エンタメ不感症の患部に巻く包帯

フォールアウト(steam版) 〈感想・レビュー・評価〉

 

プレイ動画

 
点数:90点
 
 

メモ

 
・日本語化し、ハイレゾパッチで解像度800×600へ変更(これ以上解像度を上げると自分の視力では文字が小くて読み辛くなるため)
 
 

短評

 
 固定の見下ろし型視点や、AP(アクションポイント)をやりくりするターン制バトルど一部古臭い部分もあるものの、オープンワールド化する以前の現代でも通じる洗練された美しいゲーム性は圧巻。フォールアウトシリーズの古きを訪ね新しきを知り直せる大傑作。
 
 
 

ジ・エルダースクロールズ(ベセスダ)という混ぜ物が混入していない高純度のフォールアウト

 
 フォールアウトシリーズはPS3版の3が初プレイだったこともあり、3への印象がシリーズに対する印象の基準であり、それを疑うこともありませんでした。しかし、今作をプレイすると、フォールアウトシリーズの特徴だと勘違いしていた要素(オープンワールドの広大な世界はもちろん、膨大なプレイ時間を伴うボリューム満点のサブクエスト、丁寧なナビゲーションシステム、など)が実はゲームエンジン初め3の元となったジ・エルダースクロールズⅣ:オブリビオン(ベセスダ)側からもたらされたものだと分かり、シリーズへの認識が大幅に修正されました。
 
 フォールアウトシリーズからオブリビオン要素をごっそり抜くと、そこには膨大なボリュームによってセーブデータ(旅の思い出やキャラビルド)を蓄積していくタイプのRPGではなく、どちらかというとボリュームよりもリプレイ性に重点を置き、冒険よりもローグライクゲームの様なプレイヤーの成長やシステムへの適応こそを柱とする硬派なゲーム性が出現します。ゲーム開始直後にいきなり物語的にもシステム的にもボルト(シリーズお馴染みの地下シェルター)の外の世界に放り出され途方に暮れさせ、そこから外の世界の現状やシステムを把握していくプロセスは徹頭徹尾がプレイヤーの手探り任せ。当初の目的となるウォーターチップを見つけるという期限付きのメインミッション以外は、序盤からどこに行って何をやっても自由。普通なら次に何をすればいいか分からず混乱しそうなものですが、世界(ワールドマップ)がかなり狭めなため、あちこちの村や街に聞き込みをして歩き回るのにナビゲーションが必要ありません。そのため終始自分のペースでゲームに馴染んでいけるのが大きな特徴です。
 
 立ち寄った村や街で手当たり次第にNPCにチップの在処を知っているかしつこく尋ね歩かせることで次に向かうべき場所の情報を持っているNPCと出会えた瞬間の喜びは格別なものとなります。それに序盤にどっちの方向に進むべきか軽く示唆され、その通りの方向に進むと村があり、さらにその村で聞き込みをすると次に進むべき方向を教えて貰えと、システムレベルでは親切なナビゲーションシステムなどなくとも、小まめにNPCに話しかけて情報を収集しながらプレイすれば迷わず目的地まで辿り付けるように配慮されています。露骨にプレイヤーを甘やかさず、しかし不親切に彷徨わせるという突き放し方も避け、これ見よがしにならない程度の親切さがそっと寄り添う作りは品があって好感触です。
 
 このゲームプレイに付いて回る徹底した手探り感というものが3以降のシリーズではほぼ消失してしまっている重要な要素です。オープンワールドの冒険しがいのある広大なマップと引き換えに、手探り感を著しく損なわせるナビゲーションシステムも必須となり、そのせいで常にプレイヤーが足を使って聞き込みをし情報を仕入れていくという大事なプロセスを失ってしまいました(これはなにもフォールアウトシリーズに限った話ではなく、オープンワールド化するケース一般に伴う問題でもありますが)。
 
