エンタメ不感症の患部に巻く包帯

好きなものについて語るブログ

ウィッチャー2/王の暗殺者(steam版)

 

OPムービー

 
点数:85点
 
 

短評

 
 クリアまで約30時間ほど。一作目の余計なシステムの出っ張り部分を研磨し滑らかにした結果見違えるほど遊びやすさと楽しさが増した。話が途中から始まり途中で終わるという余韻がかなりのマイナス要因なものの、非常に出来のいいバトルシステムが魅力のハードなダークファンタジーアクションRPG
 
 
 

正統進化を遂げた続編

 
 今作をクリアした後に比較のため一作目をプレイし直すとそのあまりの煩雑なシステムやメニュー画面の見辛さに「ウィッチャー(一作目)ってこんなに分かり辛くて雑なゲームだっけ?」と、頭の中にあるそこそこ面白かった前作の記憶との乖離に困惑させられました。
 
 この作品単体だけで見たらお世辞にも分かりやすいと言えるほど取っつきやすくはないですが、前作との比較で見た場合、ベースのコンセプトはそのままに、システム部分が格段にシンプルかつコンパクトにまとめられており、これを一度味わうともう前作をやるのが嫌になります。
 
 PC専用でキーボード&マウスオンリーだった前作に比べゲームパッド対応となったことで、ドラゴンエイジディアブロ3のコンシューマ版のようにUIが刷新され、より直感的に遊びやすくなり、大変好ましい仕上がりに。
 
 ウィッチャーらしさを感じさせる、戦闘中に体力回復が容易にできず、バトルよりも事前のセッティングや戦術に重点を置いている点や、霊薬(ポーション)をクラフトさせるためにフィールド中にクラフト素材が大量に存在する点、章が変わると舞台となる街や場所が移り、雰囲気がガラッと変わるというディアブロ2を彷彿とさせる作りな点、発生した事件を最後まで丁寧に調査して真相に辿り着いてもいいし、面倒なら適当に片付けてあやふやなまま先に進んでもいいという選択がプレイヤーに委ねられる点などは前作と同じ。
 
 変更部分は、タイミング良く目押しでボタンを押すことによって連続攻撃を繰り出すという癖のあるバトルシステムがよりシンプルでオーソドックスなリアルタイムバトル型になっていたり、霊薬(ポーション)のクラフトが焚き火でしか出来なかった仕様を改めどこでも可能にしていたり、アイテムが種類ごとに最初から分類され見やすくなっていたり、スキルツリーが武器や能力ごとに別個だったものが一元化されて見やすくなっていたりと、どれもこれも快適さを増すことに貢献しているため、前作の取っつき辛さが嘘のように劇的に改善されています。
 
 
 

ただそこには選択と結果のみが存在する

 
 これは一作目のゲーム開始時に表示される文言(日本語化した場合)ですが、この言葉がウィッチャーという作品のスタンスであり、海外のRPGが志向する方向性そのものを示唆していると思います。
 
 ゲーム側は善と悪をあえて定義しない。それによってプレイヤーが選択した結果が正しいのか間違っているのか判断が付かないもどかしい心理状態を作ることこそが目的であり、ストーリーとはこのような心理状態を作り出すための装置の一つに過ぎないという割り切った姿勢が今作からも垣間見えます。
 
 ゲームがプレーヤーを接待することを止め、一見正しいことをしても褒めては貰えず、明らかに間違ったことをしても叱ってもくれず、結果に過剰な意味を持たせない。何をやっても綺麗に片付くことはなく、常に苦い余韻だけが付いて回る。ストーリーはゲームから与えられるのではなく、納得し辛い展開に直面したことによって生じる苦悩の中からプレーヤー自身が掬い取るナラティブなもの……これは海外のハードなダークファンタジー志向のRPGにはよくあるアプローチですが、今作もこのスタンスが徹底されており、物語的なカタルシスとは距離を取っています。
 
 自分は極端なサスペンス好きなので、本音を言えば国産RPGのようなクリフハンガーが強めのストーリーでぐいぐい引っ張って欲しいタイプで、あまり海外のRPGの志向する姿勢は好みではなく、おまけに似たようなアプローチの作品が多すぎてやや食傷気味ですらあります。ただシステムのつまらなさを誤魔化すこともできてしまう安易なサスペンス性や物語的カタルシスと距離を取り、プレイヤー側にゲームシステムからもたらされる確かな手応えを味わって欲しいという、自己に対する厳しい姿勢は理解できるので、これはこれでゲームとしては非常に真摯な態度なのだと割り切ることにしています。
 
 その点今作はシステムに厚みがあり、多少物語が味気なくても最後までシステムの魅力でプレイさせる力を持っているため、途中で飽きることは一切ありませんでした。
 
 
 

選択と結果を楽しむシステム

 
 一作目がバイオウェアゲームエンジンで作られ、今作もそれをベースに独自開発されたエンジンを使っていることと、そもそもRPGとして目指している方向性が似ているということもあり、非常にバイオウェアドラゴンエイジシリーズと似た感触です。ハイファンタジー作品へのアプローチが会話ベースで似ていたり、ザコ敵戦でも平気でゲームオーバーになる死にゲーに近いバランス設定など、既視感を覚える箇所が多く、そのせいであまり目新しさを感じられないのは残念ですが、ドラゴンエイジと比べると圧倒的にシステム密度が濃く、システムの面白さでぐいぐい引っ張っていってくれる分、プレイしやすかったのは今作のほうでした。
 
 シナリオ面と同様、システムも「○○してもいいし、しなくてもいい」という姿勢が徹底されています。死にゲーに近いゴリ押しで勝つには厳しいバランスのバトルシステムを中心に据え、ステータス上昇や特殊効果を付加させる霊薬(ポーション)・武器・(武器に塗る)攻撃力強化用のオイル・罠などをクラフトする要素や、スキルツリーによる剣・魔術・錬金術(霊薬・罠などの効果を強化する)のどれを成長させていくのかを選ばせる成長要素など、高い水準の完成度を誇るシステムが強力なインセンティブをもたらすため、終始プレイが楽しくて仕方ありません。
 
