口がナチュラル用とオーグ用で区別されていたり、オーグ用の地下鉄乗り場が駅の奥にあり、面倒なので手前にある乗り場からナチュラル用車両に乗ると不審者扱いされ身分証の提示を求められたりと、うっかりナチュラルの行動圏に足を踏み入れると少々の足止めを食うため、自然とオーグ用の道を通るようになっていくというやや恐ろしい習慣が刷り込まれていくという作り。そのような街全体で環境ストーリーテリングをするバイオショックシリーズ(特にインフィニット)の様なアプローチはいいとしても、街全体でこのルールが徹底されておらず、バックグラウンドでNPC同士がなにか口論して揉めているなどのシーンはちょいちょい目撃するものの、もっと街のあちこちでナチュラルなら普通に行えることをオーグは容易に出来ないという隔離政策の理不尽さを、ただの薄味なイベント的な処理だけでなく、ゲームシステムとして体感させて欲しかったです。それと、デウスエクスシリーズのメインの舞台とするにはサイバーパンク風味が足りず、どこに移動してもイマイチ外観的な変化に乏しく、その点もプラハという舞台が強烈なゲーム体験をプレイヤーに刻む特別な場所としては印象に残り辛いことの要因になっていると思います。
 
 後、今作は一応マルチエンディングという体ですが、途中でルートが分岐するといったことは本当に軽めにしか無く、プレーヤーがこれまで取ってきた行動や選択により、ラストに流れるある映像が変化するというだけで、これがかなり地味ですが好印象でした。自分はルート分岐やマルチエンディングというものが、物語をただの回収・収集対象にしてしまうようで大嫌いなので、本筋にはほぼ影響を与えず、でも途中でしてきた選択によってエンディングは変化するという今作のバランスはマルチエンディングの在り方としては非常に好ましかったです。
 
 
 

少なくない不満あれこれ

 
 まず、プレイを開始して最初に気になる部分は、前作の発売からインターバルが長い割にグラフィックの進歩がイマイチな点。ウィッチャー2からの3、フォールアウト3やニューベガスからの4、デッドアイランドからのダイイングライトのように旧世代機から次世代機にハードが移ると劇的にグラが向上し、画面が華やかになったような作品と同程度は変化するものだと勝手なイメージを抱きながらゲームを開始すると、初見は間違って低解像度のままゲームを始めてしまったのかと勘違いしたほど。前作からはしっかり向上していますし、慣れると別段不満に感じるほどではありませんが、他のゲームが綺麗になり過ぎていることで相対的に粗く感じ、ヒューマンレボリューションの時は別段なかった同時期に発売されたゲーム群からかなりグラのレベルが引き離されてしまったという危機感を覚えました。今作のグラがどうこうではなく、グラで他のゲームに大幅に差をつけられ、そこが作品の出来・不出来とは関係なく深刻なウィークポイントとなってしまわないかとシリーズの今後が不安です。
 
 後は、ところどころ設定のセンスがストーリー・システム両面で垢抜けなく、明確にダサいと思う箇所がちらほらある点。タスクフォースの拠点がダミー会社である不動産会社の地下に隠されておりこれ見よがしなエレベーターで移動するという耐用年数切れの古臭いスパイ映画の様な設定や、オーグたちがオーグ・インシデントの際に見た幻覚を神の啓示だと思い込んでカルト宗教にハマり、機械神を信仰しているとか、時代錯誤的な懐古趣味のようなセンスの無さに頭を抱えることが少なくなかったです。セキュリティが万全という建物に侵入しているわりに、そこら中にやたらダクトが通りまくっていて重要な部屋に潜り込み放題だったりと、前作でも覚えたギミックへの意味付けの違和感もまったく手付かずのままで、グラがイマイチなことも相まって、どうしても新しめのゲームをやっているという実感が湧きません。ここら辺はステルスで用いるギミックに対して違和感を最小限に抑える理由付けを施し、ゲーム的にうまく処理できているUBIなどのほうが圧倒的に洗練されておりセンスが良いです。今作はどうしても昨今のスタイリッシュなステルスへのアプローチを試みる他の作品群に比べるとセンス的に見劣りしてしまい、高級感がありません。
 
 そして、今作最大の問題点はあんなに長いと感じたウィッチャー3すら凌駕しかねないロードの長さです。SSDでない自分のPC環境も多少は影響していると思いますが、ゲームを開始した直後はあまりにもロードの進行状況を表示するバーが増えないのでてっきりフリーズしたのかと勘違いしたほど。ゲームを開始するのに数分待たされ、頻繁に行うエリア移動の度に延々と待たされ、チャプター(ステージ)が変わるとまたロード・・・・・・と、常にロード、ロード、ロードのロード地獄。ただでさえロードやエリア移動が長いのに、メインの舞台となるプラハはエリアが北と南に分かれており、ミッションによっては北に移動したと思ったら今度は南で、小目標を終えたらすぐに北に戻るというような手間がかかるエリア移動を何度も跨ぐふざけた内容のものもあり、プレイが常にロードで中断され続けるため、ゲームテンポが致命的一歩手前な悪さです。 こんな南北のエリア移動のストレスでゲームプレイを分断(ディバイデッド)させないで欲しい。
 
 その他にも、ゲームパッドXbox360のコントローラ)でプレイすると相変わらずレスポンスが悪く、60フレームで感度を最大にしても操作がまだもっさりしている点は前作からほぼ手付かずのまま放置。
 
 ただ、唯一周回プレイ要素が追加され、アイテムや武器、オーグメンテーションの強化分を次週に持ち越せるようになったことだけは大変満足。これのおかげで序盤から色々なルートを通り放題で、一周目とは違った新鮮なプレイがしやすく、実績解除もラクチンです。
 
 

まとめ

 
 次回作に期待!
 