 この手探り感はシステム設計と呼応し、ゲームプレイによってもたらされる確かな手応えにもプラスの影響を与えています。今作はサブクエスト以外はフラグ管理というものを徹底して排除し序盤からいきなりラストダンジョン的な場所に直行できたり、ゲーム開始直後に最強クラスの装備を入手できたりとプレイに制約がなく自由で伸びやかです。ストーリーも最小限で、しかもナラティブな手法のシチュエーションの作り方や、ちょっとしたシステム的な工夫(シリーズお馴染みの敵の死体から入手できるアイテムがドラマ性を帯びている、など)だけで演出される物語はゲームプレイを一切停滞させないまま世界観に深みを持たせており、シリーズ一作目でもはや怪物級の凄まじいバランス感覚に達しています。特に、驚かされたのはあるカルト教団の施設の地下に生理的嫌悪感を催す狂気的な空間が広がっているのですが、ここに教団の団員が着ているローブと同じものを入手し装備すると敵に気付かれずに潜入でき、この状態で延々と狂った空間を敵にバレないか怯えながら進むというシチュエーションは上質なホラーゲームの様でした。この極上のゲーム体験をプレイヤーに丸投げする(変装してビクビク怯えながら隠れ進んでもいいし、別段敵を全滅させながら進んでもいい)ため、強制的にやらされているという押しつけがましさがなく、ゲームプレイの全てにプレイヤーが自らの意志で選んで行っているという確かな手応えが生じます。これを優秀なゲームエンジンの馬力抜きで、見下ろし型の2Dドット絵と、ただただアイデアと工夫だけで表現しており、作り手のセンスに感嘆させられるばかり。
 
 シリーズ一作目からして芸術的と言いたくなるほどの美しいシステム設計やゲーム思想が貫かれており、なるほど今作を下敷きにしているフォールアウトシリーズが傑作な理由がよく分かりました。強制性を徹底的に排除し、全てをプレイヤーの判断に一任してしまう放任主義なバランスは3以降の作品では明確なドラマ性や広大なオープンワールドのマップ、それを補助するためのナビゲーションシステム、膨大なボリュームなどに取って代わられ、残念ながら薄まってしまっています。ですが、ゲーム市場という名のウェイストランドをサバイバルするため、マップの広大化・やり込みボリューム・親切設計スキルにスキルポイントを振り、その時代のゲーム環境に柔軟に適応してしぶとく生き残っていくという選択は今作のゲーム思想に通じているようにすら思えます。
 
 時代の要請によりオープンワールド化して以降も、一作目の精神を宿しながら逞しくフォールアウトであり続けるシリーズが今作を知ることでずっとずっと好きになりました。
 
 
 

柱となる強固な設計思想とは裏腹に、老朽化して魅力を失ったバトルシステム

 
 根幹のゲーム性は現代でも難なく通じるほど突出して完成度が高いものの、それ以外のシステム部分はどうしても古臭さを否めず、特に戦闘周りは不便な部分が多かったり、自由度の高さを反映してかバランスが大味だったりでイマイチでした。
 
 通常移動時はPCのゲームでは一般的なマウスでクリックした場所目掛けて自キャラが移動するタイプですが、敵が近くにいてこちら側に気付いたり、こちら側から相手に先制攻撃しようとするとターン制バトルに移行する作りで、通常移動状態からシームレスにターン制バトルに移行するのはいいとしても、内容は凡庸に毛が生えた程度。3以降のV.A.T.S.システムの原型ともなる、毎ターン回復するAP(アクションポイント)をやりくりするというフロントミッションの2以降(こちらのAPはアクティブポイントですが)のようなバトルは、手持ち武器の射程は数値だけで視覚的に範囲が表示されなかったり、移動のやり直しが効かないのに銃火器の射線が表示されなかったり、クリティカルを一発喰らえば体力の数倍のダメージで即死したり、そもそも序盤から強力な装備を入手してしまえばザコ敵戦はほぼ楽勝で作業化しやすかったり、お世辞にも出来がいいとは言えず。
 
 それにZOCがないため、敵の脇をすり抜け放題で、ある程度APに余裕があれば、ひたすら遮蔽物や壁の角に張り付いて射線を避け、飛び出す・隠れるを繰り返せば無傷で敵を倒せてしまったりととにかく雑。戦闘中もセーブ可能なため、スーパーロボット大戦の様に毎ターンひたすらセーブ&ロードを繰り返して都合のいい結果が出るまで粘ることも出来てしまい、準備不足や戦略不足を誤魔化せてしまうのもマイナス(この部分は以降のシリーズにもまんま残っていますが)。長射程の武器を用いてコチラから先制攻撃を仕掛けられるなど、凡庸なシミュレーションRPGなどに比べたら最低限戦略を練る楽しみはあるものの、あまり自分好みなバトルバランスではありませんでした。
 
 この部分は、3以降にリアルタイムアクション化+V.A.T.S.システムを搭載してくれて心底良かったと思います。
 
 
 

まとめ

 
 フォールアウトシリーズの原点を訪ねる旅は、得る物ばかりで大変有意義なものでした。
 
 
 
 

 

マッドマックス(ゲーム) (steam版) 〈感想・レビュー・評価〉

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プレイ動画

 
点数:80点
 
 