 しかも、どのシステムも押しつけがましさがなく、クラフトが面倒なら店でほぼ同じ物が購入できるし、何がなんでもテクニカルな戦い方を要求してくるのではなく、事前に霊薬を飲んだり武器にオイルを塗ると戦闘がかなりラクになるという程度で、戦闘前の準備を面倒と感じるならゲームオーバー数は増えるものの、それをすっ飛ばして強引に攻めても勝てる緩さは許容してくれるしと、どこを取ってもシステムのバランス感覚が絶妙です。苦労すればするほどそれに見合う程度には戦闘がラクチンになりますが、だからといってそれを押しつけてくるということもないという、これほど心地よいバランス調整がされたRPGは珍しく、惚れ惚れします。
 
 敵との戦闘も毎回驚くほどあっさり終わるためテンポが非常に良く、むしろもっと戦いたいのにあっさり終わり過ぎて不満なほど。ひたすら敵を固くしてダラダラと戦闘を長引かせる様な愚かなことはせず、ザコもボスも腹八分なバトルボリュームを維持し続けるので常に敵に餓えた状態で戦闘が作業化することがありません。
 
 自分はクラフトや、クラフトで作った霊薬を飲んでステータスを強化して戦うというウィッチャーシリーズの面白さを一番引き出せるのではないかと考え、スキルツリーの成長はほぼ錬金術ルートに絞ってプレイしましたが、これが大正解でした。霊薬や武器に塗るオイルの効果が大幅に強化されるため、ほとんどザコ敵は霊薬を飲んだりオイルさえ塗れば苦労せず数発の攻撃で倒せますが、霊薬やオイルの効果がないと途端に戦闘が厳しくなるため、勝ち負けの原因がハッキリし、システムによってもたらされる効果が肌感覚で理解できます。
 
 一応アクションRPGですが、アクションはほとんどオマケ程度でRPG寄りのバランス調整がされており、プレイヤーがどの方向に力を注いだかが結果としてダイレクトに反映されるため、ベイグラントストーリーすら彷彿とさせるほど一撃一撃の攻撃に快感が伴います。なぜこの一撃はダメージが大きいのか、なぜこの一撃はダメージが少ないのかが明解に説明できるため、大ダメージを与えられるのは自分の工夫によるものだと素直に喜べ、戦闘の快楽性が高いです。攻撃力が高い武器を装備すればその威力をステータスの数値だけでなく、戦闘中に実感でき、霊薬を飲んだりオイルを塗ればその強化分しっかりダメージ量が上がり戦闘がラクになるという、バトルシステムをウリにするRPGなら基本中の基本部分である一撃一撃の攻撃充実度が非常に高く、ただ敵を攻撃するだけで楽しいという理想的なバランスに仕上がっています。
 
 攻撃一辺倒のゴリ押しでは難しいため、魔術や投擲アイテム、罠を混ぜながら隙を作り、そこに霊薬やオイルで強化した重い一撃を喰らわせる……やっていることはシンプルなのに、得られる快感は絶大で、この遙かに進化を遂げたバトルシステムの魅力のおかげで今作は前作を凌駕することに成功しています。
 
 
 

不満あれこれ

 
 まず、前作と同じでオープンワールドではないですが、かなりマップが広めなのにも関わらずナビゲーションシステムが不親切で、一部クエストでどこに行けばいいのかナビゲーションしてくれないものがあり、マップ中をひたすら探し回らなくてはならずきつかった点。ここは前作からあまり改善されていません。
 
 後、今作一番の問題は話が途中から始まり途中で終わるという構造のため、クリアした後の余韻が極端に味気ないこと。ゲームの作り自体がカタルシスを避けるタイプなため、もちろん盛り上がりなどほとんどないままフェードアウトするように終わり、クリアするまでは熱中していたのに、クリアした途端作品への興味が急激に冷めてしまいます。一応主人公にかけられた王殺しの汚名をそそぐという当初の目的自体は解決されますが、映画の三部作のうち二作目のような余韻を果たしてクリアするまで30時間かかるゲームでやっていいのかという疑問のほうは晴れません。もしこれをやるならもう少し今作単体で何か大きな事件が解決したような満足感を覚える作りにするべきです。これまで30時間の長い旅をしてきて最後は何も解決せず次回へつづくで締められた後の虚しさと徒労感だけが募る余韻ではとてももう一回やり直そうなどと思えません。三部作であるゼノサーガのエピソードⅠ・Ⅱなどはちゃんとそのエピソードだけでもすっきりするようなドラマが出来ていたのに、今作はそこら辺の配慮が欠けています。
 
 海外のゲームはどれもラストの盛り上がりを重視せず、気付いたらラストステージだったり、酷い場合はさっき倒した中ボスっぽいのがラスボスだったと後で気付くというケースもザラにありますが、今作もそれらと似ており、途中から始まり途中で終わるだけの別段意味もない話に30時間付き合わされた挙げ句脱力感だけを残して終わります。
 
 
 

まとめ

 
 バトルシステムは非常に自分好みな出来でクリアするまでは大変熱中していましたが、クリア後は若干時間を損したような気分に陥る困った余韻の作品です。
 
 
 
バトルが面白いRPG

 
 
 

 

 

ウィッチャー2

ウィッチャー2

 

 

Momodora(モモドラ)/月下のレクイエム(steam版)

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トレーラー


点数:90点
 
 

メモ

フルスクリーンにすると画面が真っ暗になり映らなくなったため、
ドライブ→ユーザー→ユーザー名→AppData→Local→MomodoraRUtM→config.iniをメモ帳で開きzoomの部分の数値を4から別の数値に変更してプレイ
 
 

短評

 
 クリアまで約5時間ほど。デモンズソウルやダークソウルを連想させる極上の敵配置とマップ構成のバランス感覚。ベイグラントストーリーの魔都レアモンデのごとき、音楽と美術がデカダンスな灰色の彩りを添える官能的な舞台。アクションゲームとしての完成度だけで万人を平伏させる作り手の確かなゲームセンス。センスオブワンダーな目新しさは皆無なものの、過去のマスターピースアクションゲーム達の最良の遺伝子を濃密に継承した、メトロイドヴァニア型2Dアクションゲームの一つの究極系である大傑作。
 
 
 

我が血肉となりし傑作たちと同種の香りや味わい!

