エンタメ不感症の患部に巻く包帯

好きなものについて語るブログ

アサシンクリード4/ブラックフラッグ(steam版)

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プレイ動画

 
点数:85点
 
 

短評

 
 クリアまで約30時間ほど。オープンワールドだから可能なプレイの連続性をフルに生かした豪華な海賊行為はシリーズぶっちぎりのゲーム体験を味わえるものの、これまでシリーズの中心要素だった硬派な歴史ものとしての魅力やドラマ性、ステルス要素が後退。一本の作品としての魅力はやや乏しいものの、ゲームとしての楽しさは倍増するという娯楽要素特化型のゲームバランスに。
 
 
 

暗殺者と海賊、二足のワラジの弊害

 
 これまでのストイックなアサシンの振る舞いを思わせる抑制の効いた基調から逸脱し、自由奔放な海賊めいたど派手で大雑把な作品へと変貌を遂げました。3のオマケに近かった船の操舵や艦船同士の戦闘要素を大幅にブラッシュアップし、この部分だけで一本のゲームをでっち上げてしまったかのよう。もはや海賊プレイがメインで、ステルスゲーム要素がサブに格下げされたため、ゲームからもたらされる感触が通常のアサシンクリードシリーズとは別物に近いです。
 
 元々中心だったステルスの存在感をゲームを構成するシステム群の一つ程度とし、商船や軍艦を襲って物資や船を奪う海賊プレイと連動させた海賊船のアップグレード要素に、ファークライシリーズのクラフト要素を足し、敵から奪った船をオンライン上に派遣することでプレイしていない時間にもバックグラウンドでお金を稼いできてくれるソーシャルゲーム的な要素を足しと、ややシステムの自重が増して全体が不安定になっているのが問題。自分がUBIのゲームをやっていて心底惚れ惚れするどこか人を突き放すような洗練されたドライな仕上がりとは異なり、ややユーザーの顔色を窺い過ぎて快楽要素を必要以上に大盛りにしたかのような俗っぽさが気になりました。特に、一番UBIらしくないと感じたのは、海賊行為をウリにするフリープレイ部分とステルス要素をベースにするメインミッション部分がうまく溶け合っておらず、ちぐはぐに感じること。交互にまったく異なる趣旨のことをやらされるため、まるで違うゲームが一つのゲーム内に無理矢理雑居している様で居心地が悪く感じることが多かったです。
 
 敵の近くで他の兵士を暗殺してもほとんど反応がないほど敵AIの調整がゆるゆるでマップ中の敵をほぼ無尽蔵に殺して排除し放題だったり、途中から使用可能になる吹き矢があまりにも便利すぎてこれだけでほとんど苦労もせず敵を無力化できたりと、ほとんどステルスゲームとしては失敗作なのではと思うほど調整が雑でイマイチ。タカの目モードで敵を簡単にマーキング出来るようになったり、体感で便利になったと感じる部分もあるものの、じっくり観察しなくても突破可能な適当な敵配置やAIの賢さの後退など、手抜きにも見える部分が散見され、これなら3のほうがステルス要素はずっと面白かったです。
 
 UBIはいつもシステム的なインセンティブが弱く、プレイのモチベーション維持が困難という弱点がありますが、今作はプレイのモチベーション維持だけが前に出過ぎて、メインとなる丁寧な物語やステルス部分が日陰となってしまったかのよう。せっかく船の強化のためお金を稼ぐ行為がインセンティブとして機能しているのに、本来なら作品の支柱として機能しなければならないはずの物語性やステルスがサブのやり込み要素に負けているため、海賊行為をするフリープレイだけが面白くて、メインミッションで強制的に出来があまりよくないステルスをやらされるのが面倒という本末転倒さ。
 
 
 

……という不満を全て吹っ飛ばす長回しオープンワールド使いの巧みさ

 
 映画においては長回しをやり過ぎると、映像を自然に見せるための手法なのにも関わらず逆に自然に見せようという作り手側の力みを強調させ不自然さのほうが際立つというデメリットがあります。ゲームにおいてはこの様な副作用は存在せず、プレイがエリアチェンジやロードという断裂を挟まず連続していればいるほど豪華さが増し続けるという利点としてのみ作用し、これをフルに生かした海賊プレイが今作をシリーズの中でも別次元へ誘う結果に。
 
 今作は陸地ではなく海のほうがメインのオープンワールドとなっており、海上で敵艦船との遭遇、砲撃戦、さらにそこから相手の船に乗り込んでの白兵戦という流れを一切ロードを挟まず繰り広げられ、このダイナミズムに圧倒されました。これまでのゲームの記憶からオープンワールドと言えでもどこかできっとシステムが途切れて画面がふっと切り替わるだろうと思いながらプレイしていると「あれ? 敵の船を行動不能にしたのにまだ何かするの?」 「え? このまま大破させた敵の船に接近するの?」「え? このまま敵の船に乗り込むの・・・・・・うわぁ! そのまま白兵戦が始まった!」という、ゲームプレイの連続性がどこまでも途切れないことそのものが強烈なゲーム体験として機能しており感動的です。
 
 そのダイナミズムを支えるのが、とても1つのフレームに納まりきらないほどの船の巨大さだったり、操舵の際の船体の質量を意識させる操作性の作り込みや船体の軋みや帆が風を受けるSEなど、重さ表現の技術の粋を結集させ、そこに今度は正反対である身軽なアサシンの船長を配し、船内の移動や敵戦との白兵戦を颯爽とこなさせるという、この重さと軽やかさの鮮やかな対比。この重さと軽やかさの対比がもたらす感覚がアクションゲームとして官能的で美しく、クラクラさせられました。
 
 大河的な歴史ものとしての重さと、SFとしてのアニムスというデジタル空間設定の軽やかさの対比。一つのフレームに納まらないほどの建造物を昇り、ダイブさせられることで際立つ歴史の象徴の様な建造物のどっしりとした巨大さ。それと相反する人間のちっぽけさと、しかしそれをすいすいと昇って見せる軽快さ。まるでゲーム全体が精神の軽やかな自由を求めるアサシン教団と堅固な規律を重んじるテンプル騎士団の対比構造の相似形が発現したかのよう。実は今作をプレイしていて覚えた感覚はアサシンクリードシリーズにずっと内在し潜伏していたものだと分かり、改めてこのシリーズは昔から傑作だったんだなぁと再認識させられました。
 
 
 

まとめ

 
 作品よりもゲームであることのほうを選んだのは潔いですが、自分的にはアサシンクリードシリーズとしては大河ドラマのような物語のスケールを持つ3のほうが好みでした。ただ、一本のアクションゲームとしての到達度でいったら間違いなくシリーズ屈指の傑作。
 
 
アサシンクリードシリーズ


UBIのオープンワールドゲーム

 
 
 

 
 

ライトニングリターンズ ファイナルファンタジー13(steam版)

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プレイムービー

 

点数:75点
 
 

短評

 
 クリアまで約40時間ほど。FFシリーズなのに一部ブレス・オブ・ファイアⅤやアトリエシリーズベイグラントストーリーのコンセプトを想起させるようなシステムで、見た目は派手なのに志向しているものは渋いというアンバランスさが特徴のシンボルエンカウントRPG。バトルシステムはシリーズでもかなり上位の出来なのに、全体的にシステム群がぎくしゃくしてうまく噛み合っておらず、やや歪な印象の作品になってしまっている。
 
 
 

ブレス・オブ・ファイアⅤ+アトリエシリーズ+強くてニューゲーム=歪なゲーム

 
 ブレス・オブ・ファイアⅤのように攻略に詰まるか制限時間を迎えたら最初からやり直しという周回プレイスタイルをベースにしながら、そこにアトリエシリーズのような複数の同時進行するクエストを管理する要素や、ゲームを最初からやり直す際にステータスの成長分を持ち越せる強くてニューゲームを足すという、とてもFFシリーズとは思えないシステム構成で、最初はかなり戸惑いました。さすがにブレスオブファイアⅤのように初回プレイでは到底クリアできず、複数回のやり直しを強制される、というほどの難易度ではなく、やや手こずる敵もいるものの1週目でも普通にクリア可能です。
 
 ゲームにタイムリミットが設定されており、否応なく制限時間を意識させられるというFFシリーズの中ではかなり窮屈とも取れる異質なプレイ感覚のシステムな上に、それに付随するシステム群がいまいちベースのコンセプトをアシストできておらず、終始ぐらぐらして安定しない座りの悪さのようなものを覚えます。
 