短評

 
 クリアまで約20時間ほど。オープンワールドゲームにしてはシステムの物量に頼らない非常に簡素でスッキリしたシステム構成で、徹頭徹尾シンプルさのみを追及しているためゲームとしては遊びやすいものの、反面深みがなく終始単調さが付いて回る。一級のオープンワールドゲームには作り込みで今一歩届かないものの、余計な煩わしさを排除しシンプルに徹する潔い態度には原作映画の哲学に通じるような美意識を感じさせ、好印象を受ける。
 
 
 

簡素志向を徹底した結果、映画を目指しているゲームより映画原作ゲームのほうが純粋にゲームしているという逆転現象が起こる

 
 ストーリーは映画のマッドマックス:怒りのデスロードの軽い前日譚の様な内容(直接的な繋がりはなく、怒りのデスロードのやや手前の話であるということを匂わす程度)。ただ、怒りのデスロードと設定だけかなり共有されており、イモータン・ジョーの息子や、イモータン・ジョーの私兵部隊であるウォーボーイズが登場したりと、映画を知っている前提で説明が省かれている箇所も多く、先に怒りのデスロードを見ておいたほうが賢明です(ゲームだけだとイモータン・ジョーの詳しい説明すらされない)。
 
 システム周りはオープンワールドゲームにしては驚くほどシンプルで、イモータン・ジョーの息子であるスクロタスに奪われた愛車(インターセプター)を取り返すため、成り行きで出会ったチャムバケットというメカニックと一緒にマグナムオプスという今作の実質主役であるオンボロ車をひたすら改造し強化していくだけ(マックス自身の強化要素もある)。メインストーリーもマグナムオプスの改造度合いと連動して進行し、サブミッションなどのやり込み要素も多くがマグナムオプスの新たな改造項目をオープンしていく条件となっているなど、終始マグナムオプスという車の改造に意識を向けさせる作りとなっており、これが何ともゲームの佇まいとして潔く、好感が持てます。
 
 今作に作品として評価されようなどという欲は微塵も含まれておらず、ただ最初から最後までマグナムオプスを改造したり、レースをしたり、ウェイストランドをあちこち探索し色々な物資を回収して回ったり、スクロタスの拠点を潰して回ったり、ウォーボーイズやロードキル、バザードなど、見た目からして悪そうなヤツラを見つけ次第車をぶつけたり、降りてぶん殴るだけという内容で、恐ろしくシンプルな反面ゲームとしての深みは無きに等しいです。
 
 この、まるでウェイストランダー精神を反映させたかのような余計な装飾や複雑なルールを排し、車を神のように崇めるチャムバケットの如くマグナムオプスの改造に全要素が奉仕する車信仰の強いシステム構成は独自の美学すら感じさせます。普通のオープンワールドゲームのようなあれも出来るこれも出来るといった物量偏重の欲張りなシステム構成と異なり、これほどシンプルに徹し複雑だったり余計だったりするものを限りなく捨て去った軽やかなゲームプレイは斬新です。
 
 オープンワールドとしてのベースはありがちなUBI型(ファークライ、など)に近く、気球が設置してある場所など、ファストトラベルの中継点となる場所をオープンしながら活動範囲を広げていくタイプで、目新しさは皆無。マックスが車を降りて生身でする戦闘はこちらもありがちなバットマンライクなもので、攻撃・パリィ・回避をお手軽操作でこなしていくだけで、マックスお馴染みのショットガンを近接格闘に混ぜながら使えるという以外に目を引く要素は特になし。ただ、メインが車による体当たり・投擲武器などを用いたやや操作に癖のある戦闘なため、生身での戦闘がお手軽なバットマンライクという点はむしろ複雑さをうまく回避しつつそこそこの爽快感を確保できており好感触なくらい。ライズ/サン・オブ・ローマの様に、戦闘が主体のゲームなのにそこがバットマンライクだとさすがに単調で物足りなさを覚えますが、今作の様に乗り物が主体で生身の戦闘をそれほど重視しないスタンスだといい感じで殴り合いが息抜きや軽い刺激として機能し好ましかったです。
 
 
 

不満あれこれ

 
 今作の不満点はほとんどが褒め所の裏返しです。利点でもあるシンプルさは単調さと常に背中合わせで、プレイ中何度も同じことを繰り返しさせられるため終始マンネリ気味。各エリアにある砦の設備を充実させるという要素も、スクロタス軍の拠点を潰していくのも、マグナムオプスやマックスの強化に用いるスクラップを集めるのも、全てがワンパターンで序盤であっさりゲームの底の浅さが暴かれてしまいます。シンプルなので取っ付きやすい反面驚くほどゲームとしての引き出しも少なく、序盤の好印象の貯金が徐々に後半に行くにつれ減っていく一方で、残高が増えることはありません。
 