 
 今作をプレイ中、湧き上がってくる感覚は過去の傑作アクションゲームをプレイした際の興奮や感動、幸福感でした。ここにはスーパーマリオワールドがあり、イースがあり、ロックマンXがあり、スーパーメトロイドがあり、ダークソウルがあり・・・・・・作り手の過去の傑作アクションゲームへの愛がシステムから滲み出ているため、言葉など用いずとも、ただプレイするだけで好きな作品を共有し、繋がった気分になれます。
 
 作りは非常にシンプルイズベストな死にゲースタイル。メトロイドヴァニア型ということでスーパーメトロイドやラ・ムラーナのように途中で謎解きに詰まりうろうろさせられるのかと身構えていましたが、マップを開けば未踏破エリアが大体分かるため、ラスボス戦の強制バッドエンドで面喰らった以外は、ほぼ迷うこともなく快適でした。
 
 今作は基本のアクション部分の出来が良く、二段ジャンプ・距離の長めなローリング・空中ダッシュ(途中から)・近接攻撃・弓での遠距離攻撃・弓のチャージショット(途中から途中から二段階チャージ)など、何度繰り返しても飽きづらい耐久性の高い抜群の操作性で、欠点らしきものはほぼ皆無。
 
 それどころか、途中からロックマンXを連想させる弓のチャージショットが可能となると、シューティングゲーム的な面白さまで強化され「一体このゲームはどこまで面白くなれば気が済むんだ!」と思うほど圧倒的な中毒性で虜になります。(チャージショットが可能になるということとチャージショット回数が増えるということをごっちゃにしていました)
 
 途中からロックマンXを連想させる弓のチャージショットのチャージが二段階に増えると、シューティングゲーム的な面白さまで強化されだし「一体このゲームはどこまで面白くなれば気が済むんだ!」と思うほど圧倒的な中毒性で虜になります。
 
 基本のアクションが良くできているだけでも大したものなのに、今作はさらにシステムがアクション性を強力にバックアップする作りです。まず、シャイニングフォースイクサやダークソウルタイプの回復アイテム補充制を取っており、アイテムが補充可能な次のセーブポイントまでやりくりして持たせなくてはならず、回復アイテムが心許なくなると無駄なプレイが許されなくなり緊張感が生まれます。
 
 アイテムもアクティブアイテム(使い切りの消費アイテムではなく補充型で、回復アイテムもこれ)とパッシブアイテム(装備すると効果が常時発動)という二種類があります。これらを組み合わせることで戦術にバリエーションが生まれ、同じアクションを繰り返し続けるというマンネリを回避する機能を果たすことに。さらに、敵を倒したり宝箱から入手できるお金でNPCからアクティブ・パッシブ両方のアイテムを購入できるため、敵と戦うということにも終始お金稼ぎというインセンティブが存在し続けるため、敵との戦闘が作業化しません。
 
 このように、基本アクションの完成度、プレイのモチベーション維持のため単調さを避ける工夫と、あらゆる全ての要素への配慮がなされており、ほとんど完璧といっても差し支えないほど隙のない濃密なゲーム体験が味わえます。
 
 
※追記
 
 ほぼ一日かけて実績を全て解除しましたが、今作の真の面白さが堪能できるのはやはり最高難易度のクレイジー(実績では難易度インセインと記述)でした。難易度クレイジーではライフゲージがほぼゼロに等しい状態で始まり、ただザコ敵と接触しただけで死亡し、ノーマルやハードでは普通に通過できた場所すら難所に変貌するため、ゲームが全く違う顔を覗かせてくれます。ただ、ライフゲージが極小になっただけで、敵の配置や動きはそのままなので、これまで培ってきた経験をフルに発揮していけば何とか突破は可能という非常に優れたバランス設定で、それほどアクションゲームが得意でない自分でも途中で挫けずクリアできました。
 
 ボス戦もライフゲージが極小のためほぼ一撃喰らえば即死するため、ノーダメージ撃破前提のようなバランスとなり、雑なプレイが一つも許されません。元々死にゲーとして完成度が高いのに、この難易度クレイジーではさらに磨きがかかり、一度このスリルと歯応えを味わうと、ノーマルやハードでは物足りなくなります。
 
 最高難易度に挑みたくさせるアクションゲームとしてのポテンシャルの高さ。そして挑むと高い期待に完璧に応えてくれる出来映え……難易度が高いからただ達成感が強めというだけでなく、アクションゲームとしての完成度が高いゆえに高難易度という高い負荷にも耐え抜ける、今作の圧倒的な強度をまざまざと見せつけられました。
 
 

不満あれこれ

 
 強いて不満を挙げるなら目新しさがない程度。全てどこかで見たことがあるようなシステムなので、ここに独創性が加われば無敵です。
 
 
 

まとめ

 
 過去の傑作に熱狂し、そして自らもまたその傑作達と肩を並べる立場に・・・・・・まるでメタルギア小島監督の熱狂的なファンで、後に小島監督と肩を並べるほどの作家となった伊藤計劃さんのような奇跡。
 
 過去と現在のアクションゲームが幸福に同居する大傑作。
 
 
死にゲー


 
 

 
 

ライズ/サン・オブ・ローマ(steam版)

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トレーラー

 
 
点数:70点
 
 

メモ

 
・日本語化してプレイ
フルHD(1920×1080)、グラフィック品質は高、30fpsでプレイ
・オフ専のためキャンペーンモードのみプレイ
 
 

短評

 
 クリアまで約6時間ほど。尋常ではないグラフィックの美しさだけで底の浅いバットマンライクのアクションを誤魔化し通すその強引さに一周回って清々しさすら覚える。リプレイ性などほぼゼロに等しいリニア型(一本道)アクションRPG
 
 
 

戦略性というものがほぼ皆無な潔いほど底の浅いアクション・・・・・・そしてド派手なスケールで繰り広げられる「暇を持て余した〇〇の遊び」

 
 今作はプレイ開始1時間程度でやれることが出尽くし、新しい要素が追加されることはラストまで一切ありません。ひたすら同じことをシチュエーションを変えながら繰り返し続けるだけで、中盤以降は実質ほぼ作業プレイに近い状態です。
 
 ですが不思議とラストまでプレイがダレることがありません。それはなぜか? 尋常ではないほど美しいグラフィックの魅力です。自分が今までプレイしたゲームの中でも間違いなくベスト3には入るであろう凄まじいビジュアルの魔力が、この薄いアクション性しか有していないゲームへの興味を繋ぎ止めてくれます。
 
 今作はクライシスシリーズなどを手掛けるドイツのCrytek(クライテック)社のゲームエンジンであるCryEngine(クライエンジン)という、そもそもグラフィックの綺麗さは折り紙付きの高性能ゲームエンジンを使用しています。ハッキリ言って今作はアクションゲーム部分がオマケで、主役はこのゲームエンジンの性能が叩きだすとんでもないグラフィックの豪華さのほうです。
 