 
 
デウスエクスシリーズ


 

 

 

 

六花の勇者(アニメ)

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トレーラー


 点数:75点
 
 
※原作未読
 

短評

 
 ありきたりで凡庸な印象を巧みに避けてみせる地味な工夫が随所に垣間見られるハイファンタジーサスペンスミステリー。ハイファンタジーの世界観で演出をサスペンスに特化させるという珍しい仕掛けのため、ハイファンタジー作品では味わえない演出の距離感の取り方が魅力的。
 
 
 

ハイファンタジーよりもサスペンスに寄せた演出の距離感

 
 最近はテレビアニメを選ぶ際、その作品の監督がコンテを描いている回を見て、コンテのタッチの好みで視聴するか否かを判断することが多いのですが、今作は一話の高橋監督のコンテに異質な感触を覚え、全話視聴することに決めました。後で振り返るとなるほどその理由が分かるという、コンテからもたらされる違和感そのものがサスペンスの予兆として機能しており巧みでした。
 
 原作を知らない状態で見たのと、アニメ版は原作では一番最初に提示される情報が四話まで開示されないという構成のため、ただのハイファンタジーアニメだと思って見ていたら途中から思ってもみなかった方向に進みだし「一話の変な感触のコンテはこの展開のための下地作りだったのか!」と時間差で納得させられることに。
 
 冒頭から本編とは視覚的な手触りが異なる壁画や絵巻物風の媒体を用いて歴史を語るなど、巧妙にファンタジーものの王道の語り口に擬態。その実主人公やメインキャラクターの身の上など何一つ確度の高い情報は視聴者に伝えず、サスペンスを成立させるため気付くか気付かないかギリギリのラインで納まりの悪さを伴う感覚をコンテなどに忍ばせ後々回収する・・・・・・前半はハイファンタジーものとミスリードさせ、中盤からようやくサスペンスに出番が回るという構成を、派手さはないものの王道に似せた偽装演出が堅実にアシストしており感心させられました。
 
 あえて不満を言うなら、まどかマギカほどとは言いませんが、ファンタジーからサスペンスへジャンルがスイッチする際にもう少しトーンに分かりやすく落差があったらけれん味が増して自分好みでした。前半と後半でガラッと雰囲気に変化が生じても良さそうなのに、あまりシナリオ的な状況以上に演出の変化が響いてこないのでちょっと物足りませんでした。ずっと物語の最初から潜んでいた不穏さがもっと露骨に牙をむいて欲しかったです。これは、うまくやれば前半はいかにもハイファンタジー的な固有名詞がたくさん出てきて世界観を成立させるため土台作りをしていると見せかけ、中盤以降世界観設定に成り済ましていた伏線や緊張感が偽装を解除し本性を剥き出してくる瞬間に演出的なカタルシスが生じたはず。
 
 
 

サスペンスを成立させるために何もかも足りていない脚本

 
 一癖も二癖もある勇者たちをしっかりキャラデザや作画、声優の演技で成立させている割に、肝心な脚本部分が非常におざなりで、サスペンスとしてもミステリーものとしても及第点に達しておらず、映像の足を引っ張ってしまっています。
 
 ミスリードが弱く、そもそも視聴者側に与えられる情報の絶対量がサスペンスを成立させるにはまったく足りていません。ただ起こることを受動的にぼけっと眺めるだけで、最後に謎解きのようなものをされてもほぼ後出し情報だけで、衝撃はあってもまったく腑には落ちないため、これならあってもなくても構いません。それに、設定上は本来なら足止めされている状態にタイムリミットのようなものがないとおかしいはずなのに、それが存在せず、サスペンス性をもっと強化できたチャンスを見す見す逃しているのも理解に苦しみます。勇者がある場所に期日通り辿り付けないと人間軍側に甚大な被害が出るとか、適当にでもいいので目先の危機を設定してプレッシャーをかけ続けないと、ただぼんやり足止めされているだけで緊張感が足りません。
 
 原作未読なので原作の問題をそのまま手直しせず放置してしまったのか、映像化の際の不手際なのかは計り兼ねますが、もう少し見ている側の視点や興味をトレースする丁寧な脚本・構成でないと、今作の持ち味をフルに引き出せません。サスペンスのような先行逃げ切りタイプの構成とミステリーのような追い上げタイプの構成と、どちらも中途半端に取り入れようとした結果どっちつかずで、自分的にはもっとサスペンス寄りのバランスにして、終盤の伏線回収は適当でも整合性が多少取れなくても構わないので、もっとサスペンスに全力集中して欲しかったです。
 
 ただ、主人公とヒロインが心を通わす瞬間をずっと引っ張って引っ張ってヤキモキさせ、最後にぐっとこさせるため、むしろこっちが脚本の主軸で本命なのかもしれません。
 
 
 

まとめ

 
 設定・脚本・シリーズ構成ともに難があるため、作品としてのバランスはすこぶる悪いですが、ハイファンタジーに偽装してサスペンスをやるという意図を設定や脚本だけでなく演出レベルでもしっかり追及しており、サスペンス大好き人間としてはワクワクさせられ、大いに楽しめました。
 
 
 
良質サスペンスアニメ


 

 

 

アサシンクリード ローグ(steam版)

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トレーラー


点数:80点
 
 

短評

 
 クリアまで約20時間弱ほど。全体的に4のシステムを整理整頓しただけのようなこぢんまりとした印象。主人公がアサシン教団からテンプル騎士団に寝返り仲間だったアサシン達を殺して回るという衝撃的な設定の割にシナリオは淡泊で、盛り上がりに欠ける。よくできた4の海戦要素をそのまま受け継いでいるため、システム的には相変わらず楽しいものの、目新しさはほぼ皆無。
 
 
 

海賊を廃業し暗殺者に復職・・・・・・しかし、どうしても海賊の影が付き纏う

 
 システム的にやることは4とほぼ変わらないものの、やはり主人公がテンプル騎士団に寝返るとはいえ、基本は終始アサシンなので4のような海賊の船長が突然ステルスし出すというような設定とシステムが噛み合っていない違和感は若干後退し、いつものアサシンクリードに近い感触に戻りほっと一息。ただ、今度は主人公がアサシンとなったため、4では違和感がなかった海賊行為のほうが設定から浮く結果に(なぜかアサシン教団に比べ組織規模で圧倒的に上回っていそうなテンプル騎士団が海賊行為を働き物資を強奪しまくる)。
 
 やはり4でも感じたそもそも地味なステルスと派手な海賊行為というまったく別の方向性のシステムが雑居してしまっているという違和感が4に比べやや薄まりはしたものの根本的には改善されていません。結果、設定とシステムが他人行儀にお互いの顔色を窺い続けるというあまり良好ではない関係性となってしまっており、残念。
 
 システム周りは、全体的に4で面倒だった部分を簡略化・高速化し、快適性を確保するという方向性でほぼ一致しており、プレイはしやすくなったものの、そこまでの変化は感じられず。どうしても4の延長線上でしかなく、4と同じことをもう一度やらされるという印象から脱しません。
 