 舞台となるウェイストランドは、メタルギアソリッドⅤ/ザ・ファントムペインアフガニスタンやアフリカのマップのように敵がうろつくばかりで砦など建物の中以外では一般人がまったく見当たらない作り(たまにイベント的にぽつぽつ擦れ違うだけ)で寂しく、景色もしょぼさこそ感じさせないもののどこまで行ってもほとんど荒野か山か砂漠かオーソドックスなポストアポカリプス感を漂わせるだけの廃墟ばかり。ロケーションの作り方や見せ方が垢抜けないため新しいエリアに辿り着いても体感で変化を感じられず、行動範囲が広がっていくプロセスにさほど感動がありません(ガスタウンだけ遥か遠方で常に炎を噴きあげ存在を誇示できているくらい)。ウェイストランドという舞台がうまくキャラクター化しておらず、延々とあちこち探索し続けるゲームなのに舞台の印象の弱さが終始響き続けます。
 
 ゲームシステムそのものがあまりにもユーザーフレンドリー過ぎるという点も、マッドマックスのようなただ人間が生きていくだけでも過酷で熾烈な世界という設定の足を引っ張っており、まるで過酷な世界を模したテーマパークの中でのびのびと遊んでいる様な、本来生じてはいけない快適さが生じてしまっており欠点に感じました。特に、拠点となる砦の設備を充実させてしまうと、序盤からほぼ弾薬などの消費アイテムや回復アイテムである水を無尽蔵に補給できてしまうため、難易度がダダ下がりするだけでなく、物資のありがたみまで損なってしまい、これなら中盤くらいまで消費アイテム不足で悩ませ物資のありがたみを実感させてから、ようやくゲームが折り返しに来たくらいで簡単に補給可能になる程度で良かったです。全体的にゲームとしてはもう少し理不尽さが徹底されていたほうが世界観と合っていたと思います。メインの回復手段が水筒に入れた水というのがこのウェイストランドでは水は貴重で補給すらままならないという舞台の過酷さの演出にもなっており非常に感心させられたのに、序盤から早々にありがたみが消えてしまうのが残念でした。
 
 そして、今作一番の致命的な問題だと思うのがマグナムオプスの改造に戦略性が伴わない点です。例えばトップスピードが必要なミッションがあるからトップスピードを強化しようとか、曲がりくねった道を高速で走り抜けないといけないからハンドリング性能を強化しようとか、プレーヤーがミッション内容から改造項目を逆算で考えて選べたり、危険地帯を装甲を犠牲にしてスピードを重視し一気に走り抜けるか、逆にスピードを犠牲にして装甲を強化して耐え抜くかなど、複数の選択肢から自分なりにミッションに合った戦略を考えたり、もしくは現在の改造度合いに見合った走行戦略を見繕うといったような面白味もなく、ただ均等に改造しただけのマグナムオプスで対処可能なミッションしかなく、改造の成果でミッションをクリア出来たという達成感がまったく生じません。
 
 もし今作がシステムのシンプルさを損なわないまま、様々な性能を要求してくる一筋縄ではいかないバラエティに富んだミッションを用意し、マグナムオプスの自由な改造プランをプレーヤー側に一任し、かつ改造によってマグナムオプスに極端な性能の振れ幅が生じるバランス設定だったら、アーマードコアのミッション内容に応じたカスタマイズのトライ&エラーの面白さか、もしくはデウスエクスのオーグメンテーションシステム並みの必要に応じた強化項目選択の快楽性を獲得できたかもしれず、非常に勿体ないです。今作はもっともっと飛躍的に面白くなるシステム的なポテンシャルを秘めているのに、それを半分も発揮できておらず、せっかく車の改造にシステムを絞ったのなら、車の改造とゲーム性を完璧に一致させて欲しかったです。
 
 
 

まとめ

 
 車の改造に焦点を絞りゲームの主軸に据えたのは良かったものの、詰めが甘く傑作までは手が届かなかった惜しい作品。
 
 ただ、マッドマックスという美意識やこだわりの塊のような巨大で偉大な原作に一方的に飲まれファンアイテムに没したりせず、ゲームはゲームで独特な淀みのない滑らかなゲームプレイの手触りを実現するなどしっかり主張するべきところは主張できており、大変貴重なゲーム体験でした。
 
 
 
 
 

 

 

マッドマックス

マッドマックス

 
マッドマックス

マッドマックス

 

 

クォンタムブレイク(steam版) 〈感想・レビュー・評価〉

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トレーラー

 
点数:75点
 
 