 Xbox oneのローンチ(本体と同時発売)タイトルだけに、新ハードのグラフィック性能のプロモーションだけに特化した様な作りで、アクションRPGRPG要素はほぼオマケ)としては非常に満足度が低いです。
 
 バットマンライクなボタン一つでお手軽にできる攻撃・パリー・ガード崩し・回避などのアクションと、敵のライフを一定数削ると可能となるQTE処刑(QTEと言っても処刑ボタンを押した瞬間処刑は確定するのでただのヒットストリークを伸ばすためだけのボタン入力)、ほぼ反則的な強力さのフォーカス(バレットタイム)など、どれもこれも大してシステムとして深みはありません。
 
 唯一面白いと思ったのはQTE処刑を行う際に経験値増量・ライフ回復・フォーカス回復・ダメージ増量という4つの効果のうちどれか一つを十字キーでワンタッチで装着できる点。ライフが減っていたら処刑でライフを回復したり、経験値を稼ぎたかったら経験値ボーナス効果をセットするなど、処刑実行中でもその場その場の状況を鑑みて瞬時に効果を変更できるこのシステムは唯一単調な作業プレイの中で思考を促がされる貴重な刺激でした。
 
 このようにアクション性は単調です・・・・・・しかし、今作がグラフィックをウリにするということを方針としているのだと考えると、確かに合点がいきます。バットマンライクな操作の煩わしさとは無縁でかつそこそこテンポのいいバトルシステムを採用することでプレイヤーへの負担を減らしていたり、戦闘のテンポを著しく削ぐようなスローモーション多用なQTE処刑のド派手さは、テンポ命のアクションゲームとしては明らかにマイナスなのに、グラのキレイさを際立たせるためには効果的な演出だったり。グラ押しゲームとしてはある程度考えられているため、ラストまでさほど飽きずにプレイさせる程度にはシステムの単調さを隠蔽することに成功しています。
 
 ただ、グラが綺麗なのは没入度が増して良いのですが、物理演算オブジェなどが設置されておらず、同じくグラが綺麗なダイイングライトをプレイした時も感じた、世界が美しいのにどこか硬質で、プレイヤーの干渉を極端に拒むような印象が強いのがやや気になりました。ダイイングライトもあまりにもグラがリアル過ぎるため、「このオブジェは壊せるのかな?」と思っても触れることすらできないことで、逆に作り物感が浮いたり、壊せそうなのに壊せないということがストレスに感じたりと、そこは今作も似たような感触で残念なところ。
 
 この物理演算オブジェなどを介してゲーム世界に干渉できるということはプレイヤーとゲーム世界の距離を縮めてくれる役割を果たしていると思うので、今作のようにグラの美しさで没入させて最後まで一気に持っていくといったタイプのアプローチなら、もう少し世界が柔らかく感じられる工夫があっても良かったはず。一応は壊せる壺などのオブジェも申し訳程度に設置されてはいますが、もう少し乱闘している際などに周囲の物に干渉し自然に破壊できるなど、リニア型でガチガチの一本道を進み続けるだけの凝り固まったゲーム体験をほぐす工夫が欲しかったです。
 
 
 

まとめ

 
 アクションゲームとしては低レベルで処刑モーションの派手さ以外は特に印象にも残りません。しかし、今作最大の武器である圧倒的なグラフィックの美しさと、それを生かしたドラマはムービーパートだけに留まらずゲームパートにも良い影響を与えており、しっかりグラがゲーム体験の底上げもしているのは好印象でした。それとやはり“300(スリーハンドレッド)”や“グラディエーター”ごっこゲームとしては迫力があり満足。
 
 劇中、主人公マリウスはひたすら気合だけで敵に突撃し続けますが、それがグラの魅力だけを信じて強引に突き進み続ける今作を象徴しているようで、なんだか微笑ましくもあります。
 
 
 

 

 

Ryse:SonofRomeレジェンダリーエディション

Ryse:SonofRomeレジェンダリーエディション

 

ミドルアース/シャドウ・オブ・モルドール(steam版)

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トレーラー

 
 
点数:80点
 
 

短評

 
 クリアまで約15時間ほど。もろに最近のバットマンシリーズとアサシンクリードのシステムのいいとこ取りをしており、節操の無さが若干気にはなるものの、パルクールを用いるステルス要素と爽快感のあるアクション、ブランドという敵を洗脳し同士討ちさせるシステムのコンボが魅力的なオープンワールドステルスアクションRPG
 
 
 

これぞアクションRPGのお手本!

 
 ゲームの基本部分はほぼアサシンクリードファークライなどのUBIのオープンワールドゲームベースで、マップを探索し、ファストトラベルの中継点とリスポーンポイントを兼任する鍛造塔を解放しながら、メインミッションをひたすら進めるもよし、サブクエストやマップに点在するやり込み要素を回収して回るも良しな作り。
 
 正直、プレイ開始直後はあまりにもUBIのオープンワールドゲームに似すぎていたため「なんだこの出来損ないのアサシンクリードみたいなゲームは……」というマイナスの印象からのスタートでした。しかし、徐々に今作のアクションRPGとしての完成度の高さに評価が上向いていきました。
 
 最初の頃はあまりバトルシステムに工夫がなく、単にバットマンシリーズと同様のボタン一つでお手軽に出来る攻撃とカウンター、回避アクションをただなぞっただけの焼き直しをやらされている感覚でしたが、メインミッションが進むごとに単調だったアクション性が嘘のように向上していきます。それも次から次に新しいアクションが追加されていき操作が煩わしくなっていくという類のものではなく、それまでと同じアクション中に簡単な派生バリエーションが追加されるという形のため、別段操作が複雑化するということもありません。シンプルな操作性という利点を維持しながら、でも出来ることは格段に増えていくというアクションゲームにとって理想的とも言えるバランスで惚れ惚れします。
 
 まず、バットマンにもあるヒットストリーク(攻撃連続ヒット数)が一定数溜まると出せる必殺技の様なアビリティ(インスタント処刑・インスタント洗脳など)が追加されるとザコ敵を戦闘中流れを止めずに即死させられたり、洗脳し同士討ちさせたりといった行動が可能となり、戦闘のテンポがぐっと良くなると同時に、その場その場でどう立ち回ればいいのか思考を促がされます。このおかげで、例え敵にあっさり殺されたとしても「あそこでもっとこう立ち回ればよかったのに」と、失敗の原因を常に自分側に置けるため、理不尽さをゲームに八つ当たりすることもありません(ただQTE要素が多いため、そっちではイライラさせられますが)。これは自分にとって最も好ましい、真剣にプレイしていればさほど手こずらないが、ちょっとでも油断したり手を抜いて雑なプレイをするとあっけなくやられるというバランスをうまく実現できており大変好ましかったです。
 