 後は、2にあった街(建物の改築)に投資すればするほど銀行口座に定期的に振り込まれる収入が増えていくシステムが復活し、これが海戦で強奪する物資や、今作から追加されたギャングのアジトを潰して街を解放していく要素や、被支配状態にある入植地を解放する要素と連動したりと、2に比べてよりシステムの厚みが増しており、好感触でした。
 
 やり込み要素は4に比べるとかなり整理整頓され遊びやすくなっているものの、やや4の煩わしさを取っ払うことだけに終始しているため、今作らしさが希薄です。4にはシステム的にはイマイチでそれ自体は別段楽しいものでなくとも、4の雰囲気にはバッチリ合い、よりゲーム体験を豊潤なものとしてくれるような細々とした要素がたくさんありました。しかし、今作は本編やゲームの満足度そのものには絡まないものの、それがあるだけで遊び心や洒落っ気を堪能できるような要素が乏しく、やや味気ない印象です。
 
 
 

寝返る動機付けに失敗したため、致命的な問題を孕んだ主人公

 
 シリーズで最も衝撃的なはずのアサシン教団のアサシンがテンプル騎士団に寝返り、仲間だったアサシン達を殺害していくことで元いたアサシン教団支部の一つを壊滅に追い込むという話なのに、思っていたより淡泊でガッカリでした。その原因は、アサシン教団の教えに忠実だったアサシンが教団のやり方に疑問を抱き裏切るという、シリーズ中でも最も丁寧で繊細な脚本力を要求されるはずの場面が、ただ単にコミュニケーション不足であっさり仲違いしたようにしか見えず、教団の信条という絶対の方針と、主人公の信条がぶつかり相容れなくなってしまったという描写があまりにも弱すぎて、仲間達を殺していくという展開に感情移入ができない点。
 
 もっと序盤で主人公の考え方とアサシン教団の考え方が微妙に食い違うという描写を積み重ねつつ、テンプル騎士団側の主張にやや心惹かれてしまうといった伏線を丁寧に張り、アサシン教団に対する不信感がある一点で爆発し教団に対する激しい怒りに転化するというプロセスにしっかりプレーヤーを感情移入させないと、このストーリーはそもそも成立しないはず。
 
 今作は、主人公のシェイがアサシン教団に失望し、仲間と道を違えるという何がなんでも説得力を持たせて成立させなければならなかった部分を適当に描いてしまったせいで、シリーズ中最も感情移入困難な主人公となってしまっており、テンプル騎士団側に寝返った後も、この主人公の言動にイマイチ納得できないまま進むため、物語としては過去最低クラスのガッカリさでした。キャラの掘り下げ不足は、いつものシリーズに比べるとボリュームが少な目なことの皺寄せもあるでしょうが、教団への未練を引き摺り続けるにしても、激しい怒りで一気に離反するにしても、設定の過激さに対して、脚本がまるで追いついていません。これならまだ3と今作にも再登場するヘイザムのほうが冷徹かつ紳士的で、プロフェッショナルに徹しており、テンプル騎士団の理念を体現する暗殺者としては魅力的です。ヘイザムを超える魅力を備えたキャラクターを創造できなかった時点で、今作は3の前日譚という、過去シリーズに依存する弱々しい作品に落ち着いてしまった感があります。
 
 
 

不満あれこれ

 
 今作でもっともストレスフルなのは、アサシン教団が放ってくる追跡者。コチラがステルス中だろうがおかまいなしに襲撃してくるため、ステルス中で大衆に紛れている→追跡者に襲撃され戦闘に→それに反応してパトロール中のイギリス軍兵士がアラート状態になって襲ってくる、という、周りの敵を連鎖的に巻き込んでアラート状態にされるため迷惑この上ないです。これは、1に出てきた街中でアルタイルを見つけると突然突き飛ばしてくるNPCを思い出したほどで、お願いですからステルスゲームでステルス中に敵に発見される様な妨害行動をしてくる邪魔なNPCを出さないで欲しいです。
 
 後は、相変わらず4と同じでステルス要素はゆるゆるな難易度でイマイチですが、今作はさらにそこに前作の吹き矢の代わりに追加されたエアライフル(空気銃)に爆竹ダートという敵の注意を逸らしてくれる便利な弾が追加されたり、さらにさらにあろうことか範囲攻撃可能なグレネードランチャーまで加わり、もはや敵の観察など一切不要で、ひたすらエアライフルとグレネードランチャーだけで全ての敵を無効化できるため、一体何をしたいのか作り手の意図を図りかねます・・・・・・簡単すぎるステルスの難易度をさらに下げてどうしたいのでしょうか?
 
 
 

まとめ

 
 4のシステムを使い回し、やや大雑把に4の続編と3の前日譚を兼ねる作品をでっち上げただけの様なあまり志の高い作品ではありませんが、さすがに完成度の高い4のシステムベースなため、単純なゲームとしての面白さは折り紙付き。
 
 ただ、アサシンクリードシリーズでは3派の自分としては、ローグ単体ではイマイチだったものの、3の物語に深みを与える前日譚としては楽しめました。劇中でアキレスの亡くなった息子の名前が出てきただけでもう涙腺が刺激される始末。今作をプレイすることで、アキレスがスターウォーズのオビ=ワンのように弟子の気持ちを察してあげられなかったせいで大勢の同胞を死に至らしめてしまったという過去が追加され、より3でコナーという素晴らしい後継者と出会い、一人前のアサシンとなるまで導いてあげられた奇跡が際立つようになりました。
 
 
 
アサシンクリードシリーズ

 

 

UBIのオープンワールドゲーム

 
 
 

アサシンクリード4/ブラックフラッグ(steam版)

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プレイ動画

 
点数:85点
 
 

短評

 
 クリアまで約30時間ほど。オープンワールドだから可能なプレイの連続性をフルに生かした豪華な海賊行為はシリーズぶっちぎりのゲーム体験を味わえるものの、これまでシリーズの中心要素だった硬派な歴史ものとしての魅力やドラマ性、ステルス要素が後退。一本の作品としての魅力はやや乏しいものの、ゲームとしての楽しさは倍増するという娯楽要素特化型のゲームバランスに。
 
 
 