 ゲーム内には自由に移動可能な4つの広大なエリア(エリア内はシームレスで移動可能)があり、それぞれにメインクエストとサブクエストが設定されており、それぞれのエリアのメインクエストをこなすというのが目的です。攻略順はプレーヤーが自由に決めてよく、ゲーム内時間によって発生するクエストのタイミングが異なるため、あるエリアで19:00に発生するクエストまでは違うエリアを探索して時間を潰そうなどと、エリアごとのメインクエスト発生時間を考慮しながらプレイの計画を立てます。ただ、制限時間がある割りにはゲームのテンポは非常にのんびりしており、別段メインクエストやサブクエストを同時進行させるのにてんやわんやするということもなく、かなり適当にプレイしてもメインクエストは簡単に達成可能で、やや拍子抜けでした。
 
 このゲームテンポの不要なのんびりさが、なぜか制限時間というプレーヤーに対するプレッシャーをわざわざ用意しているわりに生じてしまっており非常に不快です。本来はもっとシステムの志向的にハードスケジュールで忙しくないとおかしいはずなのに、システム的に実現しなければならないテンポ感と実際のゲームをプレイしている際のテンポが噛み合っておらず、コンセプトがぶれている様で気持ち悪いです。
 
 
 

惜しい成長システム

 
 今作は敵を倒しても経験値が得られず、そもそもレベルという概念もありません。メイン・サブクエストを達成することで、直接HPや物理攻撃力・魔法攻撃力が上昇していくという変わった成長システムを採用しており、そのためメインクエストはもちろんのこと、サブクエストも積極的にこなしていかないとステータスが上昇してくれません。なのでメインクエストの合間にも時間が許す限りサブクエストに取り組むのですが、これが若干作業感が強く、飽きてきます。確かにクエストクリア=即ステータス上昇という非常に魅力的なインセンティブのため、ただお金が貰えるとか、少量の経験値が貰える程度のよくあるサブクエストに比べるとモチベーションは高めなものの、いかんせん成長の自由度が皆無で、ただ決まったステータスが上昇するだけなので、主人公のライトニングを成長させているという実感がいまいち湧きません。
 
 経験値やレベルという概念を無くし、クエストクリアに成長要素を連動させてしまうというアイデアは、今作と同じで経験値もレベルもないベイグラントストーリーの、ボスを倒すとルーレットでステータスがランダムで上昇するというシステムを想起し、嫌いではありません。特に今作は戦闘しなくても達成可能なサブクエストも多く、海外のRPGと同じで非戦闘系のサブクエストをこなしてもステータスは上昇するため、戦闘一辺倒にならず、プレイに幅が生まれ好印象でした。ただ、上記したように、クエストクリアと成長を連動させるというコンセプトはそのままで、もう少しスキルツリーなり、FFシリーズなのでスフィア盤でもクリスタリウムでも何でもいいのでプレーヤーが介入可能な自由度の高い成長システムさえ用意できていれば満足度は跳ね上がっていたのに勿体ないです。
 
 
 

防御は最大の攻撃

 
 FFシリーズではオーソドックスなATBゲージを用いたリアルタイムなもののアクション性はなくコマンド選択のターン制に近い作りだった13や13-2と異なり、今作からATBゲージはそのままにスターオーシャンやテイルズ・オブシリーズのように戦闘中にプレーヤーがある程度バトルフィールド内でキャラを操作可能なアクション性を持たせたタイプに変更されました。ただ、移動速度が極端に遅く、攻撃もボタンに割り振られたアビリティを入力すればほぼ自動的に行われるのでアクション性といってもガード以外はほとんどオマケのようなもの。
 
 今作も10-2のドレスフィアシステムの応用系という13シリーズのバトルシステム路線を踏襲してはいるものの、やや落とし穴があり、13や13-2をプレイした後だと、前二作の記憶がシステム的なミスリードになり、苦労します。それは何かと言うとガードです。13や13-2はどちらかと言うと攻撃主体のバトルシステムで、ひたすら相手をブレイクするため攻撃しまくる様な仕様でしたが、今作は攻撃以上にガードが重要になります。
 
 自分は当初これが分からず、最初の数時間くらいは攻撃メインの戦い方をして無駄に回復アイテムを消耗していましたが、途中で「敵を早く倒そうとするより的確に攻撃をガードするほうが有利なんだ!」と気づき、敵の動きを観察し、攻撃に移る前の予備動作に反応し素早くガードに意識を切り替えるというスタンスに変えると被ダメージ量が大幅に減少し、ラクになりました。
 
 13や13-2は一時的にディフェンダーにロールチェンジして猛攻を凌いだり、HPが減ったらヒーラーにロールチェンジして回復できたり、そもそもバトル終了後にHPが自動で全回復する仕様のためさほどHPを温存するという発想がありませんでしたが、今作はバトル終了後のHPの自動回復は無く、回復アイテム所持数もそれほど多くないため、ほとんどの攻撃をガードすることが必須となるバランスです。感覚としてはモンスターハンターに近く、敵が攻撃に移ろうとしているのにひたすら張り付いて攻撃ばかりしていたら敵の攻撃に巻き込まれ大ダメージを喰らうのは当たり前で、攻撃を一発でも多く叩き込もうとするより、相手を観察し、いかに攻撃を防ぐのかのほうが重要になります。
 
 
 

ベイグラントストーリーになり損ねたバトルシステム

 
 13と13-2におけるロール(FFシリーズでいうジョブのようなもの)が今作ではスタイルというものに変更されました。これはパーティメンバーがいなくなりライトニング一人だけでの戦闘になったため、これまで各キャラに分散されていた役割を一人でこなせるよう、ロールの設定を細かく弄れるようにしたようなシステムです。ウェア(コスチューム)と武器・防具・アクセサリー・アビリティをそれぞれスタイルごとに設定し、これを3つまで登録することで、戦闘中3つのスタイルを自由にいつでも変更可能となり、これらを敵や状況に応じて高速に切り替えながらのバトルが基本となります。
 
 物理攻撃が有効な敵には物理攻撃重視のスタイルをぶつけたり、属性攻撃が有効な敵には有効属性のアビリティ(ファイアやサンダー、ブリザドなど)を持つスタイルに交換したり、強力な攻撃を防ぐためにガード性能に特化したスタイルに交換したり、など。それぞれのスタイルには個別のATBゲージが設定されており、これが丁度スタミナゲージの役割を果たし、ATBゲージを使い果たしたら他のスタイルに交換し、またATBゲージがなくなったら交換……を延々とローテーションしていくシステムです。ATBゲージは控えの状態になると高速で回復するため、1つ使用中に他の2つは高速で回復し続け、ほぼストレスを感じさせないスタイル交換が可能。
 
 このシステムに触れて自分が一番初めに連想したのがベイグラントストーリーの武器交換システムでした(次いでペルソナ)。敵の弱点などに応じて武器を交換しながら戦うというシンプルなのに快感が伴うベイグラントのバトルシステムがハイスピードバトルに進化したような錯覚すら覚え、最初は嬉しかったのですが、プレイしているとやはり力点の置き所がずれていることに気づき、ベイグラントほどは好きになれませんでした。
 
 今作のバトルにおける最大の問題は一部の敵のバカみたいな固さです。この世の中のあらゆるバトルシステムの魅力を殺し尽くす、バトルの面白さをウリにするゲームにとって最恐最悪の天敵である固い敵が、今作のベイグラントに匹敵したのではないかと思える魅力的なバトルシステムを見事に破壊しています。
 
 同じ敵を何十回も何百回も攻撃させられ、同じ戦闘中にノックアウト状態という前二作におけるブレイクのような防御力が激減する状態に2回も3回も4回もしなくてはならず、もううんざりです。国産ゲームの敵を固くしてバランスを調整するという病理によって魅力的なバトルシステムが殺されてしまっています。
 
 弱点を攻撃することを重視するシステムなら、ベイグラントの種族値や属性値のような弱点攻撃時のダメージ量を増加させるようなステータスが別個欲しかったとか、属性攻撃を強化するエンチャント系かステータス強化系のアビリティも欲しかったとか、もうそんな細かい願望を抱くのもバカバカしくなるくらい敵の固さで疲れ果てました。
 
 この世の中から敵が固くて難儀するゲームがなくなることを願うばかりです。
 
 
 

不満あれこれ

 
 本来ならFF13-3と付くはずのFF13シリーズの三作目ですが、13や13-2のコンセプトを継承するかのようにプレーヤー完全置いてきぼりのストーリー展開で、もはや話を理解できようができまいがあまり作品評価には関係ないのではないかと思えるほどシナリオは酷いです。
 
 なぜFF13シリーズは安定してこれほどまでに低クオリティでダサい演出やら、1ミリたりとも興味を持てないどうでもいいノイズなだけのストーリーを産み出せるのか本気で考えさせられました。一体どこの誰に向けてこの物語は紡がれているのか本当に謎です。
 
 
 

まとめ

 
 基本のバトルシステムは魅力的で、システムも全体的には完成度は高くないもののこれまでのFFシリーズとは違うことをやろうと挑戦しているので、あまり悪い印象は覚えませんが、ダメな部分がとことんダメなので、とても手放しでは褒められない珍作です。
 