 それと、今作のメインテーマでもある復讐という要素とも絡みますが、ウルク達をわざと憎々しげに描くことでウルクへの負の感情を植えつけ、敵を処刑する際にそっと快感を忍ばせるというテクニックも、敵にトドメを刺す際の処刑モーションのカメラワークや小気味いいSEと相まって心地よく、システム的にも演出的にもアクションゲームとして隙がありません。
 
 アクションゲームとして優秀なことはさることながら、それだけにとどまらずRPGとしても基本中の基本である最初に不便なプレイをプレイヤーに強いて不満を抱かせてから不便に感じた部分を成長要素によってさっと取り除いてあげるという成長への溜めをしっかり演出することで、アビリティツリー(スキルツリーと同じ)が解放されていくことに快楽が生じるように調整されており、ここら辺のバランス感覚はUBIのスキルツリー作りのヘタさと比べると圧倒的に上です。
 
 プラス、今作がステルスアクションというやや複雑な一面を持っているということも踏まえると、序盤は快適性をセーブし、プレイヤーに負荷を掛けてシステムに順応させることに努め、ある程度立ち回りに慣れてきたところで負荷部分という補助輪をさっと外す。そこからはプレイヤーに自由な戦略性を提供するという、RPG要素をプレイヤーに対しての能動的なアクションリミッター解除装置としてうまく用いているデウスエクスシリーズなどと似たような印象で、無駄がありません。
 
 もしかしたら隠れて進んでもいいし、正面から戦ってもいいという攻略のバリエーションが存在するステルスゲームは、いきなり全てのシステムをオープンにするのではなく、どんな機能が欲しいのかをプレイヤー側に一旦所望させ、それに対してゲーム側が複数の選択肢を提示し、そこから好きな攻略方法をその都度チョイスさせるという、選択の駆け引きを楽しむRPGの面白さと相性が良いのかもしれません。
 
 
 

指輪物語ではなくロード・オブ・ザ・リング

 
 自分は映画版よりかは原作小説のファンですが、当然というか指輪物語を題材にしているといっても映画寄りなバランス設定で、あまり好みなイギリスファンタジー的な優雅で落ち着いた指輪物語感ではなく、ハリウッド的ド派手アプローチ方向で少々ガッカリしました。
 
 原作小説のエピック(叙事詩)ファンタジー要素がメインで、ヒロイック(英雄譚的)ファンタジー要素はそこそこくらいのバランスだったものを、映画化する際に見やすくするため大幅にエピック要素を削り、ヒロイック要素を増量させたバランスをほぼ踏襲しており、自分の好きな指輪物語とはやや逸脱したバランスで、指輪物語が題材ゆえにモチベーションが強化されるということも別段ありませんでした(映画版は映画版で大好きですが)。
 
 指輪物語を題材とするゲームとしても、海外のゲームのハイファンタジーへのアプローチの手法をそのまま転用するような形で、プレイしている最中ずっと指輪物語に明らかに影響を受けて作られているエルダースクロールズなどの海外のRPGに似た何かをやっているようなもやもやした気分が晴れることはありませんでした。ハイファンタジー作品としての歴史は指輪物語の方が圧倒的に古いのに、ゲームでハイファンタジーものをやるという挑戦に限っては海外のハイファンタジーゲームのほうが指輪物語を題材としたゲームよりも歴史とそれに伴うノウハウの蓄積があり完成度も高い。それゆえゲームというメディア上ではもはやどっちが主従でオリジナルなのか分からなくなります。
 
 もし本気で原作の指輪物語の魅力を抽出してゲームにするのなら、先行する指輪物語もどきのゲーム群とは根本的に異なるアプローチを取り差別化しないと、現状ではただの指輪物語もどきゲーム群もどきという何とも中途半端な立ち位置になってしまい、全てのオリジンである指輪物語のほうが昨今の完成度の高いハイファンタジーゲームの亜種みたいに見え、かわいそうです。
 
 今作はバットマンアサシンクリードのシステムをほぼそのまま土台にして作られていることから見ても、あまり指輪物語をゲーム化する際にオリジナルのものを創造しようなどという意志は感じられず、ただ商業的に指輪物語アーカイブを利用しているだけで、今作をプレイしたからといって指輪物語愛が深まるといったことは特にありませんでした。
 
 ここら辺は指輪物語という途方もないスケールの人工神話を創造したトールキンにも通じる、指輪物語を映像化するため狂気的な美術へのこだわりを発揮したピーター・ジャクソン監督のほうが作り手のスタンスとしては圧倒的に好感が持てるところ。
 
 
 

不満あれこれ

 
 今作のウリの一つであるはずのネメシスシステムという、サウロン軍内部の階級制度に干渉し、小隊長をブランド(洗脳)して軍団長に出世させたり、洗脳し潜り込ませたウルクと他のウルクとを抗争させたりするというシステムはアイデアとしては面白いのに、実際にやるとただメインミッションのイベント用程度の印象でしかありません。思いついたシステムを取りあえず実装してみたという感じでイマイチ乗り切れませんでした。
 
 もっと本編そっちのけでドハマりしてしまうほど作り込まないと、よくできたステルスアクションRPG部分に比べ、なぜかメインであるはずのネメシスシステムの方がオマケに見えてしまうという本末転倒なバランスになっています。もっと、メタルギアソリッドピースウォーカーやⅤ:ザ・ファントムペインのようにウルクをフルトン回収してマザーベース的な反サウロン軍組織を拡大していくようなSLG的な面白みを加味する、などもう一工夫が欲しかったです。
 
 
 

まとめ

 
 最近UBIの成長要素のバランス設定が下手クソなゲームばかりやっていたせいか、今作のアクションRPGとしての出来の良さには素直に感心させられました。
 
 アクションゲームとしても優秀で、かつRPG(成長)要素がそれを邪魔せずアシストすることに努めるという、アクションとRPGがお互いを尊重しあう良好な関係を築けており、アクションRPGとして非常に満足度が高い良作。
 

 

 

 

 

シャドウ・オブ・モルドール

シャドウ・オブ・モルドール

 
シャドウ・オブ・モルドール

シャドウ・オブ・モルドール

 
シャドウ・オブ・モルドール

シャドウ・オブ・モルドール

 