暗殺者と海賊、二足のワラジの弊害

 
 これまでのストイックなアサシンの振る舞いを思わせる抑制の効いた基調から逸脱し、自由奔放な海賊めいたど派手で大雑把な作品へと変貌を遂げました。3のオマケに近かった船の操舵や艦船同士の戦闘要素を大幅にブラッシュアップし、この部分だけで一本のゲームをでっち上げてしまったかのよう。もはや海賊プレイがメインで、ステルスゲーム要素がサブに格下げされたため、ゲームからもたらされる感触が通常のアサシンクリードシリーズとは別物に近いです。
 
 元々中心だったステルスの存在感をゲームを構成するシステム群の一つ程度とし、商船や軍艦を襲って物資や船を奪う海賊プレイと連動させた海賊船のアップグレード要素に、ファークライシリーズのクラフト要素を足し、敵から奪った船をオンライン上に派遣することでプレイしていない時間にもバックグラウンドでお金を稼いできてくれるソーシャルゲーム的な要素を足しと、ややシステムの自重が増して全体が不安定になっているのが問題。自分がUBIのゲームをやっていて心底惚れ惚れするどこか人を突き放すような洗練されたドライな仕上がりとは異なり、ややユーザーの顔色を窺い過ぎて快楽要素を必要以上に大盛りにしたかのような俗っぽさが気になりました。特に、一番UBIらしくないと感じたのは、海賊行為をウリにするフリープレイ部分とステルス要素をベースにするメインミッション部分がうまく溶け合っておらず、ちぐはぐに感じること。交互にまったく異なる趣旨のことをやらされるため、まるで違うゲームが一つのゲーム内に無理矢理雑居している様で居心地が悪く感じることが多かったです。
 
 敵の近くで他の兵士を暗殺してもほとんど反応がないほど敵AIの調整がゆるゆるでマップ中の敵をほぼ無尽蔵に殺して排除し放題だったり、途中から使用可能になる吹き矢があまりにも便利すぎてこれだけでほとんど苦労もせず敵を無力化できたりと、ほとんどステルスゲームとしては失敗作なのではと思うほど調整が雑でイマイチ。タカの目モードで敵を簡単にマーキング出来るようになったり、体感で便利になったと感じる部分もあるものの、じっくり観察しなくても突破可能な適当な敵配置やAIの賢さの後退など、手抜きにも見える部分が散見され、これなら3のほうがステルス要素はずっと面白かったです。
 
 UBIはいつもシステム的なインセンティブが弱く、プレイのモチベーション維持が困難という弱点がありますが、今作はプレイのモチベーション維持だけが前に出過ぎて、メインとなる丁寧な物語やステルス部分が日陰となってしまったかのよう。せっかく船の強化のためお金を稼ぐ行為がインセンティブとして機能しているのに、本来なら作品の支柱として機能しなければならないはずの物語性やステルスがサブのやり込み要素に負けているため、海賊行為をするフリープレイだけが面白くて、メインミッションで強制的に出来があまりよくないステルスをやらされるのが面倒という本末転倒さ。
 
 
 

……という不満を全て吹っ飛ばす長回しオープンワールド使いの巧みさ

 
 映画においては長回しをやり過ぎると、映像を自然に見せるための手法なのにも関わらず逆に自然に見せようという作り手側の力みを強調させ不自然さのほうが際立つというデメリットがあります。ゲームにおいてはこの様な副作用は存在せず、プレイがエリアチェンジやロードという断裂を挟まず連続していればいるほど豪華さが増し続けるという利点としてのみ作用し、これをフルに生かした海賊プレイが今作をシリーズの中でも別次元へ誘う結果に。
 
 今作は陸地ではなく海のほうがメインのオープンワールドとなっており、海上で敵艦船との遭遇、砲撃戦、さらにそこから相手の船に乗り込んでの白兵戦という流れを一切ロードを挟まず繰り広げられ、このダイナミズムに圧倒されました。これまでのゲームの記憶からオープンワールドと言えでもどこかできっとシステムが途切れて画面がふっと切り替わるだろうと思いながらプレイしていると「あれ? 敵の船を行動不能にしたのにまだ何かするの?」 「え? このまま大破させた敵の船に接近するの?」「え? このまま敵の船に乗り込むの・・・・・・うわぁ! そのまま白兵戦が始まった!」という、ゲームプレイの連続性がどこまでも途切れないことそのものが強烈なゲーム体験として機能しており感動的です。
 
 そのダイナミズムを支えるのが、とても1つのフレームに納まりきらないほどの船の巨大さだったり、操舵の際の船体の質量を意識させる操作性の作り込みや船体の軋みや帆が風を受けるSEなど、重さ表現の技術の粋を結集させ、そこに今度は正反対である身軽なアサシンの船長を配し、船内の移動や敵戦との白兵戦を颯爽とこなさせるという、この重さと軽やかさの鮮やかな対比。この重さと軽やかさの対比がもたらす感覚がアクションゲームとして官能的で美しく、クラクラさせられました。
 
 大河的な歴史ものとしての重さと、SFとしてのアニムスというデジタル空間設定の軽やかさの対比。一つのフレームに納まらないほどの建造物を昇り、ダイブさせられることで際立つ歴史の象徴の様な建造物のどっしりとした巨大さ。それと相反する人間のちっぽけさと、しかしそれをすいすいと昇って見せる軽快さ。まるでゲーム全体が精神の軽やかな自由を求めるアサシン教団と堅固な規律を重んじるテンプル騎士団の対比構造の相似形が発現したかのよう。実は今作をプレイしていて覚えた感覚はアサシンクリードシリーズにずっと内在し潜伏していたものだと分かり、改めてこのシリーズは昔から傑作だったんだなぁと再認識させられました。
 
 
 

まとめ

 
 作品よりもゲームであることのほうを選んだのは潔いですが、自分的にはアサシンクリードシリーズとしては大河ドラマのような物語のスケールを持つ3のほうが好みでした。ただ、一本のアクションゲームとしての到達度でいったら間違いなくシリーズ屈指の傑作。
 
 
アサシンクリードシリーズ


 

 

UBIのオープンワールドゲーム

 
 
 

 
 

ライトニングリターンズ ファイナルファンタジー13(steam版)

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プレイムービー

 

点数:75点
 
 