 
 

余談

 
 順番が発売日と逆になってしまいましたが、先にプレイしていたテイルズ・オブ・ゼスティリアは今作に非常に大きな影響を受けたのだということが分かりました。国産RPGと海外RPGエッセンスをミックスさせようとして従来の持ち味から逸脱しやや歪になっている点や、敵の弱点を突くためにパートナー天族をリアルタイム交換しながら戦うバトルシステムなど、今作と酷似する点が多いです。
 
 突然テイルズっぽくなくなり驚かされたゼスティリアの変貌の謎が分かりスッキリしました。
 


 
 
 

ウィッチャー3/ワイルドハント(steam版)

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トレーラー

 
点数:95点
 
 

短評

 
 そつなく、抜かりなく、奇策を用いず、正攻法だけでRPGの王座まで上り詰めた大傑作オープンワールドアクションRPG。シリーズの核となる要素を大切に育み進歩させながら、流行りのシステムも取り入れ遊びやすさへの配慮も欠かさず、ハードなダークファンタジーに優雅さまでもが加わり、一切の隙がない完成度を誇る。
 
 
 

RPG界の優雅さを纏った成り上がり貴族

 
 まず最初にプレイを開始した直後、見知ったはずのシリーズの驚異的な変貌ぶりに度肝を抜かれました。それは、グラフィックが綺麗になったとか、オープンワールドになってマップが広くなったなどという表面的な部分では片付けられず、一年前は訛りのきつい土臭い純朴な田舎者だったのに再会したら流暢な会話術を身に付けた社交界の花形貴族に化けていて、でも根は純朴のままというような、2まではそれほど備わっていなかった作品の格調高さ・優雅さが桁違いに増し、作品の肌触りがゴワゴワしていた1や2と異なり、上質なシルクのように滑らかになった点です。
 
 1も2も完成度は高いものの野心的な部分が多く、やや癖があり捻ったシステムで一部の層を狙いすましたようなバランスに落ち着いていましたが、今作は万人を優雅さだけでねじ伏せられるほどの気品を獲得しており、作品の訴求力が数十倍くらいは跳ね上がりました。それなのにも関わらず、1や2で丁寧に築き上げてきた独自性はまったく失っていません。結果、ウィッチャーシリーズの独自性は維持したまま、そこに訴求力だけが大幅にプラスされるという理想的とも思える仕上がり具合で、軽い奇跡を目の当たりにして目が眩むようです。
 
 これは、それまでは一部のファン層だけが楽しんでいればいいだけのアメコミ原作映画に圧倒的なブランド力をプラスして見せたマーベルのアベンジャーズシリーズを連想しました。取り分け、アメコミ原作映画としてはエンタメ性を確保しつつアメコミ特有の濃い政治性も逃げずに盛り込みそれらを高い水準で両立させ、完成度がアメコミ原作映画の枠に納まらない次元まで到達してしまったキャプテンアメリカ/ウィンターソルジャーを見た際の「アメコミ原作映画って凄い領域まで来たな……」という感動と同質でした。
 
 1や2を好むような一部の層に好かれていればいいという安易な妥協をせず、かといって自分たちが築き上げてきた作品の独自性を薄めることもせず、自信を持って癖を残しつつ幅広い層に訴えるための遊びやすさの追及にも手を抜かないという、両立困難な二つの事柄を成立させてしまった作り手の高い高い志に頭が下がります。
 
 
 

プロフェッショナルのモンスタースレイヤーというアプローチ

 
 海外のハイファンタジーRPGは正直どれも大量の設定で世界観を補完していくだけの指輪物語もどきにしか見えず、ゲームとしての完成度が突出しているようなケースを除きさほど興味を惹かれることはありませんでした。しかし、今作はありがちな指輪物語タイプのそれとは一線を画し、ウィッチャーという怪物退治専門のプロの描写を突き詰め、それをシステムにまで落とし込むことで他のハイファンタジーRPGから頭一つ飛び抜けることに成功しています。歴史や地理のお勉強のごとくダラダラ長ったらしいドキュメントを読まされ意味が分からない固有名詞を暗記させられ世界観設定をマクロ的に補完して厚みを持たせるのではなく、聞き込みで得た情報や、遺体の検死、事件発生場所の調査でモンスターの痕跡を発見しそれを追跡し排除するプロフェッショナルとしての描写に力を入れることで、地を這うようなミクロの視点から自然に世界観を肌に擦り込んでいくというスタイルの徹底が心地いいです。
 
 2は王殺しの犯人に仕立て上げられた主人公ゲラルトが自らの潔白を証明するため王殺しの真犯人を追跡するというかなり政治性が強くかつ自由度の少ないリニア型で窮屈な作りでした。しかし、広いオープンワールドでのびのびと怪物退治ができるようになったことでよりフリーランスの害獣駆除のプロとしての立ち位置が強化されるという、シリーズのオープンワールド化が非常にプラスに働いた好例だと思います。政治とある程度距離を取ったことでモンスタースレイヤーとしてのウィッチャーの仕事を縛り付けていたリニア型という枷から解放され、オープンワールドの世界でより活き活きとした放浪者としての在り方を手にすることができました。戦略性があまりなく、オープンワールドが目的化しているだけのシリーズが多い中で、これほどオープンワールドになったことで秘めていたポテンシャルが解き放たれ魅力が飛躍的に向上した作品も珍しいです。
 
 世界観の厚みを押しつけるのではなく、ウィッチャーとして報酬と引き替えに怪物を退治したり困っている人を助けたりとプロの仕事を淡々とこなすことで、自然とこの世界の中での自分の立ち位置を学び、世界を徐々に理解していけるという姿勢は、非常にこのシリーズらしいアプローチで感心させられます。
 
 
 

ウィッチャー3/ワイルドハント改めグウェント/ワイルドデュエル

 
 序盤ゲーム本編とはまったく関係ないところで苦労させられるのは尋常ではない中毒性を持ったミニゲームであるグウェントというカードゲームです。このグウェントで用いるカードがお店で売っているため、序盤は2に比べてお金を入手しづらく、かつ武器や防具に耐久度が追加されたせいで頻繁に消耗した装備を修理するために出費を強いられるのに、グウェントが楽しすぎて、ほぼ全財産をカード購入代金に奪われ、金欠状態が続きます。
 
 このグウェントが楽しすぎるため、メインクエストそっちのけでグウェントがプレイ可能なNPC(宿屋の主人や商人など)を探し回ったり、サブクエストもグウェント優先で、新しいカードを入手するためひたすらグウェント勝負を挑み続けるという状態が続き、物語の目的を見失うことが多々ありました。
 
 ここまでシンプルなルール設定で駆け引きが楽しいと思えたカードゲームはアイ・オブ・ジャッジメント以来かも。アイ・オブ・ジャッジメントも朝から晩まで暇さえあればオンライン対戦に明け暮れていましたがそれクラスのカードゲームがミニゲームとして収録されているのかと思うとその豪華さに驚愕させられます。
 
 2のサイコロポーカーもお手軽で楽しかったですが、今作のグウェントはそれを完全に凌駕しています。メインクエストで知り合いがピンチで現場に駆け付けなくてはならないという緊迫した場面の移動途中で未発見だった商人を見つけてしまい延々勝つまで何度も何度も勝負を挑み「危機に瀕した友人をほったらかしてなんでグウェントやってるんだろう・・・・・・」という罪悪感に苛まれたことが何度かありました。
 
 
 

システムの長所・短所

 
 バトルシステム周りは基本的には2の延長線で、2をクリアしていればさほど困ることはないものの、細かい変更点も多く、慣れるのにはやや苦労しました。
 
 まず、ウィッチャーのバトルシステムの基本中の基本である霊薬やオイルの仕様が変化した点。武器に塗るオイルは制限時間制から回数制に変わった程度で、霊薬に比べるとほぼ2と変わらない感覚で使用可能。後は、2で消費アイテムだった霊薬・爆薬(罠がなくなり罠の効果は爆薬に一元化)が補充制アイテム(オイルは無限に使いたい放題)となり、一度クラフトしてしまえば無くなることはなく、瞑想すれば勝手に特定のアイテムを消費して上限まで補充されるため、より残量を気にせず使いたい放題使えるように。
 
 大きく変わったのは霊薬周りで、2とは異なり、瞑想中でなくとも霊薬使用が常時可能という一作目に近いタイプに変更されました。それプラス2における霊薬と似たような中毒度(霊薬を使うと増加し、上限まで達すると新たに霊薬が使用できなくなるゲージ)を一定量占有するものの効果時間が非常に長く続く変異抽出液という通常の霊薬とは異なる仕様のものが追加され、丁度1と2の霊薬システムを足して2で割ったようなバランスです。
 