 

トゥルー・ディテクティブ ファーストシーズン

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トレーラー

 
点数:95点
 
 

あらすじ

 
 2012年元刑事であるラスティン(ラスト)・コールマーティン・ハートの二人はルイジアナ州警察に呼び出され聴取を受けていた。警察側は当時の資料が紛失したため、1995年に起こり、二人が解決したとされる猟奇殺人事件の話を聞かせて欲しいと言う。警察側には過去の事件の話を聞く以外に別の思惑があることを見抜きながらも、刑事だった過去を振り返りながら感慨深げに事件の話を語る二人。しかし、徐々に二人が警察に対して語る証言と実際に起こった猟奇殺人事件の真相が乖離していき・・・・・・。
 
 
 

マシュー・マコノヒーウディ・ハレルソンいう連星の周りをストーリーや設定や登場人物という名の天体がぐるぐると公転し形成された恒星系、もしくは銀河のような作品

 
 今作は初っ端のタイトルシーケンスから異様です。カントリーソングに乗せ、人間にルイジアナ州の景色をテクスチャとして張り付けたようだったり、その反対に今度は物に人間をテクスチャとして張り付けたような奇怪な映像が次から次に映し出される。最初は意味は分からなくとも得体のしれない不思議な世界の洗礼を受けているかのような気分になるビジュアルに圧倒され「このドラマは普通じゃないぞ!」と身構えさせられます。
 
 そして、第一話の冒頭でマシュー・マコノヒーが登場した瞬間、もうこの作品の虜になりました。善人なのか悪人なのか、イカれているのかまともなのか、捉えどころがない、そこにいるのに存在がたゆたってハッキリと認識できない様な不穏さを背負った異物が画面を支配している・・・・・・もうこれだけでこの作品は傑作だろうと確信できました。
 
 あまりにもマシュー・マコノヒーの演技や存在感に嘘っぽさが無く真に迫り過ぎているのと、この作品自体が安っぽさを完全排除することに徹し、1カットたりとも現実に引き戻されるようなしょぼいアングル選択やカメラワークを挟むなどという隙を見せないため、ドキュメンタリックという名のアリバイ的なリアリティを出すことそのものが目的化したような似非(えせ)リアリティとは次元が異なります。演出という魔法を最大限駆使したら結果的に嘘臭さが微塵もない映像に仕上がっただけという、安易なリアリティの出し方とは距離を取った高級感のある作品に仕上がっておりうっとりさせられました。
 
 今作を見る直前にポール・グリーングラス監督の“ジェイソン・ボーン”を見ていたのが幸運でした。映像を現実の光景に近づけることが目的化しているドキュメンタリー肌の監督の志向するリアリティと、今作の安っぽさを排除していったら結果的に嘘臭くなくなっただけという仕上がりを見比べられ、ドキュメンタリックなリアリティを追求するという安易なアプローチによって逆に生じてしまう映像的ノイズとはほぼ無縁の一部の隙もない今作の化け物さ加減がよく分かりました。
 
 本物に似せただけの偽物を作ることに尽力するよりも、本物とは違う方向性の偽物を極めんとするほうが最終到達点が高くなるというお手本のような作品。
 
 

作品そのものが不眠症を患っている様な気怠さに包まれている

 
 マシュー・マコノヒー演じるラスト・コールという刑事はある過去の出来事により不眠と薬物中毒の後遺症に悩まされており、常に虚空を見つめ、心を過去に置き忘れてきたのに惰性だけで生き続けている精神の抜け殻めいた印象の人物です。そして、この作品自体もまるでマシュー・マコノヒーの演技テンションそのものを体現しているかのように気怠くダウナーな雰囲気に包まれています。ラストと同じで時間に取り残され過去を生き続けるかのような田舎の風景を丁寧に繋いだり、ラストの妥協を許さない物事に対する神経質さや厳格さを体現したかのような一切のしょぼさを許容しない作り手の絵作りへのこだわりぶりなど、それら全てがラスト・コールの有り様と重なり、ラストは作品そのものであり、作品はラストそのものであるという印象を問答無用で突きつけてきます。
 
 登場人物から受ける印象と、作品全体から受ける印象を神がかった演出のバランス感覚で一致させるという作り手の途方もない力量に戦慄すると共に、そのとんでもないアプローチの正否の責任を否応なく担わされるという重圧に屈しないマシュー・マコノヒーの才能にも惚れ惚れしました。
 
 普通ならクライムサスペンス的に猟奇殺人事件の進展や二人の証言から生じる矛盾そのものを話の推進力の中心にしそうなものですが、映画の“アウトロー”における主人公ジャック・リーチャーの行動動機そのものが最後まで謎として扱われるように、今作も事件そのものはオマケで、興味の中心となるのはなぜラスト・コールはこの猟奇殺人事件にこだわり、入れ込んでしまうのかというラスト・コールという謎めいた人物の行動動機のほうに軸足が置かれているのも非常に賢い判断だと思います。
 
 今作におけるマシュー・マコノヒーの存在感は猟奇殺人事件の真相など遥かに凌駕するほどミステリアスで魅力的なため、事件ではなく人物に対する興味を中心に据えるという大胆なアプローチも許容させる力があります。
 
 
 

不満あれこれ

 
 好みの問題でもありますが、自分はカメラの動きを意識させられる固定撮影ではなく移動撮影のある長回しが死ぬほど嫌いなので、4話の目先の緊張感を安易に盛り上げるためだけの長回しサスペンスシーンはいらなかったと思います。一応ラストが緊張状態に置かれているため撮り方も緊張感を煽るように同期させ長回しにするというやり方は理に適っていると言えなくもないですが、この重厚な作品にこのような子供騙しの手法など不要です。
 
 
 

まとめ

 
 これほどまでに実写作品に心底惚れこんだのはポール・トーマス・アンダーソン監督の“ゼアウィルビーブラッド”やリドリー・スコット監督の“悪の法則”以来で、間違いなく自分にとって生涯ベスト級作品の一本。
 
 存在すること自体が宇宙誕生と同程度の奇跡である超傑作。
 
 

クズの本懐(アニメ)

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トレーラー

 

 
点数:80点
 
 
※原作未読
 
 

ブギーポップは片思い中

 
 群像劇的にキャラの視点がスイッチされながら進み、最後まで一人のキャラが全容を把握するということはなく、それぞれの視点が他の誰かの視点を補完する関係になっていたり、“ブギーポップは笑わない”を連想させるようなややミステリーチックな構成が巧みでした。
 