短評

 
 クリアまで約10時間弱ほど。同社の過去作であるアランウェイクと同様、ゲーム性よりかは雰囲気重視の姿勢は相変わらず。時間操作能力を駆使して戦う爽快感のあるTPS部分や、丁寧な辻褄合わせ系のタイムトラベル要素を主軸としたストーリー、非常に野心的な試みの数々など魅力的な部分は多々あるものの、全体的に作り込みが浅くもう一押しが足りない惜しい作品。
 
 
 

ブライトフォールズには勝てなかったモナークソリューションズ

 
 アランウェイクを作ったフィンランドのメーカーであるRemedyの作品だけあり、そこここにアランウェイク成分が残留しているのが印象的です。リニア型でちょっとした謎解きを挟みながらもひたすら一本道を進み続ける作りだったり、ドラマを意識した様な構成だったり(それどころかゲーム内にまんま実写ドラマパートがある)、フラッシュフォワードっぽい後に主人公が体験する出来事をやや手前で漏らしてしまうストーリーテリングだったりと、アランウェイクを踏襲していると思われる箇所が散見されます。
 
 メインのシステムは大きく分けて二つで、時間を操れる主人公がバレットタイムに近い様々な種類のスローモーション(全体をスローにしたり、限定空間だけスローにしたり)を駆使する爽快感のあるシューティング部分と、その能力でもってマップのギミックに働きかけ道を切り拓くちょっとした謎解き部分。
 
 まず、謎解きの様なことをさせられるアクションアドベンチャーパートは、戦闘中に用いる時間をスローにしたり静止したりする能力とうまく連動させた謎解き部分はいいのですが、イベントが発生する箇所にただ近づき特定のボタンを押すと勝手にギミックに干渉し時間が巻き戻ったり、過去の幻影が見えたりと非常に適当な作りのものも多く、気になりました。
 
 TMD(タイム・マニピュレーション・デバイス)という時空操作装置を用いて時間を操作するという似たようなコンセプトを持つシンギュラリティは、敵の時間を進めエイジング(老化)で即死させられるといったことが可能な戦闘部分と、ギミックの時間を進めて物体を腐敗させ破壊したり、逆に時間を巻き戻して元の状態に復元したりといったちょっとした謎解き部分のシステムがきちんと連動しています。なのに、今作はこの戦闘中に使う能力と謎解きがイマイチ綺麗に連動しておらず、とりあえず指示されたボタンを押したら勝手にその場に即した現象が起こるだけなので、能動的に謎を解いて先に進めたという達成感が極めて薄いです。もし、謎解き部分でギミックの時間を巻き戻すことで先に進めるようになるということがやりたいのであれば、戦闘中の能力にも同じく時間を巻き戻す能力を用意し、かつそれをプレーヤーの判断で非戦闘時でも使用できるという形にしないと謎解き部分に推理性が生じません。時間を操る能力といういかにも謎解き向けコンセプトのゲームなのに、この程度の最低限のルールすら守れていないため、この部分がよく出来ているシンギュラリティなどには到底及ばず。
 
 逆に様々な種類のスロー効果を用いる戦闘部分は爽快感があり好感触でした。特にデッドスペースのステイシスの様な敵の動きをスローにするのではなく、指定した空間ごと時の流れを止めることでコチラ側が撃った大量の銃弾も空中に静止し、時間の流れが元に戻った瞬間静止していた弾丸が雨あられのごとく一気に敵に浴びせられるという能力は気持ちよくて癖になります。その他にも、使用時に発生する衝撃波で敵を吹っ飛ばす効果のほうがむしろ楽しいシールドやダッシュ、発動中は終始バレットタイム状態になる高速移動(使用中は特定の敵を一撃で倒せるテイクダウンが可能)など、複数の能力を用い、敵に対して圧倒的な優位性を味わえる快感はアランウェイクを軽々と凌駕するほど。無時間状態での戦闘では倒した敵が地面に倒れるのではなく、死体となってその場で空中に静止するため、そこら中に敵の死体が静止状態で浮いているというあまり見たことがない絵面が拝め新鮮だったり、時間を操作する能力を用いるシステムだけでなく、それをどう斬新なビジュアルで見せるのかという手法にまでこだわりが感じられ、力の入り様に感心させられます。
 
 ただ、問題は敵のバリエーションが少なすぎてやれることが序盤で出尽くしてしまう点や、そもそも主人公の前に立ちはだかる敵組織であるモナークソリューションズという企業そのもののキャラが薄すぎて戦闘が発生するシチュエーションが退屈過ぎるなど、若干シューティング周りのシステムとはズレた部分に看過できない欠点が多いこと。
 