 ドラゴンエイジのMPやスタミナを占有して効果を常時発動させ続ける持続系タレント(スペル)のように、中毒度を大幅に占有する変異抽出液を使用し、余った中毒度を用いて短期間効果を発揮する通常霊薬をやりくりするというスタイルになったことで、常に中毒度や使用中の霊薬に意識が向くようになりました。中毒度の上限を上げれば上げるほど常時使用可能な変異抽出液の数が増えたり、戦闘中に通常霊薬を使いまくれたりと、ここは霊薬使用に良い意味で気を遣わされ好感触です。
 
 ただ、問題は2と異なり霊薬や錬金術アビリティによって戦闘中のライフ回復が容易になってしまったことで、バトルがゴリ押し可能となり、2とは比べものにならないほど戦闘の難易度が下がった点。今作は4段階の難易度があり、最初はノーマルくらいかなと思い下から二番目のストーリー&バトルという難易度を選んで進めていましたが、あまりにもバトルが簡単すぎて歯応えがないため結局途中から最高難易度のデスマーチまで上げましたが、それでもまだ2の難易度ノーマルに届きすらせず、中盤以降はほぼ死亡することもなく、ラスボスもまったく苦戦すらせず勝ててしまい、拍子抜けさせられました(さすがにDLCをやると手こずりはします)。
 
 今作は錬金術アビリティがあまりにも強力過ぎます。変異抽出液を使用するとライフ上限を大幅に上げるものだったり、霊薬を使用すると種類に関わらず無条件で体力を回復してくれるものだったりと、錬金術アビリティを強化していくとライフ上限が上がり、それに付随して回復量も増加(%で回復するため、ライフ上限が上がると霊薬による回復量も比例して上昇)するため、システムに慣れさえすればよほどレベルが高い敵と遭遇でもしない限りは苦戦することはなく、死にゲーに近かった2の緊張感は消え、ただひたすら回復しながら攻撃していれば勝ててしまうバランスに。
 
 中毒度を変異抽出液と通常霊薬でやりくりするというシステムは面白いし、バトルはスピーディで爽快感が向上し進化しているのに戦闘中の回復を容易にしたことでバランスが壊れ気味で、回復を制限していた2のほうが遥かに歯応えがあり一戦一戦に緊張感がありました。アクション性が大幅に強化された爽快感のあるバトル演出を体験するとさすがに2のほうが良いとは思えませんが、2の一撃一撃が致命傷となる攻撃の重みが少し懐かしいです。敵が2に比べやたら固くなって倒すまで何発も何発も攻撃を加え続けなければならなくなったのも戦闘がいちいち間延びして面倒でした。
 
 その他良くなった点としては、2にはなかったディアブロ3の影響であろう武器・防具のレベル制の導入により、常に不完全な装備を今のレベルに見合ったものに交換したいという欲求を抱かせ強力なインセンティブ要素にしていたり、霊薬やオイル、爆薬をクラフトでアップグレードしていけるので素材探しに躍起になったり、マップ上にレベルアップした際に得られるアビリティポイントを発見しただけで無償で貰える魅力的な場所を設置することでオープンワールドの広いマップを探索する際のモチベーションを強化していたり、そもそもグウェントのおかげでグウェントが可能なNPCを探すためマップ中をカードを求めて彷徨ったりと、2に比べるとメインクエスト以外のやり込み部分の遊びやすさが大幅に向上し、中毒性の高さは別次元です。
 
 
 

不満あれこれ

 
 今作最大の欠点はやはりオープンワールド化の重い代償であろうロードの長さです。軽く2の5~10倍くらいはロード時間が増えたため、ちょっと手前のセーブポイントからやり直そうとしただけで膨大な時間待たされ、常に苦痛が付き纏います。フォールアウト4も傑作だったのに、ファストトラベルのロードの長さに堪え兼ね50時間くらいプレイしたところで嫌になってやめてしまったこともあり、今作もあっさり興味が失せてしまわないかと冷や冷やしながらプレイしましたが、とりあえず頻繁に行う同一エリア内のファストトラベルはロードが最低限なことで何とか我慢できました。ただ、どうしても手前のチェックポイントから手動でロードしたり、ロードが発生する別エリアへの移動など、煩わしいことを無意識的に避けようとして行動が制限されるのはいい気分はしません。
 
 後は、ロードの長さに比べると些細なことですが、移動周りは距離が長い割には、アサシンクリードやダイイングライトのパルクールや、グランドセフトオートの乗り物移動のように移動そのものに快楽性を持たせるといった工夫がされていないため、やや単調に感じました。今作はアイテムは重量制で持ちきれなくなったら店に売りに行かなければならなかったり、武器や防具に耐久度が設定されたため、頻繁に修理のため鍛冶屋に出向く必要があったり、そもそもおつかいクエストが多く街中あちこち走らされたりと、やたら滅多に移動を強いてくる割にあまり快適さが確保されていないため、移動が億劫に感じることが多いです。いちいちファストトラベル地点から店の場所が微妙に離されているのも、もしかしたら綺麗な景色や作り込んだ街並みを鑑賞して欲しくてあえて歩かせているのかと勘繰りたくなります。
 
 さらにこれも微々たる程度の不満ですが、2と同じでそこら中に火を灯せるオブジェが設置されており、ウィッチャーが火を自在に操れるということの表現と、ライティングの美しさの強調と、後は単純に暗い場所を照らすための用途なのでしょうが、とにかくアイテムが入手できるオブジェの近くにあることが多く、ボタンを連打してアイテムを入手していると勝手にカーソルがあってしまい頻繁に火を付けたり消したりのループに入るためイライラするのでいい加減止めて欲しいです。
 
 
 

まとめ

 
 ゲームの一つ一つの要素だけ取り出してみたら好みな部分はそれほどないのですが、全体として評価しようとした場合、あまりの隙のない高水準なまとまり具合に賞賛以外の選択肢がそもそも存在しないという、個人の嗜好に合う合わないを超越し、ただただ到達した完成度の高さだけに圧倒される大傑作。
 
 
 
前作


 

デュエル!!


 

 
 

 

ウィッチャー2/王の暗殺者(steam版)

 

OPムービー

 
点数:85点
 
 

短評

 
 クリアまで約30時間ほど。一作目の余計なシステムの出っ張り部分を研磨し滑らかにした結果見違えるほど遊びやすさと楽しさが増した。話が途中から始まり途中で終わるという余韻がかなりのマイナス要因なものの、非常に出来のいいバトルシステムが魅力のハードなダークファンタジーアクションRPG
 
 
 

正統進化を遂げた続編

 
 今作をクリアした後に比較のため一作目をプレイし直すとそのあまりの煩雑なシステムやメニュー画面の見辛さに「ウィッチャー(一作目)ってこんなに分かり辛くて雑なゲームだっけ?」と、頭の中にあるそこそこ面白かった前作の記憶との乖離に困惑させられました。
 
 この作品単体だけで見たらお世辞にも分かりやすいと言えるほど取っつきやすくはないですが、前作との比較で見た場合、ベースのコンセプトはそのままに、システム部分が格段にシンプルかつコンパクトにまとめられており、これを一度味わうともう前作をやるのが嫌になります。
 
 PC専用でキーボード&マウスオンリーだった前作に比べゲームパッド対応となったことで、ドラゴンエイジディアブロ3のコンシューマ版のようにUIが刷新され、より直感的に遊びやすくなり、大変好ましい仕上がりに。
 
 ウィッチャーらしさを感じさせる、戦闘中に体力回復が容易にできず、バトルよりも事前のセッティングや戦術に重点を置いている点や、霊薬(ポーション)をクラフトさせるためにフィールド中にクラフト素材が大量に存在する点、章が変わると舞台となる街や場所が移り、雰囲気がガラッと変わるというディアブロ2を彷彿とさせる作りな点、発生した事件を最後まで丁寧に調査して真相に辿り着いてもいいし、面倒なら適当に片付けてあやふやなまま先に進んでもいいという選択がプレイヤーに委ねられる点などは前作と同じ。
 
 変更部分は、タイミング良く目押しでボタンを押すことによって連続攻撃を繰り出すという癖のあるバトルシステムがよりシンプルでオーソドックスなリアルタイムバトル型になっていたり、霊薬(ポーション)のクラフトが焚き火でしか出来なかった仕様を改めどこでも可能にしていたり、アイテムが種類ごとに最初から分類され見やすくなっていたり、スキルツリーが武器や能力ごとに別個だったものが一元化されて見やすくなっていたりと、どれもこれも快適さを増すことに貢献しているため、前作の取っつき辛さが嘘のように劇的に改善されています。
 
 
 

ただそこには選択と結果のみが存在する

 
 これは一作目のゲーム開始時に表示される文言(日本語化した場合)ですが、この言葉がウィッチャーという作品のスタンスであり、海外のRPGが志向する方向性そのものを示唆していると思います。
 