短評

 
 クリアまで約40時間ほど。FFシリーズなのに一部ブレス・オブ・ファイアⅤやアトリエシリーズベイグラントストーリーのコンセプトを想起させるようなシステムで、見た目は派手なのに志向しているものは渋いというアンバランスさが特徴のシンボルエンカウントRPG。バトルシステムはシリーズでもかなり上位の出来なのに、全体的にシステム群がぎくしゃくしてうまく噛み合っておらず、やや歪な印象の作品になってしまっている。
 
 
 

ブレス・オブ・ファイアⅤ+アトリエシリーズ+強くてニューゲーム=歪なゲーム

 
 ブレス・オブ・ファイアⅤのように攻略に詰まるか制限時間を迎えたら最初からやり直しという周回プレイスタイルをベースにしながら、そこにアトリエシリーズのような複数の同時進行するクエストを管理する要素や、ゲームを最初からやり直す際にステータスの成長分を持ち越せる強くてニューゲームを足すという、とてもFFシリーズとは思えないシステム構成で、最初はかなり戸惑いました。さすがにブレスオブファイアⅤのように初回プレイでは到底クリアできず、複数回のやり直しを強制される、というほどの難易度ではなく、やや手こずる敵もいるものの1週目でも普通にクリア可能です。
 
 ゲームにタイムリミットが設定されており、否応なく制限時間を意識させられるというFFシリーズの中ではかなり窮屈とも取れる異質なプレイ感覚のシステムな上に、それに付随するシステム群がいまいちベースのコンセプトをアシストできておらず、終始ぐらぐらして安定しない座りの悪さのようなものを覚えます。
 
 ゲーム内には自由に移動可能な4つの広大なエリア(エリア内はシームレスで移動可能)があり、それぞれにメインクエストとサブクエストが設定されており、それぞれのエリアのメインクエストをこなすというのが目的です。攻略順はプレーヤーが自由に決めてよく、ゲーム内時間によって発生するクエストのタイミングが異なるため、あるエリアで19:00に発生するクエストまでは違うエリアを探索して時間を潰そうなどと、エリアごとのメインクエスト発生時間を考慮しながらプレイの計画を立てます。ただ、制限時間がある割りにはゲームのテンポは非常にのんびりしており、別段メインクエストやサブクエストを同時進行させるのにてんやわんやするということもなく、かなり適当にプレイしてもメインクエストは簡単に達成可能で、やや拍子抜けでした。
 
 このゲームテンポの不要なのんびりさが、なぜか制限時間というプレーヤーに対するプレッシャーをわざわざ用意しているわりに生じてしまっており非常に不快です。本来はもっとシステムの志向的にハードスケジュールで忙しくないとおかしいはずなのに、システム的に実現しなければならないテンポ感と実際のゲームをプレイしている際のテンポが噛み合っておらず、コンセプトがぶれている様で気持ち悪いです。
 
 
 

惜しい成長システム

 
 今作は敵を倒しても経験値が得られず、そもそもレベルという概念もありません。メイン・サブクエストを達成することで、直接HPや物理攻撃力・魔法攻撃力が上昇していくという変わった成長システムを採用しており、そのためメインクエストはもちろんのこと、サブクエストも積極的にこなしていかないとステータスが上昇してくれません。なのでメインクエストの合間にも時間が許す限りサブクエストに取り組むのですが、これが若干作業感が強く、飽きてきます。確かにクエストクリア=即ステータス上昇という非常に魅力的なインセンティブのため、ただお金が貰えるとか、少量の経験値が貰える程度のよくあるサブクエストに比べるとモチベーションは高めなものの、いかんせん成長の自由度が皆無で、ただ決まったステータスが上昇するだけなので、主人公のライトニングを成長させているという実感がいまいち湧きません。
 
 経験値やレベルという概念を無くし、クエストクリアに成長要素を連動させてしまうというアイデアは、今作と同じで経験値もレベルもないベイグラントストーリーの、ボスを倒すとルーレットでステータスがランダムで上昇するというシステムを想起し、嫌いではありません。特に今作は戦闘しなくても達成可能なサブクエストも多く、海外のRPGと同じで非戦闘系のサブクエストをこなしてもステータスは上昇するため、戦闘一辺倒にならず、プレイに幅が生まれ好印象でした。ただ、上記したように、クエストクリアと成長を連動させるというコンセプトはそのままで、もう少しスキルツリーなり、FFシリーズなのでスフィア盤でもクリスタリウムでも何でもいいのでプレーヤーが介入可能な自由度の高い成長システムさえ用意できていれば満足度は跳ね上がっていたのに勿体ないです。
 
 
 

防御は最大の攻撃

 
 FFシリーズではオーソドックスなATBゲージを用いたリアルタイムなもののアクション性はなくコマンド選択のターン制に近い作りだった13や13-2と異なり、今作からATBゲージはそのままにスターオーシャンやテイルズ・オブシリーズのように戦闘中にプレーヤーがある程度バトルフィールド内でキャラを操作可能なアクション性を持たせたタイプに変更されました。ただ、移動速度が極端に遅く、攻撃もボタンに割り振られたアビリティを入力すればほぼ自動的に行われるのでアクション性といってもガード以外はほとんどオマケのようなもの。
 
 今作も10-2のドレスフィアシステムの応用系という13シリーズのバトルシステム路線を踏襲してはいるものの、やや落とし穴があり、13や13-2をプレイした後だと、前二作の記憶がシステム的なミスリードになり、苦労します。それは何かと言うとガードです。13や13-2はどちらかと言うと攻撃主体のバトルシステムで、ひたすら相手をブレイクするため攻撃しまくる様な仕様でしたが、今作は攻撃以上にガードが重要になります。
 
 自分は当初これが分からず、最初の数時間くらいは攻撃メインの戦い方をして無駄に回復アイテムを消耗していましたが、途中で「敵を早く倒そうとするより的確に攻撃をガードするほうが有利なんだ!」と気づき、敵の動きを観察し、攻撃に移る前の予備動作に反応し素早くガードに意識を切り替えるというスタンスに変えると被ダメージ量が大幅に減少し、ラクになりました。
 
 13や13-2は一時的にディフェンダーにロールチェンジして猛攻を凌いだり、HPが減ったらヒーラーにロールチェンジして回復できたり、そもそもバトル終了後にHPが自動で全回復する仕様のためさほどHPを温存するという発想がありませんでしたが、今作はバトル終了後のHPの自動回復は無く、回復アイテム所持数もそれほど多くないため、ほとんどの攻撃をガードすることが必須となるバランスです。感覚としてはモンスターハンターに近く、敵が攻撃に移ろうとしているのにひたすら張り付いて攻撃ばかりしていたら敵の攻撃に巻き込まれ大ダメージを喰らうのは当たり前で、攻撃を一発でも多く叩き込もうとするより、相手を観察し、いかに攻撃を防ぐのかのほうが重要になります。
 