 この構成のため、キャラクターも最初出てきたときの印象と、違うキャラの視点から捉えた際の印象が異なり、同じキャラクターなのに次から次に違う顔を覗かせ続け、分かりやすいキャラとして印象を固定化させてくれません。
 
 自己認識と客観的な他者からの視点でズレが生じ、これが今作の独自のキャラとの近すぎず遠すぎずの距離感を生み、自分が何者なのかも分かっていないキャラクターたちが延々とゴールがあるかどうかも分からない迷路を歩いているのをおっかなびっくり観察しているような不安で落ち着かない気分が持続し、終始飽きることがありませんでした。
 
 

成長するって気持ち良い

 
 今作を見始めた時はやたら毎週ペッティングばかりしているエロいアニメ程度の印象でしたが、最終話まで見終えるとなんとも清々しい成長物語で、まさか今作への印象が最初と最後でここまで好転するとは思ってもみませんでした。
 
 真剣になるのは恥ずかしいけど、恥ずかしがる必要なんてない
 
 ただそれだけのド直球なメッセージを手を替え品を替え全力で描き切っているため、今作を見終わった後、若干の苦味と同時にそっとメッセージに背中を押されるような爽やかさがあり、思ってもみなかった余韻に驚かされました。
 
 特に最終話の一話との対比でヒロインの成長を端的に描くシーンが大好きで、これを見られただけでも今作を最後まで見てよかったと思えるほど。
 
 

まとめ

 
 アニメーションとしての快感はイマイチで不満だったり、今作のラスボス的な人の成長がさすがにあっさり片付けられ過ぎていて不満だったり、好みのコンテのテンポ感に比べるとかなりスローペースなリズムで進行するため若干イライラしたりもしましたが、終わってみるとビックリするくらい今作を好きになっており、大変満足でした。

 

 

 

夜廻(よまわり) (steam版)

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トレーラー


 
点数:60点
 
 

短評

 クリアまで約5時間。かわいいデザインとは裏腹にフロムソフトウェアもビックリな高難易度な見下ろし型死にゲーアクションアドベンチャー。非常に出来の悪いアクション部分はストレスしか溜まらないものの、魅力的なアートスタイルやオープンワールドのようなエリア移動のないシームレスな広いマップなど、好みな部分も多い惜しい作品。
 
 

イライラストレス地獄の元凶である、底の浅いステルスもどきシステム

 
 街中に溢れかえるお化けを回避しながら目的地を目指す、というステルスゲーム的な楽しさを志向している割に、そもそもステルスとしての基本がまったくできていないので、終始ストレスばかりが溜まります。
 
 まず、ステルスの基本中の基本である相手の行動パターンを観察することで隙を探し、最適な解を模索するという当たり前の部分からして適当で、一部の敵以外は視界という概念がないのか、距離だけに反応するのみでプレイに工夫のしようがなかったり、プレイヤー側が能動的に可能なライトのオン/オフや歩く/走るを切り替えたり、アイテムを使用してやり過ごせる敵がほんの僅かしかなかったりと、ただ機械的に突っ込んでくるだけの敵をやり過ごすか、ただ強引に敵の横をすり抜けるかだけの淡泊なプレイが多くなりがちで、あまり頭を使って困難を突破できたという達成感がありません。
 
 能動性のないステルスなどトライ&エラーがただの作業にしかならないのは必定で、死んだ目でゲームオーバー地獄を耐えながら、ひたすら突っ込んでくる敵を受け身で避け続けるという拷問の様なストレスプレイでため息ばかりが漏れました。
 
 敵の種類が一見多く、豪華に見えなくもないですが、一体一体に個性のようなものが薄く、「この敵はこんな癖があるから、このように回避するんだ」というノウハウのようなものも一部の特徴のある敵以外は蓄積されず、ただされるがまま単調な動きの素早い敵に接触されては即死ゲームオーバーの繰り返しで、嫌になります。
 
 

ホラー要素と死にゲー要素が大ゲンカ

 
 サイレンの一作目と同じで、あまりにも高難易度すぎてゲームオーバーが頻発すると、次第にホラー部分への恐怖感が薄れ、緊張も弛緩し、恐怖をもたらすはずの敵がただの煩わしいだけの障害物と化してしまうという失敗に陥っており、ホラーとしての満足度は非常に低いです。街のそこら中にお化けが大量に配置されているという節操の無さも、プレイヤー側が想像力を働かせ、本来はそこにいないものを勝手に想像し怖がるといった楽しみを奪っており、感心しません。
 
 死にゲーだから悪いとは言いませんが、死にゲーとしての完成度が低い上にそれがホラーエッセンスまで阻害しているとなると、死にゲースタイルにしてしまったことは百害あって一利なしだと思います。ホラーであればアクションよりかはアドベンチャー要素(謎解きなど)を強化したほうがジャンルとの相性が良かったはず。
 
 ストーリーも、行方不明のお姉ちゃんを探すというだけでは明らかに単調で、もう少しマップが広大なことを利用し、それこそサイレンの一作目のようなリドルストーリー的なアプローチで、街の様々な場所を探索したり、ドキュメントを読んだりすることで、徐々にスケールの大きな街の忌まわしき歴史や、ミステリアスな事件の真相が浮かび上がってくるなどといったカタルシスを子供目線という独自設定を最大限利用する形で見せて欲しかったです。
 
 せっかく広大なマップというホラーをやる上で色々なことが試せそうな非常に魅力的な舞台を用意している割には、物語の最初と最後で大して街への印象が変わらないため、舞台がキャラクター化して浮き上がってこず、淡泊な印象にとどまっています。もう少し訪れる場所に緊張感を持たせるような最低限の物語性は欲しかったです。
 
 
 

まとめ

 
 マップが広大でそれを子供が描いたような大雑把な地図で探索していくという試みは好きだったり、全体的にデザインセンスは非常に好みだったりと、優れた部分は幾らでもありますが、ホラーとしては独自の怖がらせ方を確立できておらず、死にゲーとしてはホットラインマイアミのような大傑作の足元にも及ばない残念なバランスの作品。
 
 ただ、夜中に子供がたった一人で街を探索するというコンセプトは気に入ったので、続編が出たらまたプレイしたいです。
 
 
死にゲー


 

ホラーゲーム


 
 
 

 

夜廻 - PS Vita

夜廻 - PS Vita

 

 

ドラゴンクエストビルダーズ / アレフガルドを復活せよ(PS3版)