 特に気になったのは敵組織であるモナークソリューションズという企業のあまりの存在感の薄さです。どこにいてもうじゃうじゃ湧くだけでモナーク社の戦闘部隊(セキュリティ部隊?)と戦うということに別段ゲーム的なドラマが生じないため、ただ機械的に銃撃戦をしているだけで、ちっとも盛り上がりません。アランウェイクでは舞台となるもろにドラマのツインピークス風のブライトフォールズという田舎の村のキャラが立っており、ゲームプレイに彩りを添えるエッセンスとして機能していました。今作でブライトフォールズ的なゲームプレイに彩りを添える役割を果たすのは舞台ではなく敵対組織のモナークのはずなのに、この組織のキャラクター化が弱くゲームプレイが大して華やぎません。
 
 それは多分モナーク社に血を通わせるというプロセスを実写パートに丸投げし、ゲームパートで魅力を引き立てる工夫を怠っている点にあると思います。実写パートは主人公視点ではなく、モナーク社の内部事情を補完するような作りになっていますが、これを入れただけでモナーク社を掘り下げ、企業のキャラを立てられたとは到底思えず。
 
 実写パートはゲームパートとリアリティラインが乖離しないように照明の他にも多分カラーグレーディングなどを駆使して丁寧に仕上げているのでそこそこ見応えはあるものの、映像作品としてはせいぜいドラマ以上映画未満くらいの出来で、正直ゲームパートと違和感なく仕上げている以上の感想を抱くほど単体で魅力があるワケでもなく、毎回25分ほど続くため尺の長さにだれ、ゲームテンポをやや殺し気味です。ではこの実写パートで劇的にモナーク社の存在感が増すかと言ったらそんなことは一切ありません。これは、モナークソリューションズという企業に対してプレーヤーが何かしらの印象を抱く前にすでに企業としては黄昏た段階から話が始まってしまう設定上の不備にあると思います。かなり序盤からモナーク社内部に裏切り者がいたり、モナーク社に対して不信感を抱く社員がいたりと、最初に一枚岩の組織として見せてからそれを徐々に崩していくといった丁寧なプロセスを踏んでくれないため、いきなり足元がグラグラで脇が甘い脆弱な組織にしか見えず、あまりゲームパートでも脅威的な対象に感じません。
 
 このモナーク社くらいしか敵がいないのに、その肝心なモナーク社が非常に頼りがいがないため緊張感が生まれず、作品が締まらないという問題は、ストーリーだけでなくTPS部分にすら影響を与えてしまっているので、もう少し描き方に工夫があればそれだけでぐっと作品全体の印象が上向いたはずなのに勿体ないです。
 
 アランウェイクはジャンル的にスリラー系でなおかつホラー要素もあったため、いい感じでホラーが作品全体を引き締める効果を発揮し、リニア型の一本道が続いてもホラーによってもたらされる不穏さのおかげで緊張感が持続していましたが、今作はこの緊張感がごっそり消失してしまっているので、ゲームプレイがやや弛緩気味で散漫な印象を受けてしまいます。
 
 
 

辻褄合わせに終始する地味なタイムトラベルもの

 
 不完全なタイムマシンを作動させたせいで時間が壊れてしまい、世界が徐々に崩壊していくのを阻止するため過去や未来へタイムトラベルする、というのが主なストーリーの流れですが、劇中でもちょろっと触れられる様に、手法としてはノヴィコフの首尾一貫の原則という、過去にタイムスリップして何かをやろうとしても結局タイムパラドックスを起こす様な行動はできないというタイプの辻褄合わせ系タイムトラベルものなので、映像的には派手ですが、わりと体感としては地味です。
 
 
 映画で言うと“プライマー”や“タイムクライムス”、“プリデスティネーション”といったタイプのタイムトラベルものが近く、例えば序盤に起こった不可解な現象は実は未来からやってきた自分が起こしたものだったことが後で分かる、などの前半起こったことの辻褄合わせをしていくタイプのもの。

 同じくタイムマシンが出てきても平行世界系であるシュタインズゲートの様なタイムマシンで過去にメールを送り歴史を改変してしまうと世界の在り様がガラッと変わってしまうなどといった分かりやすいバタフライエフェクトは起こらず、実は今いる時間軸がすでに過去を改変しようと干渉した結果の産物だったことが明らかになっていくだけです。
 
 自分はどちらかというと丁寧な辻褄合わせに終始するタイプよりもド派手でカタルシスのある過去改変によるバタフライエフェクト描写を重視するようなタイプのほうが好みなので、タイムマシンが出てきてワクワクしていたのに、特に過去を改変していく話ではないと分かり「あぁ、そっち系かぁ……」と若干盛り下がってしまいました。・・・・・・とは言っても、“宇宙大作戦スタートレック)”の『危険な過去への旅』のような過去の世界で目の前に助けたい人がいるのに助けてしまうとタイムパラドックスが起こるから助けることができないという苦悩を描いたり、辻褄合わせ系ならではの味も堪能でき、終わってみると印象は上々でした。
 