 
 

ベイグラントストーリーになり損ねたバトルシステム

 
 13と13-2におけるロール(FFシリーズでいうジョブのようなもの)が今作ではスタイルというものに変更されました。これはパーティメンバーがいなくなりライトニング一人だけでの戦闘になったため、これまで各キャラに分散されていた役割を一人でこなせるよう、ロールの設定を細かく弄れるようにしたようなシステムです。ウェア(コスチューム)と武器・防具・アクセサリー・アビリティをそれぞれスタイルごとに設定し、これを3つまで登録することで、戦闘中3つのスタイルを自由にいつでも変更可能となり、これらを敵や状況に応じて高速に切り替えながらのバトルが基本となります。
 
 物理攻撃が有効な敵には物理攻撃重視のスタイルをぶつけたり、属性攻撃が有効な敵には有効属性のアビリティ(ファイアやサンダー、ブリザドなど)を持つスタイルに交換したり、強力な攻撃を防ぐためにガード性能に特化したスタイルに交換したり、など。それぞれのスタイルには個別のATBゲージが設定されており、これが丁度スタミナゲージの役割を果たし、ATBゲージを使い果たしたら他のスタイルに交換し、またATBゲージがなくなったら交換……を延々とローテーションしていくシステムです。ATBゲージは控えの状態になると高速で回復するため、1つ使用中に他の2つは高速で回復し続け、ほぼストレスを感じさせないスタイル交換が可能。
 
 このシステムに触れて自分が一番初めに連想したのがベイグラントストーリーの武器交換システムでした(次いでペルソナ)。敵の弱点などに応じて武器を交換しながら戦うというシンプルなのに快感が伴うベイグラントのバトルシステムがハイスピードバトルに進化したような錯覚すら覚え、最初は嬉しかったのですが、プレイしているとやはり力点の置き所がずれていることに気づき、ベイグラントほどは好きになれませんでした。
 
 今作のバトルにおける最大の問題は一部の敵のバカみたいな固さです。この世の中のあらゆるバトルシステムの魅力を殺し尽くす、バトルの面白さをウリにするゲームにとって最恐最悪の天敵である固い敵が、今作のベイグラントに匹敵したのではないかと思える魅力的なバトルシステムを見事に破壊しています。
 
 同じ敵を何十回も何百回も攻撃させられ、同じ戦闘中にノックアウト状態という前二作におけるブレイクのような防御力が激減する状態に2回も3回も4回もしなくてはならず、もううんざりです。国産ゲームの敵を固くしてバランスを調整するという病理によって魅力的なバトルシステムが殺されてしまっています。
 
 弱点を攻撃することを重視するシステムなら、ベイグラントの種族値や属性値のような弱点攻撃時のダメージ量を増加させるようなステータスが別個欲しかったとか、属性攻撃を強化するエンチャント系かステータス強化系のアビリティも欲しかったとか、もうそんな細かい願望を抱くのもバカバカしくなるくらい敵の固さで疲れ果てました。
 
 この世の中から敵が固くて難儀するゲームがなくなることを願うばかりです。
 
 
 

不満あれこれ

 
 本来ならFF13-3と付くはずのFF13シリーズの三作目ですが、13や13-2のコンセプトを継承するかのようにプレーヤー完全置いてきぼりのストーリー展開で、もはや話を理解できようができまいがあまり作品評価には関係ないのではないかと思えるほどシナリオは酷いです。
 
 なぜFF13シリーズは安定してこれほどまでに低クオリティでダサい演出やら、1ミリたりとも興味を持てないどうでもいいノイズなだけのストーリーを産み出せるのか本気で考えさせられました。一体どこの誰に向けてこの物語は紡がれているのか本当に謎です。
 
 
 

まとめ

 
 基本のバトルシステムは魅力的で、システムも全体的には完成度は高くないもののこれまでのFFシリーズとは違うことをやろうと挑戦しているので、あまり悪い印象は覚えませんが、ダメな部分がとことんダメなので、とても手放しでは褒められない珍作です。
 
 
 

余談

 
 順番が発売日と逆になってしまいましたが、先にプレイしていたテイルズ・オブ・ゼスティリアは今作に非常に大きな影響を受けたのだということが分かりました。国産RPGと海外RPGエッセンスをミックスさせようとして従来の持ち味から逸脱しやや歪になっている点や、敵の弱点を突くためにパートナー天族をリアルタイム交換しながら戦うバトルシステムなど、今作と酷似する点が多いです。
 
 突然テイルズっぽくなくなり驚かされたゼスティリアの変貌の謎が分かりスッキリしました。
 


 
 
 

ウィッチャー3/ワイルドハント(steam版)

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トレーラー

 
点数:95点
 
 

短評

 
 そつなく、抜かりなく、奇策を用いず、正攻法だけでRPGの王座まで上り詰めた大傑作オープンワールドアクションRPG。シリーズの核となる要素を大切に育み進歩させながら、流行りのシステムも取り入れ遊びやすさへの配慮も欠かさず、ハードなダークファンタジーに優雅さまでもが加わり、一切の隙がない完成度を誇る。
 
 
 

RPG界の優雅さを纏った成り上がり貴族

 
 まず最初にプレイを開始した直後、見知ったはずのシリーズの驚異的な変貌ぶりに度肝を抜かれました。それは、グラフィックが綺麗になったとか、オープンワールドになってマップが広くなったなどという表面的な部分では片付けられず、一年前は訛りのきつい土臭い純朴な田舎者だったのに再会したら流暢な会話術を身に付けた社交界の花形貴族に化けていて、でも根は純朴のままというような、2まではそれほど備わっていなかった作品の格調高さ・優雅さが桁違いに増し、作品の肌触りがゴワゴワしていた1や2と異なり、上質なシルクのように滑らかになった点です。
 