 

OPムービー

 

点数:80点
 
 

短評

 
 ドラクエであることを最大限生かし、自由度を捨て、親切さを選んだ、最初から最後までおつかい要素だけで構成されたマインクラフトベースのサンドボックスゲーム。
 
 

おつかいに始まりおつかいで終わる、そんなおつかい大好きユーザーの受け皿

 
 自分は指示待ち人間体質なのか、マインクラフトもテラリアもアーク/サバイバルエボルブドもこの手の自由度が高すぎる、目標設定がないクラフト+ビルディング系のサンドボックスゲームはほぼ例外なく肌に合わずプレイ開始数時間程度で飽きて止めてしまうのですが、今作はまったく飽きることなくクリアまで集中力が持続しました。
 
 今作は最初から最後まで徹底しておつかいだけでゲームが進行します。どんな物を作るのかも、どのように配置するかもほぼ指示通りに行わなくてはならず、マインクラフトというよりもどちらかというとダーククラウドダーククロニクルジオラマパートの自由度を上げたような印象に近いです。新しいものを創造するのではなく破壊された街を復元するというコンセプトも、未来の世界で破壊された建物を現代で復活させるというダーククロニクルとほぼ同じ趣旨なので、どうしても印象が被ります。
 

 
 
 好きなものを自由に作るという趣旨の割には終始おつかいゲーム特有のやらされている感が付き纏いますが、それでもいきなりサンドボックス世界という暴力的な自由度が法の荒野に放り出され「好き勝手にやれ」と放置されるよりは数段マシで、ほぼ飽きることもなく的確にプレイヤーに目的を提示し、クリアまで導いてくれます。
 
 プレイする前は漠然とマインクラフトのようなゲームが好きな人を狙っているのかと想像していましたが、プレイすると印象は真逆で、むしろマインクラフトのような極端に高すぎる自由度を負担と感じ苦手とする自分の様な人間こそをターゲットにしているのだということが分かりました。
 
 
 

ドラクエとの思い出が触媒として作用

 
 マインクラフトと同じ、全てがボクセル(サイコロの様な形のブロック)で表現されるボクセルベースのマップのビジュアルは、最初は見知ったドラクエの世界とはまったくの別物でさすがに違和感がありましたが、プレイしているとすぎやまこういち音楽力が半端ではなく、音楽が醸し出す濃密なドラクエ感であまり見た目自体は気にならなくなります。この音楽を聴くだけで体がドラクエに対応したリアリティラインを許容する姿勢へと変化する様は自らのドラクエ漬けの人生を振り返るキッカケともなり、中々感慨深いものがありました。
 
 今作はドラクエというシリーズをプレイしてきたプレイヤー側の記憶を最大限活用するように作られており、アイテム名はお馴染みのやくそうやこんぼう、かわのたてなどで、初めて目にする大量のアイテム名や素材名などをわざわざ覚える苦労を軽減してくれます。ストーリーは初代のラストで勇者が「世界を半分やるから仲間になれ」という竜王の提案を受け入れてしまったため荒廃したアレフガルドという設定にし勇者はなぜそんな選択肢を選んでしまったのかという謎をクリフハンガーとしたり、精霊がしきりに「あなたは勇者ではない」という意味深なメッセージを発し、それは普通のゲームならさほど響かないようなセリフでも、ことドラクエともなると非常にナラティブな感触をともない不穏に残響したりと、いかんなくドラクエらしさを利用し、この手のサンドボックスゲームには決定的に欠けている物語体験を強化してくれます。
 
 
「30年以上の歴史を誇るドラクエをなめるなよ!」
 
 
 という、歴史の積み重ねを最大の武器として行使するスタンスが非常に効果を発揮しており、プレイしやすさや取っつきやすさだけで言えば、システム面・シナリオ面で他の似たジャンルのゲームを軽く凌駕しています。
 
 

不満あれこれ

 
 プレイ中は基本は時間を忘れてしまうほど楽しくはありますが、システム的には問題が山積しており、とても手放しで褒められたものではありません。
 
 まず、ドラクエシリーズ特有の心地よい作業感を伴う要素をお金稼ぎやレベル上げ(RPG的な成長要素)からクラフトに変えたことはまだ良しとして、問題は非常に退屈なリアルタイムアクションバトル部分です。アクションとして退屈な上に、武器の種類が近接武器のみで、ほぼ最初から最後まで同じような武器を使い続けるため、飽きが早く、かつ敵を倒しても経験値ではなくアイテムやクラフト素材しか入手できないため、後半使えない素材しか落とさない敵は倒す意味もないため邪魔でしかありません。出来ればもう少し敵との戦闘にインセンティブと、プレイヤーが自分の好みの戦い方が出来るように剣だけでなく槍や斧やムチや魔法といった武器・攻撃バリエーションが欲しかったです。ただ、テラリアなどをやった後だと武器がアイテムとは独立して存在しているため、武器交換が十字キーだけで簡単に行えるのはラクチンで好印象でした。
 
 その他にも、洗練されておらず使い勝手の悪いインターフェースやら、ブロックを設置する際に置きたい場所に中々置かせてくれないもどかしい操作性やら、せっかくブロックを自由に積み上げられるのならそれをしっかりダンジョン攻略に落とし込んで欲しいとか、メインストーリー進行とビルディングを連動させすぎでもう少しやってもやらなくてもいいサブクエストなどを挟んで息抜きさせて欲しいとか、街が狭すぎて章の最初とラストでそれほど絵的に変化もなくりっぱに街が再建されたという達成感が出ないとか、プレイしている最中はあらゆる細かい部分に不満たらたらで、続編が出るなら改良して欲しいところ。
 
 しかし、今作最大の問題は全4章でそれぞれの章が終了すると今までやってきた作業が全てリセットされ次の章に移るというシステムです。最初はこれを知らずにプレイしていたので、1章が終わり2章に移ると今まで作ってきたものが次の章には反映されず、また同じことを一からさせられるという展開にかなり興が削がれ、プレイのモチベーションが激しく落ちました。そういうものだと納得さえしてしまえばゲーム自体は中毒性があり面白いので気にならないといえばならないですが、この章ごとに積み上げてきたものがリセットされモチベーションがぶった切られる感覚はどうにかして欲しいです。
 
 

まとめ

 
 マインクラフトやテラリアを途中で断念したことによって抱いたサンドボックスゲームへの苦手意識を楽しさに昇華してくれる、そんな作品でした。