 ゲーム側は善と悪をあえて定義しない。それによってプレイヤーが選択した結果が正しいのか間違っているのか判断が付かないもどかしい心理状態を作ることこそが目的であり、ストーリーとはこのような心理状態を作り出すための装置の一つに過ぎないという割り切った姿勢が今作からも垣間見えます。
 
 ゲームがプレーヤーを接待することを止め、一見正しいことをしても褒めては貰えず、明らかに間違ったことをしても叱ってもくれず、結果に過剰な意味を持たせない。何をやっても綺麗に片付くことはなく、常に苦い余韻だけが付いて回る。ストーリーはゲームから与えられるのではなく、納得し辛い展開に直面したことによって生じる苦悩の中からプレーヤー自身が掬い取るナラティブなもの……これは海外のハードなダークファンタジー志向のRPGにはよくあるアプローチですが、今作もこのスタンスが徹底されており、物語的なカタルシスとは距離を取っています。
 
 自分は極端なサスペンス好きなので、本音を言えば国産RPGのようなクリフハンガーが強めのストーリーでぐいぐい引っ張って欲しいタイプで、あまり海外のRPGの志向する姿勢は好みではなく、おまけに似たようなアプローチの作品が多すぎてやや食傷気味ですらあります。ただシステムのつまらなさを誤魔化すこともできてしまう安易なサスペンス性や物語的カタルシスと距離を取り、プレイヤー側にゲームシステムからもたらされる確かな手応えを味わって欲しいという、自己に対する厳しい姿勢は理解できるので、これはこれでゲームとしては非常に真摯な態度なのだと割り切ることにしています。
 
 その点今作はシステムに厚みがあり、多少物語が味気なくても最後までシステムの魅力でプレイさせる力を持っているため、途中で飽きることは一切ありませんでした。
 
 
 

選択と結果を楽しむシステム

 
 一作目がバイオウェアゲームエンジンで作られ、今作もそれをベースに独自開発されたエンジンを使っていることと、そもそもRPGとして目指している方向性が似ているということもあり、非常にバイオウェアドラゴンエイジシリーズと似た感触です。ハイファンタジー作品へのアプローチが会話ベースで似ていたり、ザコ敵戦でも平気でゲームオーバーになる死にゲーに近いバランス設定など、既視感を覚える箇所が多く、そのせいであまり目新しさを感じられないのは残念ですが、ドラゴンエイジと比べると圧倒的にシステム密度が濃く、システムの面白さでぐいぐい引っ張っていってくれる分、プレイしやすかったのは今作のほうでした。
 
 シナリオ面と同様、システムも「○○してもいいし、しなくてもいい」という姿勢が徹底されています。死にゲーに近いゴリ押しで勝つには厳しいバランスのバトルシステムを中心に据え、ステータス上昇や特殊効果を付加させる霊薬(ポーション)・武器・(武器に塗る)攻撃力強化用のオイル・罠などをクラフトする要素や、スキルツリーによる剣・魔術・錬金術(霊薬・罠などの効果を強化する)のどれを成長させていくのかを選ばせる成長要素など、高い水準の完成度を誇るシステムが強力なインセンティブをもたらすため、終始プレイが楽しくて仕方ありません。
 
 しかも、どのシステムも押しつけがましさがなく、クラフトが面倒なら店でほぼ同じ物が購入できるし、何がなんでもテクニカルな戦い方を要求してくるのではなく、事前に霊薬を飲んだり武器にオイルを塗ると戦闘がかなりラクになるという程度で、戦闘前の準備を面倒と感じるならゲームオーバー数は増えるものの、それをすっ飛ばして強引に攻めても勝てる緩さは許容してくれるしと、どこを取ってもシステムのバランス感覚が絶妙です。苦労すればするほどそれに見合う程度には戦闘がラクチンになりますが、だからといってそれを押しつけてくるということもないという、これほど心地よいバランス調整がされたRPGは珍しく、惚れ惚れします。
 
 敵との戦闘も毎回驚くほどあっさり終わるためテンポが非常に良く、むしろもっと戦いたいのにあっさり終わり過ぎて不満なほど。ひたすら敵を固くしてダラダラと戦闘を長引かせる様な愚かなことはせず、ザコもボスも腹八分なバトルボリュームを維持し続けるので常に敵に餓えた状態で戦闘が作業化することがありません。
 
 自分はクラフトや、クラフトで作った霊薬を飲んでステータスを強化して戦うというウィッチャーシリーズの面白さを一番引き出せるのではないかと考え、スキルツリーの成長はほぼ錬金術ルートに絞ってプレイしましたが、これが大正解でした。霊薬や武器に塗るオイルの効果が大幅に強化されるため、ほとんどザコ敵は霊薬を飲んだりオイルさえ塗れば苦労せず数発の攻撃で倒せますが、霊薬やオイルの効果がないと途端に戦闘が厳しくなるため、勝ち負けの原因がハッキリし、システムによってもたらされる効果が肌感覚で理解できます。
 
 一応アクションRPGですが、アクションはほとんどオマケ程度でRPG寄りのバランス調整がされており、プレイヤーがどの方向に力を注いだかが結果としてダイレクトに反映されるため、ベイグラントストーリーすら彷彿とさせるほど一撃一撃の攻撃に快感が伴います。なぜこの一撃はダメージが大きいのか、なぜこの一撃はダメージが少ないのかが明解に説明できるため、大ダメージを与えられるのは自分の工夫によるものだと素直に喜べ、戦闘の快楽性が高いです。攻撃力が高い武器を装備すればその威力をステータスの数値だけでなく、戦闘中に実感でき、霊薬を飲んだりオイルを塗ればその強化分しっかりダメージ量が上がり戦闘がラクになるという、バトルシステムをウリにするRPGなら基本中の基本部分である一撃一撃の攻撃充実度が非常に高く、ただ敵を攻撃するだけで楽しいという理想的なバランスに仕上がっています。
 
 攻撃一辺倒のゴリ押しでは難しいため、魔術や投擲アイテム、罠を混ぜながら隙を作り、そこに霊薬やオイルで強化した重い一撃を喰らわせる……やっていることはシンプルなのに、得られる快感は絶大で、この遙かに進化を遂げたバトルシステムの魅力のおかげで今作は前作を凌駕することに成功しています。
 
 
 

不満あれこれ

 
 まず、前作と同じでオープンワールドではないですが、かなりマップが広めなのにも関わらずナビゲーションシステムが不親切で、一部クエストでどこに行けばいいのかナビゲーションしてくれないものがあり、マップ中をひたすら探し回らなくてはならずきつかった点。ここは前作からあまり改善されていません。
 
 後、今作一番の問題は話が途中から始まり途中で終わるという構造のため、クリアした後の余韻が極端に味気ないこと。ゲームの作り自体がカタルシスを避けるタイプなため、もちろん盛り上がりなどほとんどないままフェードアウトするように終わり、クリアするまでは熱中していたのに、クリアした途端作品への興味が急激に冷めてしまいます。一応主人公にかけられた王殺しの汚名をそそぐという当初の目的自体は解決されますが、映画の三部作のうち二作目のような余韻を果たしてクリアするまで30時間かかるゲームでやっていいのかという疑問のほうは晴れません。もしこれをやるならもう少し今作単体で何か大きな事件が解決したような満足感を覚える作りにするべきです。これまで30時間の長い旅をしてきて最後は何も解決せず次回へつづくで締められた後の虚しさと徒労感だけが募る余韻ではとてももう一回やり直そうなどと思えません。三部作であるゼノサーガのエピソードⅠ・Ⅱなどはちゃんとそのエピソードだけでもすっきりするようなドラマが出来ていたのに、今作はそこら辺の配慮が欠けています。
 
 海外のゲームはどれもラストの盛り上がりを重視せず、気付いたらラストステージだったり、酷い場合はさっき倒した中ボスっぽいのがラスボスだったと後で気付くというケースもザラにありますが、今作もそれらと似ており、途中から始まり途中で終わるだけの別段意味もない話に30時間付き合わされた挙げ句脱力感だけを残して終わります。
 
 
 

まとめ

 
 バトルシステムは非常に自分好みな出来でクリアするまでは大変熱中していましたが、クリア後は若干時間を損したような気分に陥る困った余韻の作品です。
 
 
 
続編

 
 
バトルが面白いRPG

 
 
 

 

 

ウィッチャー2

ウィッチャー2

 

 

Momodora(モモドラ)/月下のレクイエム(steam版)

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トレーラー


点数:90点
 
 

メモ

 
フルスクリーンにすると画面が真っ暗になり映らなくなったため、
ドライブ→ユーザー→ユーザー名→AppData→Local→MomodoraRUtM→config.iniをメモ帳で開きzoomの部分の数値を4から別の数値に変更してプレイ
 
 

短評

 
 クリアまで約5時間ほど。デモンズソウルやダークソウルを連想させる極上の敵配置とマップ構成のバランス感覚。ベイグラントストーリーの魔都レアモンデのごとき、音楽と美術がデカダンスな灰色の彩りを添える官能的な舞台。アクションゲームとしての完成度だけで万人を平伏させる作り手の確かなゲームセンス。センスオブワンダーな目新しさは皆無なものの、過去のマスターピースアクションゲーム達の最良の遺伝子を濃密に継承した、メトロイドヴァニア型2Dアクションゲームの一つの究極系である大傑作。
 
 
 

我が血肉となりし傑作たちと同種の香りや味わい!