 

まとめ

 
 ローカライズが不完全でところどころ内容理解に支障が出る箇所があったり、アランウェイク同様システム部分の作り込みが浅すぎて終始物足りなさを覚え続けたりと欠点はそこそこあるものの、それ以外の部分はアランウェイクと同等かそれ以上の高度な創作哲学が貫かれた力作中の力作なため、作り手の心地よい創作への熱意を堪能でき、かつゲームとしての最先端の試みに触れられ刺激的でした。
 
 
 
 

 

 

Quantum Break

Quantum Break

 

 

龍が如く5/夢、叶えし者 〈感想・レビュー・評価〉

 

トレーラー

 
点数:90点
 
 

短評

 
 (アナザードラマをメイン・サブ全てコンプリートして)クリアまで約50時間ほど。一作目の幻影を追い求めてばかりだった2~4に対し、シリーズに立ちはだかる神室町(かむろちょう)という巨大な壁を乗り越え、次なる表現域に達した傑作。
 
 
 

どこに出しても恥ずかしくない円熟の域に達した佇まい

 
 今作は4と同じオムニバスに似た主人公5人方式で、第三部だけ変則的に主人公が2人制なものの、残りは第四部までそれぞれ主人公1人が割り当てられ、ラストの第五部で5人全員が合流(と言っても、遥だけ非戦闘キャラなので実質は4人)という4とほぼ同じ構造。
 
 舞台は終始神室町がメインだった4とは大きく異なり、一部ごとにそれぞれ舞台となる街が別個に用意されるという豪勢さ。第一部は福岡の中洲がモデルである永州(ながす)、第二部は北海道札幌のすすきのがモデルの月見野(つきみの)、第三部は2にも登場した大阪の蒼天堀(そうてんぼり)、第四部は名古屋市の栄と錦三丁目をモデルとした錦栄町(きんえいちょう)、そしてラスト第五部を飾るのはお馴染み東京の神室町という構成。
 
 もうさすがにハードをPS3に移してからナンバリングでは3・4ときて三作目なので、劇的な変化もないだろうと高を括ってゲームに挑むと、なんとゲームからもたらされる感触が4から格段に向上しており良い意味で期待を裏切られました。一番嬉しかったのはどの部分に適切に力を注げばゲーム体験の質をより高められるのかという一作目の鋭いバランス感覚が蘇った点。
 
 移動モーションはより自然で滑らかな動きを意識し作り込まれ、階段の昇り降りや店に入る際のドアの開閉用に新たなモーションも追加され、移動周りの操作感は大幅にリッチなものに。NPCの歩行ルートもより自然となり、行き止まりでUターンしていた3や4とは段違い。バトルもエンカウントやヒートアクションのカットイン演出のシームレス志向が前進し、さらにアドベンチャーパートとバトルパートの段差を取っ払おうとする姿勢に磨きがかかったりと、変化はほとんどプラスに働くものばかり。
 
 一過性の派手さや、目新しさをただ闇雲に求めるよりも、操作性からもたらされる野暮ったい、いかにもなゲーム臭さを排することにこそ気を配っており、ゲームプレイの自然さがより増しました。その結果、長時間遊ぶ際のプレイ耐用性が伸び、没入度も強化されるという至れり尽くせりな仕上がりです。4と今作を比べると、手が加えられた箇所があまりにもゲームの満足度に直結する部位ばかりで、一作目の力点の置き所の的確さに通じるセンスが垣間見られ驚かされます。4で神室町に屋上エリアを追加したり地下エリアを追加したりというマップをいたずらに複雑にするだけのしょうもない方向性ばかりに注力していたのが嘘のようです。
 
 
 

ど演歌が如く!!

 
 システム周りの好変化もさることながら、今作の感触をこれまでのシリーズと決定的に一変させているのが、派手なドラマ志向から日陰を行く者たちへの共感共苦路線へ勘所が変更されたこと。大仰なドラマで盛り上げる手法からスネに傷を持つ者たちの生き様や孤独、閉塞感を疑似体験させるかの様なシミュレーター志向に創作意識がシフトしたおかげか、派手さという贅肉が減り、ゲーム全体がこれまでのシリーズとは比べものにならないほどタイトに引き締まりました。それは、ボディビルダーが人前で晒すためにプロテインと規則的なトレーニングによって完成させた誇張された筋肉美ではなく、日々の過酷な肉体労働によってひっそりと蓄積された別段誰の目にも触れられることのない、目的ではなくただ結果として付いただけの侘びしさを孕んだ労働者の筋肉のような締まり具合です。
 