 1も2も完成度は高いものの野心的な部分が多く、やや癖があり捻ったシステムで一部の層を狙いすましたようなバランスに落ち着いていましたが、今作は万人を優雅さだけでねじ伏せられるほどの気品を獲得しており、作品の訴求力が数十倍くらいは跳ね上がりました。それなのにも関わらず、1や2で丁寧に築き上げてきた独自性はまったく失っていません。結果、ウィッチャーシリーズの独自性は維持したまま、そこに訴求力だけが大幅にプラスされるという理想的とも思える仕上がり具合で、軽い奇跡を目の当たりにして目が眩むようです。
 
 これは、それまでは一部のファン層だけが楽しんでいればいいだけのアメコミ原作映画に圧倒的なブランド力をプラスして見せたマーベルのアベンジャーズシリーズを連想しました。取り分け、アメコミ原作映画としてはエンタメ性を確保しつつアメコミ特有の濃い政治性も逃げずに盛り込みそれらを高い水準で両立させ、完成度がアメコミ原作映画の枠に納まらない次元まで到達してしまったキャプテンアメリカ/ウィンターソルジャーを見た際の「アメコミ原作映画って凄い領域まで来たな……」という感動と同質でした。
 
 1や2を好むような一部の層に好かれていればいいという安易な妥協をせず、かといって自分たちが築き上げてきた作品の独自性を薄めることもせず、自信を持って癖を残しつつ幅広い層に訴えるための遊びやすさの追及にも手を抜かないという、両立困難な二つの事柄を成立させてしまった作り手の高い高い志に頭が下がります。
 
 
 

プロフェッショナルのモンスタースレイヤーというアプローチ

 
 海外のハイファンタジーRPGは正直どれも大量の設定で世界観を補完していくだけの指輪物語もどきにしか見えず、ゲームとしての完成度が突出しているようなケースを除きさほど興味を惹かれることはありませんでした。しかし、今作はありがちな指輪物語タイプのそれとは一線を画し、ウィッチャーという怪物退治専門のプロの描写を突き詰め、それをシステムにまで落とし込むことで他のハイファンタジーRPGから頭一つ飛び抜けることに成功しています。歴史や地理のお勉強のごとくダラダラ長ったらしいドキュメントを読まされ意味が分からない固有名詞を暗記させられ世界観設定をマクロ的に補完して厚みを持たせるのではなく、聞き込みで得た情報や、遺体の検死、事件発生場所の調査でモンスターの痕跡を発見しそれを追跡し排除するプロフェッショナルとしての描写に力を入れることで、地を這うようなミクロの視点から自然に世界観を肌に擦り込んでいくというスタイルの徹底が心地いいです。
 
 2は王殺しの犯人に仕立て上げられた主人公ゲラルトが自らの潔白を証明するため王殺しの真犯人を追跡するというかなり政治性が強くかつ自由度の少ないリニア型で窮屈な作りでした。しかし、広いオープンワールドでのびのびと怪物退治ができるようになったことでよりフリーランスの害獣駆除のプロとしての立ち位置が強化されるという、シリーズのオープンワールド化が非常にプラスに働いた好例だと思います。政治とある程度距離を取ったことでモンスタースレイヤーとしてのウィッチャーの仕事を縛り付けていたリニア型という枷から解放され、オープンワールドの世界でより活き活きとした放浪者としての在り方を手にすることができました。戦略性があまりなく、オープンワールドが目的化しているだけのシリーズが多い中で、これほどオープンワールドになったことで秘めていたポテンシャルが解き放たれ魅力が飛躍的に向上した作品も珍しいです。
 
 世界観の厚みを押しつけるのではなく、ウィッチャーとして報酬と引き替えに怪物を退治したり困っている人を助けたりとプロの仕事を淡々とこなすことで、自然とこの世界の中での自分の立ち位置を学び、世界を徐々に理解していけるという姿勢は、非常にこのシリーズらしいアプローチで感心させられます。
 
 
 

ウィッチャー3/ワイルドハント改めグウェント/ワイルドデュエル

 
 序盤ゲーム本編とはまったく関係ないところで苦労させられるのは尋常ではない中毒性を持ったミニゲームであるグウェントというカードゲームです。このグウェントで用いるカードがお店で売っているため、序盤は2に比べてお金を入手しづらく、かつ武器や防具に耐久度が追加されたせいで頻繁に消耗した装備を修理するために出費を強いられるのに、グウェントが楽しすぎて、ほぼ全財産をカード購入代金に奪われ、金欠状態が続きます。
 
 このグウェントが楽しすぎるため、メインクエストそっちのけでグウェントがプレイ可能なNPC(宿屋の主人や商人など)を探し回ったり、サブクエストもグウェント優先で、新しいカードを入手するためひたすらグウェント勝負を挑み続けるという状態が続き、物語の目的を見失うことが多々ありました。
 
 ここまでシンプルなルール設定で駆け引きが楽しいと思えたカードゲームはアイ・オブ・ジャッジメント以来かも。アイ・オブ・ジャッジメントも朝から晩まで暇さえあればオンライン対戦に明け暮れていましたがそれクラスのカードゲームがミニゲームとして収録されているのかと思うとその豪華さに驚愕させられます。
 
 2のサイコロポーカーもお手軽で楽しかったですが、今作のグウェントはそれを完全に凌駕しています。メインクエストで知り合いがピンチで現場に駆け付けなくてはならないという緊迫した場面の移動途中で未発見だった商人を見つけてしまい延々勝つまで何度も何度も勝負を挑み「危機に瀕した友人をほったらかしてなんでグウェントやってるんだろう・・・・・・」という罪悪感に苛まれたことが何度かありました。
 
 
 

システムの長所・短所

 
 バトルシステム周りは基本的には2の延長線で、2をクリアしていればさほど困ることはないものの、細かい変更点も多く、慣れるのにはやや苦労しました。
 
 まず、ウィッチャーのバトルシステムの基本中の基本である霊薬やオイルの仕様が変化した点。武器に塗るオイルは制限時間制から回数制に変わった程度で、霊薬に比べるとほぼ2と変わらない感覚で使用可能。後は、2で消費アイテムだった霊薬・爆薬(罠がなくなり罠の効果は爆薬に一元化)が補充制アイテム(オイルは無限に使いたい放題)となり、一度クラフトしてしまえば無くなることはなく、瞑想すれば勝手に特定のアイテムを消費して上限まで補充されるため、より残量を気にせず使いたい放題使えるように。
 