 
 今作をプレイ中、湧き上がってくる感覚は過去の傑作アクションゲームをプレイした際の興奮や感動、幸福感でした。ここにはスーパーマリオワールドがあり、イースがあり、ロックマンXがあり、スーパーメトロイドがあり、ダークソウルがあり・・・・・・作り手の過去の傑作アクションゲームへの愛がシステムから滲み出ているため、言葉など用いずとも、ただプレイするだけで好きな作品を共有し、繋がった気分になれます。
 
 作りは非常にシンプルイズベストな死にゲースタイル。メトロイドヴァニア型ということでスーパーメトロイドやラ・ムラーナのように途中で謎解きに詰まりうろうろさせられるのかと身構えていましたが、マップを開けば未踏破エリアが大体分かるため、ラスボス戦の強制バッドエンドで面喰らった以外は、ほぼ迷うこともなく快適でした。
 
 今作は基本のアクション部分の出来が良く、二段ジャンプ・距離の長めなローリング・空中ダッシュ(途中から)・近接攻撃・弓での遠距離攻撃・弓のチャージショット(途中から二段階チャージ)など、何度繰り返しても飽きづらい耐久性の高い抜群の操作性で、欠点らしきものはほぼ皆無。
 
 それどころか、途中からロックマンXを連想させる弓のチャージショットが可能となると、シューティングゲーム的な面白さまで強化され「一体このゲームはどこまで面白くなれば気が済むんだ!」と思うほど圧倒的な中毒性で虜になります。(チャージショットが可能になるということとチャージショット回数が増えるということをごっちゃにしていました)
 
 途中からロックマンXを連想させる弓のチャージショットのチャージが二段階に増えると、シューティングゲーム的な面白さまで強化されだし「一体このゲームはどこまで面白くなれば気が済むんだ!」と思うほど圧倒的な中毒性で虜になります。
 
 基本のアクションが良くできているだけでも大したものなのに、今作はさらにシステムがアクション性を強力にバックアップする作りです。まず、シャイニングフォースイクサやダークソウルタイプの回復アイテム補充制を取っており、アイテムが補充可能な次のセーブポイントまでやりくりして持たせなくてはならず、回復アイテムが心許なくなると無駄なプレイが許されなくなり緊張感が生まれます。
 
 アイテムもアクティブアイテム(使い切りの消費アイテムではなく補充型で、回復アイテムもこれ)とパッシブアイテム(装備すると効果が常時発動)という二種類があります。これらを組み合わせることで戦術にバリエーションが生まれ、同じアクションを繰り返し続けるというマンネリを回避する機能を果たすことに。さらに、敵を倒したり宝箱から入手できるお金でNPCからアクティブ・パッシブ両方のアイテムを購入できるため、敵と戦うということにも終始お金稼ぎというインセンティブが存在し続けるため、敵との戦闘が作業化しません。
 
 このように、基本アクションの完成度、プレイのモチベーション維持のため単調さを避ける工夫と、あらゆる全ての要素への配慮がなされており、ほとんど完璧といっても差し支えないほど隙のない濃密なゲーム体験が味わえます。
 
 
※追記
 
 ほぼ一日かけて実績を全て解除しましたが、今作の真の面白さが堪能できるのはやはり最高難易度のクレイジー(実績では難易度インセインと記述)でした。難易度クレイジーではライフゲージがほぼゼロに等しい状態で始まり、ただザコ敵と接触しただけで死亡し、ノーマルやハードでは普通に通過できた場所すら難所に変貌するため、ゲームが全く違う顔を覗かせてくれます。ただ、ライフゲージが極小になっただけで、敵の配置や動きはそのままなので、これまで培ってきた経験をフルに発揮していけば何とか突破は可能という非常に優れたバランス設定で、それほどアクションゲームが得意でない自分でも途中で挫けずクリアできました。
 
 ボス戦もライフゲージが極小のためほぼ一撃喰らえば即死するため、ノーダメージ撃破前提のようなバランスとなり、雑なプレイが一つも許されません。元々死にゲーとして完成度が高いのに、この難易度クレイジーではさらに磨きがかかり、一度このスリルと歯応えを味わうと、ノーマルやハードでは物足りなくなります。
 
 最高難易度に挑みたくさせるアクションゲームとしてのポテンシャルの高さ。そして挑むと高い期待に完璧に応えてくれる出来映え……難易度が高いからただ達成感が強めというだけでなく、アクションゲームとしての完成度が高いゆえに高難易度という高い負荷にも耐え抜ける、今作の圧倒的な強度をまざまざと見せつけられました。
 
 

不満あれこれ

 
 強いて不満を挙げるなら目新しさがない程度。全てどこかで見たことがあるようなシステムなので、ここに独創性が加われば無敵です。
 
 
 

まとめ

 
 過去の傑作に熱狂し、そして自らもまたその傑作達と肩を並べる立場に・・・・・・まるでメタルギア小島監督の熱狂的なファンで、後に小島監督と肩を並べるほどの作家となった伊藤計劃さんのような奇跡。
 
 過去と現在のアクションゲームが幸福に同居する大傑作。
 
 
死にゲー


 
 

 
 

ライズ/サン・オブ・ローマ(steam版)

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トレーラー

 
 
点数:70点
 
 

メモ

 
・日本語化してプレイ
フルHD(1920×1080)、グラフィック品質は高、30fpsでプレイ
・オフ専のためキャンペーンモードのみプレイ
 
 

短評

 
 クリアまで約6時間ほど。尋常ではないグラフィックの美しさだけで底の浅いバットマンライクのアクションを誤魔化し通すその強引さに一周回って清々しさすら覚える。リプレイ性などほぼゼロに等しいリニア型(一本道)アクションRPG
 
 
 

戦略性というものがほぼ皆無な潔いほど底の浅いアクション・・・・・・そしてド派手なスケールで繰り広げられる「暇を持て余した〇〇の遊び」

 
 今作はプレイ開始1時間程度でやれることが出尽くし、新しい要素が追加されることはラストまで一切ありません。ひたすら同じことをシチュエーションを変えながら繰り返し続けるだけで、中盤以降は実質ほぼ作業プレイに近い状態です。
 
 ですが不思議とラストまでプレイがダレることがありません。それはなぜか? 尋常ではないほど美しいグラフィックの魅力です。自分が今までプレイしたゲームの中でも間違いなくベスト3には入るであろう凄まじいビジュアルの魔力が、この薄いアクション性しか有していないゲームへの興味を繋ぎ止めてくれます。
 
 今作はクライシスシリーズなどを手掛けるドイツのCrytek(クライテック)社のゲームエンジンであるCryEngine(クライエンジン)という、そもそもグラフィックの綺麗さは折り紙付きの高性能ゲームエンジンを使用しています。ハッキリ言って今作はアクションゲーム部分がオマケで、主役はこのゲームエンジンの性能が叩きだすとんでもないグラフィックの豪華さのほうです。
 
 Xbox oneのローンチ(本体と同時発売)タイトルだけに、新ハードのグラフィック性能のプロモーションだけに特化した様な作りで、アクションRPGRPG要素はほぼオマケ)としては非常に満足度が低いです。
 
 バットマンライクなボタン一つでお手軽にできる攻撃・パリー・ガード崩し・回避などのアクションと、敵のライフを一定数削ると可能となるQTE処刑(QTEと言っても処刑ボタンを押した瞬間処刑は確定するのでただのヒットストリークを伸ばすためだけのボタン入力)、ほぼ反則的な強力さのフォーカス(バレットタイム)など、どれもこれも大してシステムとして深みはありません。
 
 唯一面白いと思ったのはQTE処刑を行う際に経験値増量・ライフ回復・フォーカス回復・ダメージ増量という4つの効果のうちどれか一つを十字キーでワンタッチで装着できる点。ライフが減っていたら処刑でライフを回復したり、経験値を稼ぎたかったら経験値ボーナス効果をセットするなど、処刑実行中でもその場その場の状況を鑑みて瞬時に効果を変更できるこのシステムは唯一単調な作業プレイの中で思考を促がされる貴重な刺激でした。
 