 これまでのシリーズと異なり、やり込み要素をアナザードラマという形で各主人公のエピソード(人生と言ってもいい)に組み込んでしまったことも共感共苦路線を強化する働きをしており好印象でした。やり込み要素として楽しみつつ、各主人公の人間性や人生観をさり気なく描写する役割も果たしているので、無駄がありません。
 
 シナリオ面だけでなく前述したシステム周りの没入度を強化させるような変更点も全体を引き締める効果に一役を買っており、コンセプトがシステムを引き締め、またシステムがコンセプトを引き締めと、お互いが良好な関係を築き、ゲーム全体が一定方向のベクトルを向いてまとまった様な、表現したいものと表現手法の一致がもたらすゲーム的な官能性があります。
 
 街も第一部の永州や第四部の錦栄町は主人公と二人三脚で物語を盛り上げるパートナーとなり、時には傷心を慰め優しく寄り添い、時には主人公に試練を課し成長を促がす壁ともなる、甘やかすほど優しすぎず、かつ突き放すほど冷たくもないという、一作目の神室町から受けた印象に非常に近い手触りを覚えました。ただ、第二部は出来れば月見野よりもマタギ(猟師)の集落のほうが冴島のイメージにぴったりなのでこちらを広くしてメインにして欲しかったとか、第三部の蒼天堀はイマイチ遥や秋山と関連があるように見えないなど不満もあります。複数主人公制と、有名な歓楽街をとにかく片っ端から出すという路線が喧嘩してしまった弊害で、無理矢理に思えるマッチングがされ、主人公と街がうまく馴染まないというケースが生じてしまい、そこは残念でした。
 
 今作は一作目がそうであった様に、一本のゲームとしてはとかく欠点が多いです。第三部の前編である遥編のもろにアイドルマスター風のリズムゲーパートが丸々不必要とか、これまではやらなかった本編中にミニゲームチュートリアルを強制的に挟むのが邪魔とか、街の中に進入禁止エリアが多すぎてストレスとか、桐生と冴島以外のキャラはバトルレスポンスが悪くて使っていてストレスとか、ロードが長すぎ&処理落ちだらけとか、相変わらず情緒過多気味でグダグダ長ったらしいだけのムービーがやたら多いなど、無視できない問題が山積しており手放しでは褒められません。
 
 特に素材をそのまま堪能させれば良かったのに、終盤安物のサスペンスやミステリーといった調味料をまぶし素材の味を台無しにしている点は明確に余計でした。もはや、取ってつけたようなサスペンスやミステリーは話の幕引きの余韻を鈍らせるだけで邪魔にしか感じません。今作はシナリオ的な盛り上げのみに頼り切るという従来のやり方からある程度距離を取っているので、3や4ほどの極端な悪印象は避けられているものの、相変わらずシナリオは後半に行くに連れ破綻していくだけで、余韻は最低でした。3以降はもはや毎回毎回律義なほどにシナリオが破綻して余韻を汚し続けるため、いい加減わざとやってるのかと勘繰りたくなってきます。
 
 ただ、同じく一作目がそうであったように、不格好な部分があれど、人を惹き付ける魅力に富む今作も、欠点をあげつらうよりかは、良い部分を目一杯褒めてあげたいという好意の方が結果的に勝ります。その好意を抱かせる一番の要因は、人生を足掻いて足掻いて足掻き続ける日陰者たちへの応援歌という今作の温かいテーマにあるのだと思います。
 
 
 

まとめ

 
 一作目で築き上げた神室町へ依存し続け、ひたすらマイナーチェンジを繰り返すだけだった2~4の姿勢から脱却し、ついに自分が求めていた一作目の表現への気骨を真に受け継ぐ続編に巡り合え感無量です。
 
 (一作目を除く)龍が如くシリーズでプレイした作品の中ではぶっちぎりダントツ最高傑作!!
 
 
 

余談

 
 作品的にはあまり重要な要素ではないですが、今作ではタクシードライバーである桐生一馬がタクシーを運転する際に酔い状態だと飲酒運転になるため酔いを醒ます必要があるとか、元プロ野球選手である品田は野球を愛しているから他のキャラは普通に使える野球のバットを武器として使用できないとか、職業倫理や野球愛をシステムレベルで描いていることに感心させられました。
 
 ダラダラとムービーなんて垂れ流すよりも、品田は野球を愛しているからバットを武器として使うなんてこと絶対しないんだ!! という姿勢をシステムで見せさえすれば一発で品田の野球愛が表現できるという、システム演出がムービー演出に勝るという好例でした。
 
 
 
龍が如くシリーズ


 

 

 

龍が如く5 夢、叶えし者

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