 大きく変わったのは霊薬周りで、2とは異なり、瞑想中でなくとも霊薬使用が常時可能という一作目に近いタイプに変更されました。それプラス2における霊薬と似たような中毒度(霊薬を使うと増加し、上限まで達すると新たに霊薬が使用できなくなるゲージ)を一定量占有するものの効果時間が非常に長く続く変異抽出液という通常の霊薬とは異なる仕様のものが追加され、丁度1と2の霊薬システムを足して2で割ったようなバランスです。
 
 ドラゴンエイジのMPやスタミナを占有して効果を常時発動させ続ける持続系タレント(スペル)のように、中毒度を大幅に占有する変異抽出液を使用し、余った中毒度を用いて短期間効果を発揮する通常霊薬をやりくりするというスタイルになったことで、常に中毒度や使用中の霊薬に意識が向くようになりました。中毒度の上限を上げれば上げるほど常時使用可能な変異抽出液の数が増えたり、戦闘中に通常霊薬を使いまくれたりと、ここは霊薬使用に良い意味で気を遣わされ好感触です。
 
 ただ、問題は2と異なり霊薬や錬金術アビリティによって戦闘中のライフ回復が容易になってしまったことで、バトルがゴリ押し可能となり、2とは比べものにならないほど戦闘の難易度が下がった点。今作は4段階の難易度があり、最初はノーマルくらいかなと思い下から二番目のストーリー&バトルという難易度を選んで進めていましたが、あまりにもバトルが簡単すぎて歯応えがないため結局途中から最高難易度のデスマーチまで上げましたが、それでもまだ2の難易度ノーマルに届きすらせず、中盤以降はほぼ死亡することもなく、ラスボスもまったく苦戦すらせず勝ててしまい、拍子抜けさせられました(さすがにDLCをやると手こずりはします)。
 
 今作は錬金術アビリティがあまりにも強力過ぎます。変異抽出液を使用するとライフ上限を大幅に上げるものだったり、霊薬を使用すると種類に関わらず無条件で体力を回復してくれるものだったりと、錬金術アビリティを強化していくとライフ上限が上がり、それに付随して回復量も増加(%で回復するため、ライフ上限が上がると霊薬による回復量も比例して上昇)するため、システムに慣れさえすればよほどレベルが高い敵と遭遇でもしない限りは苦戦することはなく、死にゲーに近かった2の緊張感は消え、ただひたすら回復しながら攻撃していれば勝ててしまうバランスに。
 
 中毒度を変異抽出液と通常霊薬でやりくりするというシステムは面白いし、バトルはスピーディで爽快感が向上し進化しているのに戦闘中の回復を容易にしたことでバランスが壊れ気味で、回復を制限していた2のほうが遥かに歯応えがあり一戦一戦に緊張感がありました。アクション性が大幅に強化された爽快感のあるバトル演出を体験するとさすがに2のほうが良いとは思えませんが、2の一撃一撃が致命傷となる攻撃の重みが少し懐かしいです。敵が2に比べやたら固くなって倒すまで何発も何発も攻撃を加え続けなければならなくなったのも戦闘がいちいち間延びして面倒でした。
 
 その他良くなった点としては、2にはなかったディアブロ3の影響であろう武器・防具のレベル制の導入により、常に不完全な装備を今のレベルに見合ったものに交換したいという欲求を抱かせ強力なインセンティブ要素にしていたり、霊薬やオイル、爆薬をクラフトでアップグレードしていけるので素材探しに躍起になったり、マップ上にレベルアップした際に得られるアビリティポイントを発見しただけで無償で貰える魅力的な場所を設置することでオープンワールドの広いマップを探索する際のモチベーションを強化していたり、そもそもグウェントのおかげでグウェントが可能なNPCを探すためマップ中をカードを求めて彷徨ったりと、2に比べるとメインクエスト以外のやり込み部分の遊びやすさが大幅に向上し、中毒性の高さは別次元です。
 
 
 

不満あれこれ

 
 今作最大の欠点はやはりオープンワールド化の重い代償であろうロードの長さです。軽く2の5~10倍くらいはロード時間が増えたため、ちょっと手前のセーブポイントからやり直そうとしただけで膨大な時間待たされ、常に苦痛が付き纏います。フォールアウト4も傑作だったのに、ファストトラベルのロードの長さに堪え兼ね50時間くらいプレイしたところで嫌になってやめてしまったこともあり、今作もあっさり興味が失せてしまわないかと冷や冷やしながらプレイしましたが、とりあえず頻繁に行う同一エリア内のファストトラベルはロードが最低限なことで何とか我慢できました。ただ、どうしても手前のチェックポイントから手動でロードしたり、ロードが発生する別エリアへの移動など、煩わしいことを無意識的に避けようとして行動が制限されるのはいい気分はしません。
 
 後は、ロードの長さに比べると些細なことですが、移動周りは距離が長い割には、アサシンクリードやダイイングライトのパルクールや、グランドセフトオートの乗り物移動のように移動そのものに快楽性を持たせるといった工夫がされていないため、やや単調に感じました。今作はアイテムは重量制で持ちきれなくなったら店に売りに行かなければならなかったり、武器や防具に耐久度が設定されたため、頻繁に修理のため鍛冶屋に出向く必要があったり、そもそもおつかいクエストが多く街中あちこち走らされたりと、やたら滅多に移動を強いてくる割にあまり快適さが確保されていないため、移動が億劫に感じることが多いです。いちいちファストトラベル地点から店の場所が微妙に離されているのも、もしかしたら綺麗な景色や作り込んだ街並みを鑑賞して欲しくてあえて歩かせているのかと勘繰りたくなります。
 
 さらにこれも微々たる程度の不満ですが、2と同じでそこら中に火を灯せるオブジェが設置されており、ウィッチャーが火を自在に操れるということの表現と、ライティングの美しさの強調と、後は単純に暗い場所を照らすための用途なのでしょうが、とにかくアイテムが入手できるオブジェの近くにあることが多く、ボタンを連打してアイテムを入手していると勝手にカーソルがあってしまい頻繁に火を付けたり消したりのループに入るためイライラするのでいい加減止めて欲しいです。
 
 
 

まとめ

 
 ゲームの一つ一つの要素だけ取り出してみたら好みな部分はそれほどないのですが、全体として評価しようとした場合、あまりの隙のない高水準なまとまり具合に賞賛以外の選択肢がそもそも存在しないという、個人の嗜好に合う合わないを超越し、ただただ到達した完成度の高さだけに圧倒される大傑作。
 
 
 
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デュエル!!