 このようにアクション性は単調です・・・・・・しかし、今作がグラフィックをウリにするということを方針としているのだと考えると、確かに合点がいきます。バットマンライクな操作の煩わしさとは無縁でかつそこそこテンポのいいバトルシステムを採用することでプレイヤーへの負担を減らしていたり、戦闘のテンポを著しく削ぐようなスローモーション多用なQTE処刑のド派手さは、テンポ命のアクションゲームとしては明らかにマイナスなのに、グラのキレイさを際立たせるためには効果的な演出だったり。グラ押しゲームとしてはある程度考えられているため、ラストまでさほど飽きずにプレイさせる程度にはシステムの単調さを隠蔽することに成功しています。
 
 ただ、グラが綺麗なのは没入度が増して良いのですが、物理演算オブジェなどが設置されておらず、同じくグラが綺麗なダイイングライトをプレイした時も感じた、世界が美しいのにどこか硬質で、プレイヤーの干渉を極端に拒むような印象が強いのがやや気になりました。ダイイングライトもあまりにもグラがリアル過ぎるため、「このオブジェは壊せるのかな?」と思っても触れることすらできないことで、逆に作り物感が浮いたり、壊せそうなのに壊せないということがストレスに感じたりと、そこは今作も似たような感触で残念なところ。
 
 この物理演算オブジェなどを介してゲーム世界に干渉できるということはプレイヤーとゲーム世界の距離を縮めてくれる役割を果たしていると思うので、今作のようにグラの美しさで没入させて最後まで一気に持っていくといったタイプのアプローチなら、もう少し世界が柔らかく感じられる工夫があっても良かったはず。一応は壊せる壺などのオブジェも申し訳程度に設置されてはいますが、もう少し乱闘している際などに周囲の物に干渉し自然に破壊できるなど、リニア型でガチガチの一本道を進み続けるだけの凝り固まったゲーム体験をほぐす工夫が欲しかったです。
 
 
 

まとめ

 
 アクションゲームとしては低レベルで処刑モーションの派手さ以外は特に印象にも残りません。しかし、今作最大の武器である圧倒的なグラフィックの美しさと、それを生かしたドラマはムービーパートだけに留まらずゲームパートにも良い影響を与えており、しっかりグラがゲーム体験の底上げもしているのは好印象でした。それとやはり“300(スリーハンドレッド)”や“グラディエーター”ごっこゲームとしては迫力があり満足。
 
 劇中、主人公マリウスはひたすら気合だけで敵に突撃し続けますが、それがグラの魅力だけを信じて強引に突き進み続ける今作を象徴しているようで、なんだか微笑ましくもあります。
 
 
 

 

 

Ryse:SonofRomeレジェンダリーエディション

Ryse:SonofRomeレジェンダリーエディション

 

ミドルアース/シャドウ・オブ・モルドール(steam版)

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トレーラー

 
 
点数:80点
 
 

短評

 
 クリアまで約15時間ほど。もろに最近のバットマンシリーズとアサシンクリードのシステムのいいとこ取りをしており、節操の無さが若干気にはなるものの、パルクールを用いるステルス要素と爽快感のあるアクション、ブランドという敵を洗脳し同士討ちさせるシステムのコンボが魅力的なオープンワールドステルスアクションRPG
 
 
 

これぞアクションRPGのお手本!

 
 ゲームの基本部分はほぼアサシンクリードファークライなどのUBIのオープンワールドゲームベースで、マップを探索し、ファストトラベルの中継点とリスポーンポイントを兼任する鍛造塔を解放しながら、メインミッションをひたすら進めるもよし、サブクエストやマップに点在するやり込み要素を回収して回るも良しな作り。
 
 正直、プレイ開始直後はあまりにもUBIのオープンワールドゲームに似すぎていたため「なんだこの出来損ないのアサシンクリードみたいなゲームは……」というマイナスの印象からのスタートでした。しかし、徐々に今作のアクションRPGとしての完成度の高さに評価が上向いていきました。
 
 最初の頃はあまりバトルシステムに工夫がなく、単にバットマンシリーズと同様のボタン一つでお手軽に出来る攻撃とカウンター、回避アクションをただなぞっただけの焼き直しをやらされている感覚でしたが、メインミッションが進むごとに単調だったアクション性が嘘のように向上していきます。それも次から次に新しいアクションが追加されていき操作が煩わしくなっていくという類のものではなく、それまでと同じアクション中に簡単な派生バリエーションが追加されるという形のため、別段操作が複雑化するということもありません。シンプルな操作性という利点を維持しながら、でも出来ることは格段に増えていくというアクションゲームにとって理想的とも言えるバランスで惚れ惚れします。
 
 まず、バットマンにもあるヒットストリーク(攻撃連続ヒット数)が一定数溜まると出せる必殺技の様なアビリティ(インスタント処刑・インスタント洗脳など)が追加されるとザコ敵を戦闘中流れを止めずに即死させられたり、洗脳し同士討ちさせたりといった行動が可能となり、戦闘のテンポがぐっと良くなると同時に、その場その場でどう立ち回ればいいのか思考を促がされます。このおかげで、例え敵にあっさり殺されたとしても「あそこでもっとこう立ち回ればよかったのに」と、失敗の原因を常に自分側に置けるため、理不尽さをゲームに八つ当たりすることもありません(ただQTE要素が多いため、そっちではイライラさせられますが)。これは自分にとって最も好ましい、真剣にプレイしていればさほど手こずらないが、ちょっとでも油断したり手を抜いて雑なプレイをするとあっけなくやられるというバランスをうまく実現できており大変好ましかったです。
 
 それと、今作のメインテーマでもある復讐という要素とも絡みますが、ウルク達をわざと憎々しげに描くことでウルクへの負の感情を植えつけ、敵を処刑する際にそっと快感を忍ばせるというテクニックも、敵にトドメを刺す際の処刑モーションのカメラワークや小気味いいSEと相まって心地よく、システム的にも演出的にもアクションゲームとして隙がありません。
 
 アクションゲームとして優秀なことはさることながら、それだけにとどまらずRPGとしても基本中の基本である最初に不便なプレイをプレイヤーに強いて不満を抱かせてから不便に感じた部分を成長要素によってさっと取り除いてあげるという成長への溜めをしっかり演出することで、アビリティツリー(スキルツリーと同じ)が解放されていくことに快楽が生じるように調整されており、ここら辺のバランス感覚はUBIのスキルツリー作りのヘタさと比べると圧倒的に上です。
 
 プラス、今作がステルスアクションというやや複雑な一面を持っているということも踏まえると、序盤は快適性をセーブし、プレイヤーに負荷を掛けてシステムに順応させることに努め、ある程度立ち回りに慣れてきたところで負荷部分という補助輪をさっと外す。そこからはプレイヤーに自由な戦略性を提供するという、RPG要素をプレイヤーに対しての能動的なアクションリミッター解除装置としてうまく用いているデウスエクスシリーズなどと似たような印象で、無駄がありません。
 
 もしかしたら隠れて進んでもいいし、正面から戦ってもいいという攻略のバリエーションが存在するステルスゲームは、いきなり全てのシステムをオープンにするのではなく、どんな機能が欲しいのかをプレイヤー側に一旦所望させ、それに対してゲーム側が複数の選択肢を提示し、そこから好きな攻略方法をその都度チョイスさせるという、選択の駆け引きを楽しむRPGの面白さと相性が良いのかもしれません。
 
 
 

指輪物語ではなくロード・オブ・ザ・リング

 
 自分は映画版よりかは原作小説のファンですが、当然というか指輪物語を題材にしているといっても映画寄りなバランス設定で、あまり好みなイギリスファンタジー的な優雅で落ち着いた指輪物語感ではなく、ハリウッド的ド派手アプローチ方向で少々ガッカリしました。
 
 原作小説のエピック(叙事詩)ファンタジー要素がメインで、ヒロイック(英雄譚的)ファンタジー要素はそこそこくらいのバランスだったものを、映画化する際に見やすくするため大幅にエピック要素を削り、ヒロイック要素を増量させたバランスをほぼ踏襲しており、自分の好きな指輪物語とはやや逸脱したバランスで、指輪物語が題材ゆえにモチベーションが強化されるということも別段ありませんでした(映画版は映画版で大好きですが)。
 
 指輪物語を題材とするゲームとしても、海外のゲームのハイファンタジーへのアプローチの手法をそのまま転用するような形で、プレイしている最中ずっと指輪物語に明らかに影響を受けて作られているエルダースクロールズなどの海外のRPGに似た何かをやっているようなもやもやした気分が晴れることはありませんでした。ハイファンタジー作品としての歴史は指輪物語の方が圧倒的に古いのに、ゲームでハイファンタジーものをやるという挑戦に限っては海外のハイファンタジーゲームのほうが指輪物語を題材としたゲームよりも歴史とそれに伴うノウハウの蓄積があり完成度も高い。それゆえゲームというメディア上ではもはやどっちが主従でオリジナルなのか分からなくなります。
 
 もし本気で原作の指輪物語の魅力を抽出してゲームにするのなら、先行する指輪物語もどきのゲーム群とは根本的に異なるアプローチを取り差別化しないと、現状ではただの指輪物語もどきゲーム群もどきという何とも中途半端な立ち位置になってしまい、全てのオリジンである指輪物語のほうが昨今の完成度の高いハイファンタジーゲームの亜種みたいに見え、かわいそうです。
 
 今作はバットマンアサシンクリードのシステムをほぼそのまま土台にして作られていることから見ても、あまり指輪物語をゲーム化する際にオリジナルのものを創造しようなどという意志は感じられず、ただ商業的に指輪物語アーカイブを利用しているだけで、今作をプレイしたからといって指輪物語愛が深まるといったことは特にありませんでした。
 
 ここら辺は指輪物語という途方もないスケールの人工神話を創造したトールキンにも通じる、指輪物語を映像化するため狂気的な美術へのこだわりを発揮したピーター・ジャクソン監督のほうが作り手のスタンスとしては圧倒的に好感が持てるところ。
 
 
 

不満あれこれ

 
 今作のウリの一つであるはずのネメシスシステムという、サウロン軍内部の階級制度に干渉し、小隊長をブランド(洗脳)して軍団長に出世させたり、洗脳し潜り込ませたウルクと他のウルクとを抗争させたりするというシステムはアイデアとしては面白いのに、実際にやるとただメインミッションのイベント用程度の印象でしかありません。思いついたシステムを取りあえず実装してみたという感じでイマイチ乗り切れませんでした。
 
 もっと本編そっちのけでドハマりしてしまうほど作り込まないと、よくできたステルスアクションRPG部分に比べ、なぜかメインであるはずのネメシスシステムの方がオマケに見えてしまうという本末転倒なバランスになっています。もっと、メタルギアソリッドピースウォーカーやⅤ:ザ・ファントムペインのようにウルクをフルトン回収してマザーベース的な反サウロン軍組織を拡大していくようなSLG的な面白みを加味する、などもう一工夫が欲しかったです。
 
 
 

まとめ

 
 最近UBIの成長要素のバランス設定が下手クソなゲームばかりやっていたせいか、今作のアクションRPGとしての出来の良さには素直に感心させられました。
 
 アクションゲームとしても優秀で、かつRPG(成長)要素がそれを邪魔せずアシストすることに努めるという、アクションとRPGがお互いを尊重しあう良好な関係を築けており、アクションRPGとして非常に満足度が高い良作。
 

 

 

 

 

シャドウ・オブ・モルドール

シャドウ・オブ・モルドール

 
シャドウ・オブ・モルドール

シャドウ・オブ・モルドール

 
シャドウ・オブ・モルドール

シャドウ・オブ・モルドール

 

 

トゥルー・ディテクティブ ファーストシーズン

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トレーラー

 
点数:95点
 
 

あらすじ

 
 2012年元刑事であるラスティン(ラスト)・コールマーティン・ハートの二人はルイジアナ州警察に呼び出され聴取を受けていた。警察側は当時の資料が紛失したため、1995年に起こり、二人が解決したとされる猟奇殺人事件の話を聞かせて欲しいと言う。警察側には過去の事件の話を聞く以外に別の思惑があることを見抜きながらも、刑事だった過去を振り返りながら感慨深げに事件の話を語る二人。しかし、徐々に二人が警察に対して語る証言と実際に起こった猟奇殺人事件の真相が乖離していき・・・・・・。
 
 
 

マシュー・マコノヒーウディ・ハレルソンいう連星の周りをストーリーや設定や登場人物という名の天体がぐるぐると公転し形成された恒星系、もしくは銀河のような作品

 
 今作は初っ端のタイトルシーケンスから異様です。カントリーソングに乗せ、人間にルイジアナ州の景色をテクスチャとして張り付けたようだったり、その反対に今度は物に人間をテクスチャとして張り付けたような奇怪な映像が次から次に映し出される。最初は意味は分からなくとも得体のしれない不思議な世界の洗礼を受けているかのような気分になるビジュアルに圧倒され「このドラマは普通じゃないぞ!」と身構えさせられます。
 
 そして、第一話の冒頭でマシュー・マコノヒーが登場した瞬間、もうこの作品の虜になりました。善人なのか悪人なのか、イカれているのかまともなのか、捉えどころがない、そこにいるのに存在がたゆたってハッキリと認識できない様な不穏さを背負った異物が画面を支配している・・・・・・もうこれだけでこの作品は傑作だろうと確信できました。
 
 あまりにもマシュー・マコノヒーの演技や存在感に嘘っぽさが無く真に迫り過ぎているのと、この作品自体が安っぽさを完全排除することに徹し、1カットたりとも現実に引き戻されるようなしょぼいアングル選択やカメラワークを挟むなどという隙を見せないため、ドキュメンタリックという名のアリバイ的なリアリティを出すことそのものが目的化したような似非(えせ)リアリティとは次元が異なります。演出という魔法を最大限駆使したら結果的に嘘臭さが微塵もない映像に仕上がっただけという、安易なリアリティの出し方とは距離を取った高級感のある作品に仕上がっておりうっとりさせられました。
 
 今作を見る直前にポール・グリーングラス監督の“ジェイソン・ボーン”を見ていたのが幸運でした。映像を現実の光景に近づけることが目的化しているドキュメンタリー肌の監督の志向するリアリティと、今作の安っぽさを排除していったら結果的に嘘臭くなくなっただけという仕上がりを見比べられ、ドキュメンタリックなリアリティを追求するという安易なアプローチによって逆に生じてしまう映像的ノイズとはほぼ無縁の一部の隙もない今作の化け物さ加減がよく分かりました。
 
 本物に似せただけの偽物を作ることに尽力するよりも、本物とは違う方向性の偽物を極めんとするほうが最終到達点が高くなるというお手本のような作品。
 
 

作品そのものが不眠症を患っている様な気怠さに包まれている

 
 マシュー・マコノヒー演じるラスト・コールという刑事はある過去の出来事により不眠と薬物中毒の後遺症に悩まされており、常に虚空を見つめ、心を過去に置き忘れてきたのに惰性だけで生き続けている精神の抜け殻めいた印象の人物です。そして、この作品自体もまるでマシュー・マコノヒーの演技テンションそのものを体現しているかのように気怠くダウナーな雰囲気に包まれています。ラストと同じで時間に取り残され過去を生き続けるかのような田舎の風景を丁寧に繋いだり、ラストの妥協を許さない物事に対する神経質さや厳格さを体現したかのような一切のしょぼさを許容しない作り手の絵作りへのこだわりぶりなど、それら全てがラスト・コールの有り様と重なり、ラストは作品そのものであり、作品はラストそのものであるという印象を問答無用で突きつけてきます。
 
 登場人物から受ける印象と、作品全体から受ける印象を神がかった演出のバランス感覚で一致させるという作り手の途方もない力量に戦慄すると共に、そのとんでもないアプローチの正否の責任を否応なく担わされるという重圧に屈しないマシュー・マコノヒーの才能にも惚れ惚れしました。
 
 普通ならクライムサスペンス的に猟奇殺人事件の進展や二人の証言から生じる矛盾そのものを話の推進力の中心にしそうなものですが、映画の“アウトロー”における主人公ジャック・リーチャーの行動動機そのものが最後まで謎として扱われるように、今作も事件そのものはオマケで、興味の中心となるのはなぜラスト・コールはこの猟奇殺人事件にこだわり、入れ込んでしまうのかというラスト・コールという謎めいた人物の行動動機のほうに軸足が置かれているのも非常に賢い判断だと思います。
 
 今作におけるマシュー・マコノヒーの存在感は猟奇殺人事件の真相など遥かに凌駕するほどミステリアスで魅力的なため、事件ではなく人物に対する興味を中心に据えるという大胆なアプローチも許容させる力があります。
 
 
 

不満あれこれ

 
 好みの問題でもありますが、自分はカメラの動きを意識させられる固定撮影ではなく移動撮影のある長回しが死ぬほど嫌いなので、4話の目先の緊張感を安易に盛り上げるためだけの長回しサスペンスシーンはいらなかったと思います。一応ラストが緊張状態に置かれているため撮り方も緊張感を煽るように同期させ長回しにするというやり方は理に適っていると言えなくもないですが、この重厚な作品にこのような子供騙しの手法など不要です。
 
 
 

まとめ

 
 これほどまでに実写作品に心底惚れこんだのはポール・トーマス・アンダーソン監督の“ゼアウィルビーブラッド”やリドリー・スコット監督の“悪の法則”以来で、間違いなく自分にとって生涯ベスト級作品の一本。
 
 存在すること自体が宇宙誕生と同程度の奇跡である超傑作。